このページには、フランス製作のインディーズホラー映画『群がり』(原題:La nuee)のキャスト情報やネタバレ、感想があります。
食糧難の時代に備えて食用イナゴを養殖しているシングルマザーのヴィルジニーは、収獲量の少なさに悩んでいました。
しかしある日、養殖ハウスの中でケガをしたヴィルジニーは、イナゴたちがヴィルジニーの血をなめて活発になっている姿を目撃します。
ヴィルジニーは自らの血を使ってイナゴの収獲量を増やし、どんどんと養殖ハウスを増築していきました。
その一方で、反抗期の娘ローラはイナゴ養殖に反対し続けます。そんなある日、ハウスから出たイナゴたちが事件を起こし……。
基本情報
『群がり』(原題:La nuee)は2020年にフランスで製作されたインディーズのホラー映画です。
Netflixにて配信されたのは2021年8月6日です。インディーズ作品ながら、結構視聴されているようですね!
CGではない本物のイナゴが全編に出てくるホラー映画なので、虫が苦手な方はお気を付けください!
スタッフ
監督
ジャスト・フィリッポ
脚本
フェローム・ジュヌヴレ
フランク・ヴィクトル
キャスト
ヴィルジニー・エブラール
スリアン・ブラヒム
ローラ・エブラール
マリー・ナルボンヌ
ガストン・エブラール
ラファエル・ロマン
カリム
ソフィアン・カーメ
『群がり』ネタバレ
収獲難に陥るシングルマザー
ドーム型の音質の中にひとりの女性が入り、ラジオのスイッチを入れます。そして、中からイナゴを養殖している筒を持ち出しました。
翌朝、ラジオからクラシック音楽が流れる中で、その女性――ヴィルジニーはイナゴを収獲していきます。
ヴィルジニーは悩んでいました。養殖しているのは食用のイナゴのため、養殖が上手くいかないと食べ物が減ってしまうのです。
幼い息子ガストンの世話を娘ローラに任せると、女性はイナゴの世話を再会させました。後で来る取引相手の男性ブリアンを迎えるためです。
ローラが同年代の子たちから虫の鳴き声をマネする嫌がらせを受ける中、ヴィルジニーはブリアンを出迎えました。
美味しい食べ方を教えつつ、ヴィルジニーはブリアンに約束したよりも少ない量のイナゴを渡します。
しかし、量が少ないことでブリアンから値切られてしまいました。シングルマザーであるヴィルジニーには痛手です。
帰宅した娘ローラに草刈りを任せて、ヴィルジニーは友人男性に借金を頼むのでした。
母と娘の衝突
一家の生活はイナゴ養殖が中心となっています。夜になれば、電気はイナゴ養殖ハウスが優先になるのです。
娘ローラは母ヴィルジニーのイナゴ養殖を手伝ってはいますが、同年代の子たちからからかわれているため前向きではありません。
その一方、息子ガストンはイナゴをペットとして可愛がっています。肺に病気を抱えるガストンは、どこか暗い雰囲気がありました。
嫌がらせをしてきた男子ケビンと会ったローラは「イナゴ娘」と呼ばれます。
ヤギに囲まれて亡くなった父のことまでからかわれ、ローラは思わずケビンに殴りかかりました。
そこにヴィルジニーが駆けつけてきたため、ケンカは途中で強制終了となります。
帰宅するとローラは怒りをヴィルジニーにぶつけました。家の電気は太陽光発電でまかなわれているため、シャワーすらろくに浴びられないのです。
ローラが冷静になったタイミングを見計らって、ヴィルジニーはローラの部屋に行きました。
ローラから「ヤギの方がマシだ」と言われたヴィルジニーは、イナゴを全て売り、施設も手放して新しい商売を始めようと考えます。
イナゴの変化
全て売り払って引っ越すつもりのヴィルジニーでしたが、取引相手は養殖イナゴを想定外の値段まで値切ってきました。
怒りに任せて取引を中断したヴィルジニーは、そのままイナゴ養殖ハウスで大暴れします。しかしその最中、足を滑らせてしまいました。
床に倒れ込んだヴィルジニーは、少し経ってから目を覚まします。そして、養殖しているイナゴたちの動きを目で追いました。
ハウスの中に飛んだヴィルジニーの血にイナゴたちが群がっていました。さらにイナゴたちは、血をなめとっていたのです……。
その夜、男友達カリムがヴィルジニーのもとにやってきました。イナゴの取引を陰で支えてきたカリムは、イナゴ養殖に疑問をぶつけます。
ヴィルジニーは、来る食糧難の時代では高タンパクのイナゴは必要とされると語りつつ、悩みを抱えていました。
帰宅してイナゴ養殖ハウスに入ったヴィルジニーは、ビニールカーテンの向こうのイナゴの動きを見つめます。
イナゴたちはヴィルジニーの動きを追うように動きます。そこでヴィルジニーは、まだ裂けたままの傷口をカーテンの中に突っ込みました。
考えた通り、イナゴたちはヴィルジニーの腕にある傷口に群がってきました。ヴィルジニーは痛みを堪えながら確信します。
翌日、ヴィルジニーは養蜂用の防護服を着てハウスに入りました。そして、もうひとつ養殖ハウスを建て始めます。
理解し合えない母娘
娘ローラは母ヴィルジニーに反論します。農場を手放さないのは子育てのためだと言うヴィルジニーですが、ローラは納得しません。
引っ越しするというヴィルジニーの言葉を信じて殴り合った男子ケビンにお別れを言ったローラは不満気です。
ヴィルジニーはローラを説き伏せ、その夜……自分の腕にナイフで傷を作ってハウスの中に入っていきました。
作業を終えて風呂に入ったヴィルジニーは、じっと考え込んでいました。そして、男友達カリムに会いに行きます。
農業をしているカリムも雨不足で収入が減って困っていました。ヴィルジニーは、卸を通さずに直接客と商売することを報告します。
翌朝、ヴィルジニーは増えたイナゴを焼きあげると、前回値切ってきたアヒル飼いの男のところへ向かいました。
質が良くなり量も増えたため、ヴィルジニーの商売は軌道に乗り始めます。ヴィルジニーはその儲けで血を買い付けました。
ヴィルジニーは血とエサを混ぜてイナゴに与えていきます。袋の中にいるイナゴたちは大暴れで血を求めています……。
娘ローラにイナゴの網焼きを手伝わせながらも、血のことは伝えていません。しかし、ローラは異変に気付いていました。
ある日、ローラの男友達が家にやってきました。ローラはやかましく大騒ぎするイナゴへの怒りを募らせ、ハウスを破いてしまいました。
解き放たれたイナゴたち
娘ローラが破いた養殖ハウスの中から、母ヴィルジニーが育てている人の血をすするイナゴが飛び立っていきます。
その様子を見ることもなく、ローラは男友達と過ごしていました。その頃、ローラの弟ガストンが異常に気付きます。
ハウスから出てきた大量のイナゴはまっすぐにガストンの乗っていたトラックに向かって飛んできたのです。
ガストンは荷台にヤギのユゲットを載せていたのですが、大量のイナゴが襲ってきた後にユゲットの姿は消えてしまいました。
帰宅したヴィルジニーは子どもたちを家の中に入れ、ひとりでユゲットを探しに車を走らせます。
そして草むらの中で見つけたのは――イナゴに襲われ、血まみれになって息絶えているユゲットでした。
ヴィルジニーはユゲットを丁重に葬り、帰宅しました。ヴィルジニーはガストンにユゲットの死を隠し、ハウスを破ったローラをきつく叱ります。
ヴィルジニーはどうしてもユゲットを見つけたいガストンに付き添いながら、ひそかに涙を流すのでした。
止まらないヴィルジニー
翌朝、天気がいいからとヴィルジニーは娘ローラをピクニックに誘います。息子ガストンも連れ、一家は海辺に向かいました。
病気を持つガストンは最近調子がいいことを理由に、キャンプに行くことをヴィルジニーから許されます。
ローラはヴィルジニーの腕の傷に気付きながらも、やはり口には出しませんでした。
帰宅した一家を出迎えたのは、ヴィルジニーの男友達カリムでした。カリムは、ローラにスクーターをプレゼントします。
ヴィルジニーから頼まれたプレゼントを渡した日の夜――カリムは自家製のワインをヴィルジニーに試飲させました。
ヴィルジニーとカリムは想い合っていたようで、いい雰囲気になります。しかしヴィルジニーはキスまでで止めてしまいました。
翌朝、ヴィルジニーはさらに温室を増やす工事をするため、家の敷地内に生えている木を切ろうとします。
そこにガストンがやってきて「木を切らないで」と言ってきました。ヴィルジニーは、必死のガストンを前に諦めるしかありません。
ヴィルジニーは自分の血を抜いてイナゴのエサを作り、どれだけ温室が増えても、ひとりきりで世話をします。
カリムから心配されても、ヴィルジニーはそっけなく返すだけでした。
真実を知るローラ
ある夜、近くに住む老人が飼っている犬のジャッキーが、ヴィルジニーの家の敷地内に迷い込んできました。
ヴィルジニーはジャッキーを抱き寄せると、イナゴ養殖ハウスの中に入っていったのでした……。
翌朝、ヴィルジニーがジャッキーの血にまみれたビニールプールを片付けていると、アヒル飼いの男たちがやってきました。
アヒルのエサを求める男たちは気前よくイナゴを買い求めます。その一方で、娘ローラがヴィルジニーに抱く違和感は強くなっていました。
より多くのイナゴを求められたヴィルジニーは深夜、近くの農場で牛を殺します。そして、その血でイナゴのエサを作りました。
自らの血も抜きつつ、ひとりでハウスをいくつもやりとりし、深夜の違法行為もあり――ヴィルジニーの体力は限界でした。
息子ガストンがキャンプに出かける時に、ヴィルジニーは見送りに出ることもできなかったのです。
代わりに見送りに行ったローラは、家の中で血に汚れたヴィルジニーの服を見つけます。そしてハウスの中に入り……。
ヴィルジニーが自分の血をイナゴに与えている様子を見てしまったローラは、ショックを受けて風呂場に立てこもるのでした。
惨劇への序章
ヴィルジニーが異常だというメールを娘ローラからもらったヴィルジニーの男友達カリムは、あわてて家にやってきます。
イナゴに血を与えていたヴィルジニーは足元がふらつき、仕事をしている途中で倒れてしまいました。
カリムは引っ越したばかりの自宅にヴィルジニーとローラを招きます。そこでカリムは、ヴィルジニーを責め立てました。
ヴィルジニーとローラが言い争っている頃――飼い犬ジャッキーを探す老人は、イナゴ養殖ハウスに入り込んでいました。
老人はイナゴが詰まったネットのひとつを開きます。大量のイナゴが飛び出して、ハウスのビニールを埋め尽くしました。
ハウスの中で何が起きているかも知らず、カリムに送られてヴィルジニーとローラが帰宅しました。
カリムは家に入るふたりを見送った後、ふとハウスの中に入ります。そこにあったのは……老人の亡骸に群がるイナゴでした。
カリムはヴィルジニーが何をしているのか知ってしまいました。家から出てきたヴィルジニーを恐れてカリムは離れていきます。
ローラが何か言ったのだ――そう考えたヴィルジニーが家に入っている時、カリムはハウスにガソリンをまいていました。
獲物を求めるイナゴたち
真っ暗な森の中にある家の前で、イナゴ養殖ハウスがごうごうと燃えていきます。ヴィルジニーは消火を急ぎました。
その一方で、火をつけた犯人であるヴィルジニーの男友達カリムは、家の中に入ってヴィルジニーの娘ローラに注意します。
窓を閉めてイナゴから逃げようとしたカリムでしたが、水道管などの隙間から入り込んできたイナゴに襲われてしまいました。
ローラは家を抜け出し、森の中を走っていました。暗い空をイナゴが埋め尽くしていましす。
ローラを呼ぶヴィルジニーの声も聞こえない場所にまで逃げたローラは、湖にボートを出しました。
首まで水に浸かったローラは、引っくり返したボートを盾にしてイナゴから身を守ります。
しかし生き物の臭いを嗅ぎつけたイナゴたちは容赦なくボートの底に突撃してきました。ローラは思わず「ママ!」と叫びます。
ローラを守るため、ヴィルジニーは自分の手を切って顔に血を塗りたくりました。すると血の臭いにつられて、イナゴたちが標的を変えました。
イナゴの羽音が聞こえなくなり、ローラはボートから出ます。イナゴが浮かんでいる水面をかき分けながら「ママ!」と呼びました。
すると……数秒の間を置いて、ヴィルジニーが水の中から出てきました。潜水したヴィルジニーは助かっていたのです。
湖に突っ込んでいったイナゴたちは、もうかすかにうごくものが数匹いるだけになっているのでした……。
感想と考察
Twitterでの反応
ミヅチガタリ
イナゴを使ったホラー映画という触れ込みだったので、虫が出てくるホラー作品をいくつか思い浮かべながら観ました。
私は勝手に「人の味を覚えたイナゴが人を襲いまくるパニック映画なのだろう」と思っていたのですが……。
まったく違いましたね! イナゴが襲った人間はヴィルジニー、ローラ、カリム、老人の4人だけだった……と思います。
ヴィルジニーは偶然に動物の血でイナゴが活発になることを知り、貧しい家計を立て直そうと奮起したのでしょう。
田舎に暮らすシングルマザーが思春期の娘と持病を持つ息子を育てていくのは大変だろうというのは分かります。
気になる男友達カリムはいますが、カリムも雨不足に悩む農家であり、結婚したところで家計は豊かにならないでしょう。
しかし収入を増やすことに文字通り“血道を上げる”ヴィルジニーとは違い、カリムはローラの変化をしっかり見ていました。
ヴィルジニーが隠し事をしながら痩せ衰えていく様を見て不安を募らせていくローラですが、反抗期なこともあり素直になれません。
しかし、そんなふたりを最期に繋いだのもカリムでした。燃えるハウスを見たヴィルジニーは、やっと一番大切なものに気付くのです。
収入源であるイナゴを失い、一家の生活はまた苦しくなることでしょう。しかし、これからは何かに狂わず、家族のために頑張れると思います。
※トップ画像はNetflixから引用いたしました。
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