Netflix独占配信の『テラー・チューズデイ:8つの戦慄』「家族の賛歌」は、再婚した夫婦とそれぞれの連れ子たちがある一軒家に引っ越したことで起きた呪いの物語です。
タイトルが深いというか、そうくるかと……。「これが私の考える美しさです」と押しつけられる恐怖を感じました。
Netflixドラマ『テラー・チューズデイ:8つの戦慄』「家族の賛歌」情報
日本公開日 | 2024年8月20日 |
制作国 | タイ |
ジャンル | ホラー |
注意書き | R-16+ 暴力、性描写、ヌード、言葉づかい、薬物、児童虐待 |
上映時間 | 46分 |
『テラー・チューズデイ:8つの戦慄』「家族の賛歌」主なキャスト・スタッフ
キャスト
ウィン 父親の賄賂を密告した母親の連れ子・弟 | プーン・ミトパクディー |
リン ウィンと不仲な父親の連れ子・姉 | ナルポーンカモン・チャイサーン 『マスター・オブ・ザ・ハウス』 |
母親(シリン) ウィンの実母、リンの継母 | ラパスラダ・チュアイクア |
父親 リンの実父、ウィンの継父 | ウォーラリット・フアンアーロム |
スタッフ
監督 | スラポン・プロンサン |
『テラー・チューズデイ:8つの戦慄』「家族の賛歌」あらすじ
母親の連れ子である弟ウィンと、父親の連れ子である姉リンの四人家族は、夜道を引っ越し先の一軒家に向けて走っていました。
父の収賄を密告したウィンによって、家族は今まで住んでいた家を追われることとなったのです。その一件で、家族仲は一層悪くなっていました。
その家の2階には、厳重に封じられた部屋がありました。鎖や南京錠だけでなく、色が薄れた護符まで貼ってある念の入れようです。
ウィンはその部屋が気になり、開けてみようとします。しかし、一軒家の鍵を集めた束の中には、南京錠の鍵はなく……。
『テラー・チューズデイ:8つの戦慄』「家族の賛歌」ネタバレと感想・考察
封じられた部屋
深夜、人気のない道を一台の車が走っています。後部座席にいる若い姉弟も、運転席の父親、助手席の母親も口を開きません。
一軒家にたどり着いた家族は、積んできた荷物を下ろします。父はひとり運転席に残ったまま、ある夜のことを思い出していました。
父は自宅に賄賂を隠していたのですが、それを母の連れ子であるウィンに密告されたのです。そのことが原因で、家族仲は冷え切ってしまいました。
母方の叔父が父の上司だったこともあり、一家は転居先を用意してもらえました。スキャンダルによる急な引っ越しだったため、夜中に行われたようです。
部屋に荷物を運び込んだウィンは、自室の向かいに部屋を見つけます。そこは、両開きの扉の取っ手に南京錠のついた鎖がかけられ、字の薄れた護符で封じられていました。
扉には隙間がありましたが、中はよく見えません。ウィンは諦めて、姉リンの部屋に向かいました。枕と毛布を持って来られなかったため、分けてもらおうと思ったのです。
リンは余分があるにも関わらず、貸すのを断りました。以前の家に住めなくなったのはウィンのせいだと怒りをぶつけ、ドアを閉めます。
寒くて眠れないウィンは、向かいの部屋が気になり始めました。新居の鍵を束ごと持ってきますが、南京錠に合う鍵は見つかりません。
いらだったウィンは、取っ手を握ってガタガタと揺すります。すると、扉の板をまたぐように貼ってあった護符が破けていきました。
護符のつなぎ目が数センチ残った状態で手を離したウィンは、背後に気配を感じて振り返ります。そして、もう一度目をやったとき、扉が内から押され、護符は完全に敗れました。
変な家
背後から近付く気配は、いつの間にかウィンの横にまで来ていました。ウィンはぐっと目をつぶり、“それ”が消えるのを待ちます。
すると、鍵のかかっている部屋に入ろうとしていた姉リンに声をかけられました。リンは、鍵の束を握りしめて突っ立っているウィンに「クソ野郎」と吐き捨てます。
翌朝――母は不満気な顔で服を畳んでいます。父の不正によって不便な場所に引っ越すことになり、夫婦仲も冷え切ってしまったのです。
キャビンアテンダントとして働いていた母は、仕事に未練があるようです。かつての制服を着てベッドに横たわった母は、ウォラポンという人物からの着信を無視しました。
不仲を極めた家族ですが、食事を共にすることは決めていました。しかし、そこに大音量で音楽を流し、スマートフォンをいじりながら食事するリンが現れ、空気が張り詰めます。
部屋に食事を持っていこうとしたリンを母が止めると、リンは食事を置いてリビングを出ていきました。2階に上がる足音がしたため、母は溜息まじりに追いかけます。
しかし――リンは1階にある一人掛けソファに座っていました。母とリンは、不思議そうな顔を見合わせます。
そして、家族総出で護符の貼られた部屋を検証することになりました。父の体当たりでもびくともしませんでしたが、母がトンカチで南京錠を壊すと、あっさり開きました。
リンは扉が開くまではその場にいましたが、部屋の中がただの個室だと分かり自室に戻ります。残った3人も中を見回りますが、特筆すべきものはありませんでした。
異様な雰囲気を感じた母は、いつになればこの家を出られるのかと父に問います。権力を持つ父に頼めば、いっそウィンだけでも預かってもらえれば、と……。
収賄警官
父は、ウィンをウィンの実父と同じ職に就けさせたいのかと、母に問います。母は否定しませんでした。父は目をむき、夫婦の寝室を出て行きます。
父の事件が報道されました。収賄容疑で逮捕された警官が異動になったというネット記事を見て、ウィンは溜息をつきます。
父は今でも拳銃を持っています。リボルバーに弾を込めている父の姿を盗み見て、ウィンは息をのみました。
母も“何者か”の存在を感じるようになっていました。しかし、夫婦の会話が攻撃的になってしまった今、母は不安を吐き出せる相手がいません。
一方で、血の繋がらない姉弟には会話が生まれていました。ウィンが作ったインスタントラーメンを食べながら、ウィンは本音を口にします。
継父に愛されていないことを悩んだウィンは、父を困らせることで気を引こうとしたのです。しかし、父の心は一層離れていってしまいました。
リンは怒ってはいないと言いつつ、自分が海外に発つまで待ってほしかったとこぼしました。四人家族になりたいのだというウィンの願いは、リンには届きません。
麺をこぼしたウィンは、リンが席を立ったときに拾おうとしゃがみ込みます。しかし、すでに霊が取っていってしまったため、麺はなくなっていました。
二人でテーブルの下や椅子の下を見ますが、霊は姿を消し、麺も見つかりませんでした。そこでウィンは、破れた護符を補強しようと考えます。
ウィンは真っ二つになった護符の上から、白い紙テープを貼ってみました。リンは、そんなやり方で護符の力が戻るわけがないと鼻で笑います。
四人家族と鍋
翌朝、護符の上から貼った紙テープは見事に裂かれていました。ウィンがなんとか補修しようとすると、そこに妙に明るい母が現れ、朝食だと急かしてきます。
ウィンもリンも、急にほがらかになった母に違和感を覚えます。母は朝から韓国のインスタントラーメンを作り、常備するよう言ってきました。
それは、二人が昨晩食べていたものです。二人が不安で目を泳がせていると、ふと母が麺を床に落としました。そして、拾った麺をそのまま口に入れたのです。
母が落ちたものを食べるなど、今までありませんでした。それに、朝食はいつもシリアルでした。姉弟は、何かおかしいと勘付きます。
ウィンは、リンからスマートフォンを借りて「護符を貼る理由」を調べました。すると、“あの部屋”は四人家族が毒を鍋に入れられて死んだ部屋だと分かります。
母が霊に憑かれているか否かを話し合っているところに、当の本人が現れました。そして、今夜作る鍋の材料をひとりで買いに出かけると笑います。
ウィンもリンも、鍋に手をつける気になれません。ネットには、四人家族が死んだ理由になった鍋に毒を入れたのは、家族の中の誰かだろうと書いてあったからです。
箸が進まない家族たちを見て、母は鶏肉を持ってきました。力いっぱい包丁を振り下ろす母を見て、父は何事かと声を荒らげます。
すると母は、急に怒りを爆発させました。父と母は不倫の末に結ばれた――リンは母の実家の資産目当てだろう――リンの海外行きを拒んだのは父だ――。
母は狂ったように包丁を振り下ろし続け、ついに自らの手首を切り落としました。そして、父に向かって包丁を振り上げます。
家族の終わり
笑い声に異様な響きが交じり始めたとき、リンは母に向けて沸騰する鍋のお湯をぶちまけました。母は怒りに任せてダイニングテーブルを横倒しにします。
母の動きが鈍った瞬間、父は母の背後に回り、母を床に倒しました。高笑いを続ける母から包丁を取り上げた父は、何度も包丁を振り下ろします。
リンの制止も聞かず、父は母が静かになるまで動きを止めませんでした。そして、父は満面の笑みを浮かべて立ち上がり、姉弟に目をやります。
ウィンは何かを思いつき、リビングから駆け出していきました。リンはゆっくりと近づいてくる父に、警察を呼ぶとスマートフォンをかざします。
しかし父は、妙な響きの声で「俺が警察だ」と笑いました。あごが外れてもいないのに、父の口がどんどん下へと開いていきます。
父はリビングを出たリンを追い、閉じられた玄関から出て行こうとするリンの頭をつかみます。そして、リンの頭を繰り返しドアに打ちつけました。
父の隠し持っているリボルバーを取りに行っていたウィンは、姉を救おうと声を上げます。しかし、霊に憑かれた父の耳には届きません。
床に放り投げられたリンは、額から血を流しながら命乞いをします。しかし、父は容赦なくリンの口を絞めにかかりました。
ウィンは階段の上からその様子を見ていましたが、恐ろしさに足がすくんで何もできませんでした。ウィンは姉の動きが止まるのを見て、絶望の声を上げます。
次に、父はゆっくりと階段を上ってきました。血の繋がらない父親だから、なんの躊躇もなく撃てるだろうと、父はウィンを挑発します。
姉弟の終わり
父に銃口を向けながらも、ウィンは撃てずにいました。すると、階下から伸びてきた手が、父の足首をつかんで引きずり下ろします。
瀕死の姉リンが、父に報復したのです。リンは、つまずいて1階に倒れ込んだ父の頭を両手でつかみました。そして、父の頭を階段の角にぶつけていきます。
父の顔はぐちゃぐちゃになり、その命も失われました。一仕事終えたリンはゆっくりと顔を上げ、ウィンに向かって笑顔を向けます。
その声には、霊の響きが交ざっていました。ウィンは自室に戻り、ドアに鍵をかけます。リンは激しくドアを叩き、開くよう急かしてきました。
殺される恐怖に支配されたウィンは、やっと引き金に指をかけました。銃声が響き、ドアの高い位置に穴が開きます。そしてドアの向こうで、人が倒れる音がしました。
リンの死を確認して、ウィンは家から逃げ出そうとします。しかし、背を向けたウィンの足首は、息を吹き返したリンにつかまれてしまいました。
なんとかリンの手から逃れたウィンは、玄関に行くため階段に向かいます。しかし、階下からは死んだはずの父と母がゆっくりと上ってきていました。
背後からはリンが迫ってきています。あせったウィンの目に映ったのは、片方の扉が開いている“あの部屋”でした。
ウィンは封じられた部屋に入り、内鍵をかけます。扉から離れるように後ずさりしたウィンは、誰かに足をつかまれ、どこかへと引きずり込まれました。
父がウィンを呼ぶ声が聞こえます。ふと目を開くと、家族四人で鍋を囲んでいました。母が鍋の中身を取り鉢にすくい、ウィンに差し出します。
ウィンの願い
家族四人で鍋を囲む穏やかな時間に身をゆだねるウィンでしたが、急にその口から血があふれ出してきました。
ふと家族を見ると、父も母も姉も、口から白い泡を出しテーブルに突っ伏していました。しかし、ウィンはまだ鍋に手をつけていません。
訳が分からず混乱しているウィンの目に、現実の風景が映ります。封じられた部屋の大きなソファには、父と母、リンの血まみれの死体が座らされていました。
その死体を運び込んでいたのは、自分と同じ格好をした人物です。その人物は家族が座るソファの前にカメラを置き、家族写真を撮影していました。
ストロボが光ったとき、その人物の顔が見えました。それは紛れもなく――ウィンの顔でした。
ウィンの「家族四人で一緒に過ごしたい」という願いをくみ取った霊は、その願いを叶えようとしたのです。他の家族を殺すことによって……。
霊に操られたウィンは父、母、リンを部屋に残し、外に出ます。そして、部屋の扉にしっかりと護符を貼りつけました。
三人の霊を閉じ込めたあと、ウィンはゆっくりと目を閉じ――満ち足りた表情で自らの頭を撃ち抜くのでした。
『テラー・チューズデイ:8つの戦慄』「家族の賛歌」まとめ
ギスギスした家族がより一層ギスギスしたと思ったら、家族同士で殺し合い、霊になってもなおギスギスし続け……何が“賛歌”だと言いたくなりますね。
しかし、この家にいる霊にとっては「家族全員が同じ場所にい続けること」こそが美しい家族の形なのでしょう。
いずれバラバラになってしまうほどに弱い繋がりしか持てずにいる家族には、全員に死を与え、護符によって魂を部屋の中に縛り付けることで“美しい家族の形”を保たせる――。
そして「ああ、なんて美しい家族だろう」と満足しているのが、この家に棲む霊なのでしょう。まさに、家族の賛歌ですね。
そうなると気になるのが、この家に引っ越すことを勧めた母方の叔父は、この家で四人家族が亡くなったことを知っていたのか否かですね。
収賄警官を異動で済ませた温情による処置かと思いきや、家族全員が亡くなる家に引っ越させることで“処分”したのかも……。
※トップ画像はNetflixから引用いたしました。
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