Netflixドラマ『イクサガミ』1話「蟲毒」

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Netflixオリジナルドラマ『イクサガミ』1話「蟲毒」は、生活に困窮した元・人斬りの愁次郎が謎の武芸大会に参加する物語です。

ミヅチ
ミヅチ

まさか主人公が岡田准一さんなのに、1話でまったく〇を〇〇ないなんて思わないじゃないですか……。

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Netflixドラマ『イクサガミ』1話「蟲毒」情報

公開日2025年11月13日
制作国日本
ジャンルヒューマンドラマ、アクション、歴史・時代劇、サスペンス
注意書きR-16+
暴力
上映時間58分

Netflixドラマ『イクサガミ』1話「蟲毒」主な登場人物・キャスト

嵯峨愁二郎(岡田准一)
香月双葉(藤﨑ゆみあ)

衣笠彩八(清原果耶)
柘植響陣(東出昌大)

諸沢(榎木孝明)
三井財閥の男(酒向芳)
安田財閥の男(松尾諭)
榊原(矢柴俊博)
VIPの世話役(黒田大輔)

(淵上泰史)
弥兵衛(笹野高史)
立川孝右衛門(松浦祐也)

(二宮和也)

嵯峨志乃(吉岡里帆)

安藤神兵衛(山田孝之)
カムイコチャ(染谷将太)
化野四蔵(早乙女太一)
立花雷蔵(一ノ瀬ワタル)
赤山宋適(山中崇)
祇園三助(遠藤雄弥)

菊臣右京(玉木宏)
貫地谷無骨(伊藤英明)
岡部幻刀斎(阿部寛)

ここから先はネタバレがあります!

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ミヅチガタリ

ここまで豪華なキャストを揃えてやることが<時代劇×デスゲーム>というのが、非常に日本らしいキテレツさでいいですね!

明治維新後に士族が食うに困る暮らしをしていた……というのは、偶然にも士族を描いた朝ドラ『ばけばけ』が放送中であるため、皆さんご存じかと思います。

その目の前に「勝てば3億が手に入る武芸大会」をぶら下げるわけです。非常にいやらしいやり方ですね~!

何より面白いのは、最初に殺された人物以外、メインキャラクターで明確に死を描かれている人物がいないことでしょうか。

誰が生き残っているのかが分からない状況は、主人公たちと同じということです。しかし、半数以上が最初の関門を越えられなかったことは知らされます。

このデスゲーム<蟲毒>は開催期間一ヶ月、ルールは最初に伝えるというごくごくシンプルなものです。

このシンプルさで6話も作られていて、おそらく次のシーズンも控えていて……となると、とても丁寧にアクションが作られていることは確実です。

ただ格好いいだけではない、泥臭さもあり、繊細さもあり……きちんとストーリーとして動いている殺陣なので、満足度が高いです。

……ということで、最初の犠牲者となった安神を悼みます。頑張って生きて戦っている山田孝之さんを見たい方は、プライムビデオで『どうする家康』をどうぞ!

Netflixドラマ『イクサガミ』安藤神兵衛

引用:Netflix Japan | ネットフリックス(X)

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参加者の生死

嵯峨愁二郎
香月双葉

菊臣右京
貫地谷無骨

安藤神兵衛

衣笠彩八
柘植響陣
カムイコチャ
化野四蔵
立花雷蔵
赤山宋適
祇園三助
岡部幻刀斎

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『イクサガミ』1話「蟲毒」ネタバレと感想・考察

府中にて

武士が現れて九五〇年
この戦いを境に 彼らは消えた

泥まみれで足元の悪い中、兵を率いて駆けていく男がいました。その男――嵯峨愁二郎は一気に敵の本陣に攻め入り、大将の首を落とします。

しかし、勝ちどきを上げた瞬間……彼らの頭の上から大砲の弾が降り注いできました。愁二郎は近くにあった堀に飛び込み、なんとか生き延びます。

大砲の音が止み、愁二郎は煤まみれの姿で堀から這い出ました。先ほどまで喜んでいた仲間たちも、敵の生き残りも、皆地面に倒れています。

悪夢から目覚めた愁二郎は、幼い息子 十也に目をやりました。十也は隣の部屋にいる母 志乃と姉 りんを見つめています。

志乃もりんもコロリに罹ってしまい、苦しんでいました。病によって気も弱っている妻と娘を見て、愁二郎は離れに向かいます。

修二郎が箱の中から取り出したのは、かつて差していた刀でした。けれども、その刀を抜こうとすると――あの<悪夢>が蘇るのです。

戊辰戦争から十年

新政府の近代化政策により
武士は「士族」になり
その特権も職も失っていた
またコレラ(コロリ)の大流行により
人々の生活は
壊滅的な状況にあった

愁二郎は、質屋に刀を持っていきました。廃刀令から2年、刀に値はつかない時代となっています。愁二郎は土下座をして、砂糖と塩を分けてもらいました。

質屋は、刀を返しつつぼやきます。かつての武士 愁二郎が生き延びることすら難しくなり、商人に頭を下げる様に心を痛めているようでした。

神奈川県府中にいる士族の嵯峨愁二郎とその一家が描かれました。妻 志乃と7~8歳くらいの娘 りん、4歳くらいの息子 十也がいます。

冒頭の悪夢はおそらく戊辰戦争でしょう。敵陣には徳川家を表す<三つ葉葵>……に似た家紋<丸に三つ柏>がありました。

<丸に三つ柏>が正確な描写であった場合、第十五代将軍徳川慶喜に仕えた一橋家の家臣 猪飼勝三郎が該当します。

しかし、猪飼は大正8年まで生存していたので、この大将は猪飼ではありません。そうなると、やはり徳川家に見立てたと考えられますね。

どちらにしろ、愁二郎は新政府軍に属していたと思われます。つまり、新政府軍は<味方>である新政府軍の侍たち目がけて大砲を放ったわけです。

愁二郎にとっては、士族として落ちぶれた現在の生活よりも、その裏切りこそが悲劇だったようですね。

下げられる頭があるだけよし、生きてさえいれば……と、愁二郎は開き直っているようにも見えます。

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4月18日

質屋を出た愁二郎は、道をゆく人々の言葉に足を止めます。なんと、武芸大会で10万円がもらえるという新聞が配られているのです。

豊國新聞
〇参加者求ム
武技ニ優レタル者
本年五月五日
午前零時
京都天龍寺境内
ニ参集セヨ
金拾萬圓ヲ得ル
機会ヲ与フ

誰もが怪しんで、武芸大会への参加をためらっていました。新聞を懐に入れて、愁二郎はその場を去ります。

家に戻ると、志乃がりんの名を呼ぶ声が響いていました。りんは両親の顔を見ると、息も絶え絶えに家族を守れなかったことを詫びます。

そのまま息絶えたりんを見て、志乃は泣き崩れました。その晩、りんの亡骸が火に包まれるところを見て、愁二郎も涙を流します。

翌朝――質屋が受け取らなかった刀を持ち、愁二郎は出かける支度をしました。仏壇のりんに手を合わせ、志乃にも家を空けることを伝えます。

愁二郎は、家族や村のために再び刀を持つと決めたのです。志乃は、決意した愁二郎を強い眼差しで見送るのでした。

京都――賑やかな街の中に、愁二郎の姿がありました。武芸大会の件は人々に知れ渡っており、参加者らしき者たちの姿もあちこちに見られます。

愁二郎は、「薊屋」の主人 弥兵衛を訪ねました。武芸大会の噂は陰謀論へと発展し、天龍寺近くの人々も実像をつかみかねているようです。

部屋に入った愁二郎は刀を抜いてみようと試みますが、手が震えて思うようにいきません。それでも武芸大会に向かうため、愁二郎は薊屋を後にします。

当時の<10万円>がいくらくらいの価値を持つか、調べてみました。明治時代は現在の物価の3,800倍ということなので……3億8千万円ですね。

コロリに侵された村ひとつを救うに足る金額です。確かに、そんなものが<武芸大会>を名乗っていれば、陰謀論のひとつやふたつは湧いて当然でしょう。

しかし旧幕府軍の恨み嫉みというのは、考えにくいですよね。それだけの金額を提示するのであれば、<金持ちのお遊び>のほうがしっくりきます。

愁二郎はかつて京都・洛中にいたことがあるようですね。「薊屋」<あざみや>の主人 弥兵衛とは、親しいだけでは済まない仲に見えます。

戊辰戦争は江戸や京都をはじめ、北海道にまで及んだ長い戦いです。愁二郎は、最初の戦いである<鳥羽・伏見の戦い>から参戦していたんですね。

とはいえ、そこで大砲が撃ち込まれたとは考えられません。戊辰戦争は複数の戦争を経ているため、すべて合わせると1年半ほどかかっているためです。

もしかしたら事実上最後の戦いとなった「箱館戦争」――私は「五稜郭の戦い」と呼んだほうが親しみがあるのですが――が、悪夢の舞台なのかもしれません。

悪夢の中で、愁二郎は人工的に作られた高台のような場所に登っていました。それが土塁だと考えると、有り得ない話でもなさそうです。

最後に「薊屋」の<あざみ>とは何なのかも調べました。<魚>がついていますが、キク科の植物アザミのことです。

アザミは見て楽しむだけでなく食べることもできる植物です。それと同じく万能な宿ですよ、というアピール……とも考えられますね!

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5月5日午前0時

天龍寺の前に集まった者は大勢いました。愁二郎は人波を突っ切り、扉の前にいる警官の前に立ちます。

愁二郎が参加者と知ると、警官たちは扉を開けました。進んでいった先には、荒くれ者たちが集まっています。

刀を握った左手が震え始めました。そこに情けない顔の男――旧加賀藩士 立川孝右衛門が現れ、話しかけてきます。

孝右衛門によると、新聞は北海道から琉球に至るまで全国に配られたそうです。響いていた笛の音が止むと、銃を背負った制服の男たちが現れました。

彼らが扉の向こうから招き入れたのは、同じ制服を着たうりざね顔の男――槐です。舞台の上に立った槐は、無表情なまま語り始めます。

「これから皆様には、心・技・体、全てを競う遊びをしていただきます」

老若男女が集まる中、槐は薄笑いを浮かべながら話を続けました。そして、報奨金に疑いを持つ参加者たちに金を見せます。

金を見て一気に沸き立つ群衆に、槐が水を差しました。金を得る方法を聞いたが最後、もう後には引けないと言うのです。

槐は戸惑う群衆を無視し、30を数え始めます。数秒数えたあと、ひとりの男が現れました。それは京都府庁警察第四課 安藤神兵衛――通称<疾風の安神>でした。

槐は安神の神経を逆なでしつつ、安神の質問をはぐらかします。そして、安神が参加するか否かを問い返しました。

槐を逮捕すると息巻いて、安神は槐に向かって駆け出しました。すると槐の横にいた制服の男――櫻が舞台から飛び降り……安神の首を一閃で落としたのでした。

噂になっていた<山田孝之の正しい使い方>がこれとは……! 映画『悪の教典』でも、このような扱われ方をしていましたよね。

相手をなめてかかったがゆえに命を落としてしまう安神と、そんなことをしている場合ではないのに夢中になってしまって命を落としてしまう柴原先生……。

役柄はまったく違いますが、相手の異常さを短い尺で示すときに、山田孝之さんは大いに活用できる俳優なのでしょう。

ここでは愁二郎が完全に脇役……どころかモブの一人となり、槐が主導権を握っています。けれども、槐自身が主催ではないようです。

姿を見せない主催者と信じられない額の報奨金となると――思い起こされるのは漫画『賭博黙示録カイジ』ですね。

また、主催者に突っかかっていった参加者が殺されるというのは、小説『バトル・ロワイアル』でもあったシーンです。

<時代劇版イカゲーム>と言われているようですが、日本の作品が思い浮かぶことのほうが多いですね。

デスゲーム作品は日本の得意とするジャンルですし、もっと詳しい人ならば、さらに似通った部分が思い浮かぶことでしょう。

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10秒の掟

安神の首が落とされたことで、騒いでいた群衆は一気に静かになります。槐はその様にも表情を変えず、カウントダウンを続けました。

孝右衛門は脅え始めましたが、ここで下りたところで未来はないと踏んでいるようです。皆、自分自身を奮い立たせる言葉を吐いていました。

制服の男たちが、参加者ひとりずつに何かを渡し始めます。それと同時に、槐のいる舞台上では東海道の地図が広げられました。

「これより、皆様に参加していただく遊びの名は<こどく>。そして、遊びには掟が付き物です」

制服の男が、愁二郎のところへ回ってきました。署名を求められ、番号が記された木札を首からかけるよう指示されます。愁二郎は108番の参加者として署名しました。

槐は、参加者に東京 日本橋を目指せと言います。天龍寺 総門から伊勢国 関、三河国 池鯉鮒、遠江国 浜松、駿河国 島田、相模国 箱根、武蔵国 品川を必ず通る決まりでした。

通過点にはそれぞれ点数が設定されていました。その点数に満たない場合、次には進めないのです。また、<こどく>について人に話すのも禁じられました。

そして、一ヶ月後の6月5日には東京 日本橋に到着していなければなりません。また、途中で離脱することは禁じられました。

なお、10秒以上に渡って木札を首から外すことは<離脱>とみなされます。掟を破った者がどうなるか槐が説明しようとしたとき、ある男が叫び声を上げました。

その男に続き、他の参加者も木札を投げ捨てて天龍寺から出ようと駆け出します。槐は冷静に、10秒のカウントダウンを始めました。

逃げ出そうとした参加者たちが、カウントダウンが終わると同時に撃ち殺されます。掟を破った者への相応の処罰だと、槐は語りました。

これは私の個人的な好みに過ぎないのですが……デスゲームを謳っておいて、離脱者や敗北者が死なない作品には、疑問を感じます。

主人公やその周りの人が<最終的に>ルールを破って生き残るということであれば、まだ納得できます。

しかし、メインキャラクターであれ、中盤で退場する人が生き残ることには納得できないのです。「何がデスゲームだ」と思うのです。

『今際の国のアリス』はよかったと思います。主人公の親友であれ、勝利に貢献した者であれ、今際の国での死者は、現実でも亡くなっていました。

その点で『イクサガミ』は現状かなりいいですね。掟がはっきりしている以上、掟破りへの処罰もはっきりしています。

面白いのは『今際の~』と『イクサガミ』とで、げぇむ=遊び、るぅる=掟、ぷれいやぁ=参加者――と変換ができることです。

デスゲーム作品慣れしていなくとも『今際の~』さえ通っていれば、『イクサガミ』の仕組みを理解しやすいのが有難いポイントですね。

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天龍寺 総門 2点

大騒ぎする参加者たちに、槐は声を張り上げました。そして、怒声のままに群衆を諭します。

「黙りなさい! 私は参加の意思はすでに確認してましたよ。皆様が、自らこの遊びに参加することをお決めになったんだ。……10万円のために」

署名が終わり、参加者は総勢292人となりました。そこで槐は、参加者それぞれに渡された番号が記された木札が<1点>であると告げます。

天龍寺 総門を通るには<2点>が必要です。7箇所すべての宿所を通り東京 日本橋に行くには、85点が必要となります。

「どうやって点数を集めるのか……お気づきの方もいらっしゃるようだ。手段は問いません。木札を奪い合うのです!」

参加者たちはそれぞれ脅えたり、余裕の笑みを見せたり、仲間に誘ったりと動きを見せます。すると槐は、10数えたら開始すると宣言しました。

震えた手で刀を持っていた愁二郎は、10代前半の女の子がいることに気付きます。その女の子――香月双葉は、周りの男たちを不安そうに見まわしていました。

槐のカウントダウンが始まり、参加者たちが武器を取り始めます。愁二郎も、布にくるんだ刀を取り出しました。

「それでは皆様、東京……いや――あの日、消えた江戸にて……お待ち申し上げております」

天龍寺の総門が開かれました。開始を告げる槐の叫び声が響きます。しかし、皆すぐには動き出しません。

武道の知識だけでもかじっていると分かるのですが、それなりの腕を持つ者同士で戦うとなると、すぐには動き出さないんですよね。

剣道を思い浮かべていただければお分かりかと思います。相手がどう動こうとしているのか、それに対してどう動こうかと、先を読むために間が生まれるのです。

開始の合図と同時にワーッと動き出すのは、素人が混ざっている場合に限るということですね。

この作品の舞台は維新直後のため、愁二郎のように幕末の動乱に参加した武士や腕の立つ者たちが大勢いる時期です。

そんな場所に戦の素人が一人でやってくるとは考えにくいので、このように相手の様子をうかがう時間ができるわけです。

槐はわざと武士であった人々をあおるような発言をしています。誇りや腕を褒めたり、江戸と言ってみたり、意図的な発言でしょう。

だからといって、槐の上にいる人も武士――つまりは旧幕派とは思えません。やはり金持ちのお遊び、楽しみを増やすためではないでしょうか。

そして短いシーンでしたが、愁二郎の人となりが見えてきましたね。自分のために刀を握れなくとも、誰かのために戦うことはできるように見受けられます。

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少女

浮浪者のなりをした大柄の男――貫地谷無骨は、仲間にならないかと誘ってきた男の首に刃を振りました。

それを合図に、天龍寺の中で斬り合いが始まります。しかしまだ、愁二郎は刀を抜けずにいました。

立ちつくす愁二郎は、あの日の悪夢を思い出します。そんな中、愁二郎の眼に入ったのは、亡き娘りんを彷彿とさせる少女 双葉でした。

そんな愁二郎の前に立ちはだかったのは巨漢の男――立花雷蔵です。雷蔵は槍を振り回し、愁二郎の行く手をはばみました。

小柄で短刀しか持っていない双葉を救うため、愁二郎は敵をかわしながら走ります。そして間一髪で双葉に駆け寄ると、そのまま物陰へと向かいました。

騒乱を抜けて一番乗りで総門に向かったのは、<公家の守護神>菊臣右京です。右京は似顔絵を控えられたあと、総門を出ていきました。

愁二郎は双葉を連れて寺の縁側に潜り込みます。双葉は、母を救うために参加していました。愁二郎は、双葉が天龍寺から出るまでは面倒を見ると決めます。

敵をかわして逃げていた双葉でしたが、木札を奪われてしまいます。愁二郎は身をひるがえして男を追い、なんとか残り1秒で双葉の首に120番の木札を戻しました。

そのままやぐらの上に登った二人でしたが、足元に人が押しかけたためにバランスを崩します。池の中にいた二人が見たのは、白髪の剣の達人でした。

その達人――岡部幻刀斎は、何者かを探すために<こどく>に参加したようです。その鋭い目は、鋭く周囲を見回していました。

無骨は2点を手に入れているにも関わらず、天龍寺で刀を振るい続けています。その無骨の目に映ったのは、びしょぬれで物陰へと向かう愁二郎と双葉の姿でした。

まさか1話では刀を抜かないのでしょうか……!? 確かに、相手の攻撃を避けるだけならば刀を抜かなくとも対処できるでしょう。

けれども、総門を抜けるには2点が必要なのです。双葉の面倒を見ると決めた以上、少なくとも木札を2枚手に入れなければなりません。

ちなみに、無骨や幻刀斎などの実力者が、すぐには総門を出ていかないことには納得できます。

いくら7箇所ポイントがあるとはいえ、毎度毎度その地点に行ってから、またはその道すがらに点数を稼ぐのはコスパが悪いのです。

天龍寺に全員が集まっている今のうちに30点を稼いでしまうのが、腕に覚えがある人の最もスマートなやり方だと思われます。

最後の宿所 品川を通るまでには85点必要になります。総参加者数は292人なので、最大で3人しか品川を通れないということです。

しかしこれは、最初に配られた木札をすべて有効活用できた場合の話です。3で割った場合の余剰分は37枚しかありません。

集めていた木札の行方が分からなくなったり、捨てられてしまったり、燃えてしまったり……といった不慮の出来事がないとは限らないのです。

なお、品川通過に必要な30点を除くと、必要な点数は55点です。最大で5人が箱根を通過できます。

そのひとつ前、島田通過までに必要な点数は35点で、最大で8人が通過できます。その前の浜松通過までは20点なので、最大で14人通過できるわけですね。

浜松通過までの14人くらいならば、実力差のある参加者がいても不思議ではないと思います。

けれどその先、島田通過の8人、箱根通過の5人となると……もうここには運やおこぼれで通過できる参加者はいないでしょう。

実力者同士でぶつかった場合、最終地点にたどり着けた参加者はいなかった――となる可能性すらあります。

<こどく>という名の通り<蟲毒>――虫や爬虫類などを一つの箱に入れ喰らい合わせて最後に残った一匹を使い、呪いをかける――をするつもりなのでしょう。

しかし、この蟲毒はかなり雑です。成功する確率をわざと下げているようにも感じます。意図が見えないのが気味悪いですね。

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人斬り刻舟

天龍寺から離れた山の上には、立派な身なりの男たちが集まっていました。彼らは皆、楽しそうに天龍寺の争いを眺めています。

双眼鏡でスポーツ観戦でもするように楽しんでいる男たちがいるとも知らず……愁二郎と双葉は、寺の中を逃げ回っていました。

誰もいない倉庫に入ったところで、愁二郎は拾った木札を双葉の首にかけます。戸惑う双葉でしたが、物音が聞こえて口を閉ざしました。

ずぶぬれの二人は、歩いた痕跡を床に残しています。足跡をたどって近付いてきた男でしたが、死角から飛んできた吹き矢を受けて倒れました。

驚いた愁二郎の前に現れたのは、柔和な関西弁の男――柘植響陣でした。響陣は倒れた男の木札を投げてよこし、愁二郎を<人斬り刻舟>と呼びます。

響陣は、愁二郎が心を病んだことを見抜きました。戊辰戦争で病んでしまった者は、愁二郎のほかにも多くいたためです。

「でもな、お嬢ちゃんと残ろう思うんやったら、斬らんと無理やで。まあ、好きにすればええけどな」

立ち去ろうとする響陣に、双葉は救ってもらった礼を言います。響陣が去ったあと、愁二郎は双葉と共に建物を出ました。

そこに待ち構えていたのは、雷蔵です。雷蔵は愁二郎へと狙いを定めました。愁二郎は双葉を先に総門へと向かわせ、雷蔵の相手を引き受けます。

橋の上で、愁二郎は雷蔵とにらみ合いました。愁二郎は刀を抜くことなく、雷蔵の巨漢を投げ飛ばします。

<人斬り>の異名を持つ主人公というと、やはり<人斬り抜刀斎>緋村剣心を思い出してしまいますね。

剣心のモデルになった人を含め、江戸末期には<幕末の四大人斬り>と謳われた男たちがいました。

ちなみに<京都で暗殺を行っていた尊王攘夷派の志士>に限られるそうです。つまり討幕派――新政府サイドの人たちと考えていいでしょう。

四人とも<人斬り〇〇>という異名がつけられていますが、これは後年につけられたものだそうです。ざっくり言えば創作ですね。

その四人は<天誅の名人>岡田以蔵、緋村剣心のモデル 河上彦斎、尋問中に自害した田中新兵衛、戊辰戦争や西南戦争に参戦した中村半次郎です。

半次郎のほかは、明治を迎えぬまま亡くなっていたり、戊辰戦争には参加できなかったりしているので……愁二郎にモデルがいるとしたら、半次郎でしょうね。

半次郎は明治になってから「桐野利秋」と名乗っています。<秋>と<愁>、<次郎>と<二郎>という共通点があるとなると、やはり……。

ちなみに、佐藤健さんは映画『るろうに剣心』シリーズで緋村剣心を、大河ドラマ『龍馬伝』で岡田以蔵を演じています。一人で二大人斬りです。

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128人

迫ってくる参加者たちからなんとか逃れ、愁二郎と双葉は門をくぐりました。槐は<人斬り刻舟>と知ってか知らずか、異名を口にしません。

しかし、槐が気にかけていた頬に大きな切り傷のある男 櫻は、愁二郎の背中をじっとりと見つめていました。

愁二郎が子どもを連れて総門を通ったと知り、山の上で見ていた男たちは盛り上がります。

そのとき世話役が、主催からの手紙が届いたと告げました。雨が降ってきたこともあり、男たちは世話役のほうへと向きを変えます。

『この蟲毒にご賛同いただき、皆さんには深く感謝申し上げます。武士とは、刀を振ることしかできないにも関わらず、権威を振りかざし、強者だと勘違いし、時代に取り残されたことに気づきもせず、無意味に生きる愚か者たち。さあ、皆さん、この遊びを楽しみ、滅ぼしましょう。武士という名の亡霊たちを』

総門を出ても、参加者たちは街中にいました。激しい雨の中、愁二郎は双葉を連れて「薊屋」へと戻ろうとします。

けれども、愁次郎を待っていた男がいました。無骨です。10年ぶりに顔を合わせた二人には、ただならぬ因縁があるようです。

勢いよく斬りかかってきた無骨を、愁次郎は刀を抜かぬまま受け止めます。思わず物陰に隠れた双葉は、二人の姿を見ていることしかできないのでした。

残り 百二十八人

1話で164人減りました。半分以下になったということです。おそろしい減り方ですが、実力者は上位十数名でしょうから、妥当なところでしょう。

デスゲームにありがちなのは、双葉のように主人公を奮い立たせつつも足手まといになる存在ですね。

名作『バトル・ロワイアル』でも、主人公および主人公の親友が片思いしていた女子が、その役割を担っていました。

幻刀斎も誰かを探す目的があって参加したようですが、無骨も「これに参加すれば人斬り刻舟と再会できる」と考えていたんですね。

なんだかちょっとかわいらしく思えてきました。『悪の教典』でのサイコパス教師もよかったのですが、この計算していないあどけない感じもいいですね。

ところで、主催として槐が映されていましたが、実際に槐が主催なのでしょうか。そんな危ないところに主催が出向いていくものでしょうか……。

それはそうとして、主催の狙いが<武士を滅亡させること>ならば、この<誰もゴールにたどり着けない確率が高いデスゲーム>の存在意義が分かりますね。

しかし、実際に誰かが生き残ってしまったら、どうするつもりなのでしょうか……。

※トップ画像・引用文はNetflixから引用いたしました。

ミヅチ

ホラー好きのネタバレブロガーです。ダークファンタジーもミステリも好きです。Netflixオリジナルドラマに首ったけです。

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