このページには、台湾ホラー映画『杏林医院』のキャスト情報やネタバレ、感想があります。
道士の息子アーホンは、父と共に杏林医院で霊界ツアーを開催しました。そこにスーとモン、2人の女性客が訪れます。
スーは手術中に亡くなった夫と、モンは過労と心労のために自殺した看護師の姉と再会するために参加したのです。
杏林医院の霊安室に入った4人は、男の子の人形が乗った車椅子を押している女の悪霊と出会います。
女はなぜ悪霊になったのか? スーの夫の手術が失敗した原因は? モンの姉が自殺したきっかけは?
杏林医院を彷徨う内に、スキャンダルの裏に隠されていた謎がアーホンたちの目の前で再生されていきます……。
基本情報
『杏林医院』は台湾の影童國際が製作したホラー映画です。杏林医院は実在した総合病院で、現在も建物が残っています。
映画が公開された2020年時点でも幽霊屋敷として有名で、近所では人気の肝試しスポットです。
実は公開より4年も前に撮影は完了していたのですが、資金調達面などで揉めた末に、公開が2020年まで延びました。
スタッフ
監督
ブロディ・チュー/朱家麟
プロデュース
ブロディ・チュー/朱家麟
チェン・ホンユエン/陳鴻元
脚本
ブロディ・チュー/朱家麟
キャスト
アーホン/阿宏
リン・ボーホン/林柏宏
道士(アーホンの父)
タイ・バオ/太保
看護師モン・ミャオルー
チュウ・チーイン/朱芷瑩
小児患者の母親
レイ・ホン/洪曉蕾
スー・シャオリン/蘇曉鈴
シュー・リーチー/徐立期
モン・ミャオティン/孟妙如
ヨーコ・ヤン/楊童華
ジャン・ホンション/宏昇
サミュエル・クー/古斌
取材クルーの女性
リン・イエンチュイン/林彦君
映画『杏林医院』ネタバレ
心霊スポットを訪れた撮影クルー
不審火や不正、関係者の自殺が相次ぐ杏林(シンリン)医院――現在は廃病院となったその場所は、人気の心霊スポットと化しています。
杏林医院では、1991年に多数の自殺者が出ました。ある男の子が手術後に急死したことで、母親が焼身自殺した一件がきっかけです。
夜中、撮影クルーが立入禁止となった杏林医院に侵入しました。物音に驚いたクルーが建物を飛び出した後、玄関ドアがひとりでに閉まります――。
杏林医院での霊界ツアー
ある夜――青年アーホンが霊界ツアーの申込書を見ています。道士の家系に生まれたアーホンですが、都会に出て別の仕事を探そうとしていました。
霊界ツアーを組んだのはアーホンの父です。しかし3万元と安くはない金額のためか、客の姿が見えません。
そこに女性がひとりやってきました。スー・シャオリンは、成仏できずに現世をさまよう夫と再会したいと願ってツアーに参加したのです。
もうひとりの女性客モン・ミャオルーも現れます。予約していた2人がやってきたため、アーホンは儀式を始めました。
父は、スーの亡き夫ジャン・ホンションとモンの亡き姉モン・ミャオティンを呼び寄せるのでした。
霊安室
皆が去って行った部屋で車椅子がひとりでに動きます。そんなことも知らず、アーホンたち4人は地下室へと向かっていました。
階段を下りる際、壁に大量の出生資料を見つけたスーは立ち止まります。スーは台南県で1984年10月3日に生まれた赤ちゃんの写真を見つめました。
霊安室を訪れた父は棺を引き出して、そこに入るよう客に指示します。死者に会うためには陰の気を取り入れる必要があるからです。
棺に入った2人は、聞こえてくる物音に脅えて壁を叩きます。アーホンと父は2人を棺から出し、霊安室を後にしました。
アーホンは2人に帰宅するよう勧めますが、スーも、死んだ姉に会いたいモンも引き下がりません。
スーの夫が死んだ手術室
端午節の正午に井戸から汲んだ「午時水」は陽の気が強いアイテムです。死者同様、陰の気をまとったスーとモンは午時水を手渡されました。
アーホンは、スーとモンに霊界の音が聞こえるヘッドホンを渡し、自らも身に着けました。すると、突然大きな音が鳴ります。
モンは詐欺師が仕組んだことだとアーホンに詰め寄りますが、スーは「何か聞こえた」と言って廊下を進んでいきました。
手術室の中から湿り気のある音が聞こえてきます。その手術室は、スーの夫が亡くなった場所でした。
スーは手術衣を着て、手術台に横になります。そして腕に小さな傷を作った時、スーの目には目を閉じた夫の顔が見えました。
スーは傷を広げます。すると手術室の照明が赤く灯り、その場からアーホンたちの姿が消えました。
手術室の外から聞こえてくる子どもの歌う声に誘われてスーが歩み寄っていくと、扉の向こうから霊が現れます……。
モンの姉が死んだ理由
当時妊娠していたスーは、手術が終わってから夫にそれを伝えるつもりでした。しかし当日になって手術の担当医が変わり、夫は死亡します。
スーが「医者と看護師のせい」と言うと、モンは怒りました。モンの姉は看護師をしており、スーの言い草が許せなかったのです。
モンは、追ってきたアーホンの父とスーを閉じ込めました。過労と心労で自殺した姉を持つモンは、患者に対して恨みを持っていたのです。
医療過誤でモンの姉を訴えた患者遺族は、偶然にも霊界ツアーに参加していたスーでした。姉を殺したのはスーだと、モンは語ります。
陰水の効き目
モンの姉は、スーに訴えられた後に杏林医院で幽霊を見たり、鏡に映った自分が悪霊になる幻覚を見るようになっていました。
そして耐え切れなくなり、自ら命を絶ったのです。モンはスーを「人殺し」と呼び、杏林医院から出さないと言いました。
その時、窓が開いて突風が吹きます。モンは開いた窓へと引きずり込まれますが、アーホンの父がそれを止めました。
何としても姉と会いたいと訴えるモンに、父は「陰水」を渡します。必ず霊が見えるようになる代わりに、何が起きても救えなくなると言って――。
陰水を目に垂らしたモンは、姉が自分に電話をかけているところを見ます。しかし、すぐに効果が切れてしまいました。
もう一度姉を見たいモンと父たちが揉み合っていると、陰水の瓶が床に落ちて割れてしまいました。
姉の姿を見たモンが近くの部屋に飛び込むと、部屋のドアが勝手に閉まります。陰水に惹かれて、霊たちが姿を現し始めたのです。
残ったアーホン、父、スーの前に、女の霊が人形を乗せた車椅子を押しながら近寄ってきます。父の指示で、皆は息を止めました。
女の霊は父に近寄り、黒い煙となって父の体内へと入っていきました。刃物を振り回す父を前にして、アーホンとスーは逃げ出します。
父を探せ
息を潜めたアーホンとスーを見つけられず父は去って行きましたが、どこからか子どもが歌う声が聞こえてきます。
陰の気が強くなり過ぎたモンを救うことは諦め、アーホンは父を正気に戻すと決意します。そこでまず、父を探すことにしました。
陰水は陰の気が強いところへ流れます。アーホンが陰水を床に垂らすと、真っ黒な陰水は壁を上っていきました。
陰水が引き寄せられた場所は、女の霊が出てきた手術室でした。そこには、女の霊が吊れていた男の子の人形がいました。
手術台に乗せられた父は、人形の力で胸から腹にかけてメスを入れられます。そこへ向かって進んでいたアーホンとスーの前に、女の霊が現れました。
階段の上からは女の霊が、下からは人形がやってきます。アーホンとスーは息を止め、午時水を使って霊をやり過ごしました。
誘われるアーホンとスー
モンは悪霊となった姉の声に誘われ、姉が飛び降りた窓から身を投げました。その頃、スーは子ども用のおもちゃを見つめていました。
ボーっとしていたスーでしたが、アーホンに促されて先へと進みます。ドアの先には、火事で焦げた医者と看護師たちがいました。
アーホンは、脅えるスーに幸運の呪符を渡しました。そして、曾祖父の遺体から取り出した「霊油」を取り出します。
アーホンは、スーにまっすぐ進むよう話します。スーはアーホンが唱える呪文を真似しながら、一歩ずつ前に進んでいきます。
スーは呼びかけてくる夫の声を聞いて思わず振り返ります。すると2人は、過去の杏林医院に飛ばされました。
息子を亡くした母
モン・ミャオティン――モンの姉が、転院してきた男の子と母親に話をしています。それを見た2人は、母親が悪霊だと気付きました。
モンと母親が部屋を出た直後、男の子の容体が急変します。すぐに医者が駆けつけましたが、男の子はそのまま息を引き取りました。
嘆く母親に、スーが語りかけます。自分も死ねば離れ離れではなくなるというスーの言葉を聞いて、母親は思い切った行動に出ました。
母親の自殺を止めようとしたスーを、モンの姉と人形が待ち受けていました。しかし、すんでのところでスーは逃げることができました。
母親の嘆きをきっかけに
消毒用アルコールを奪った母親を目撃したスーは、母親が焼身自殺するつもりだと知り、それを止めようと考えました。
母親は亡くなった息子が安置されている霊安室でアルコールをかぶりました。そして息子にもアルコールをかけ、ライターで火をつけます。
スーの夫を手術するはずだったチェン先生が骨折したのは、この焼身自殺が原因だったのです。そしてその場には、モンの姉もいました。
別行動をしていたアーホンは、咳き込む音を聞いて父の居場所を突き止めました。アーホンは霊安室で、正気を取り戻した父と再会します。
スーと合流した直後、女の霊が現れます。母親の霊は、心臓病の息子のために生きた人間の心臓を奪おうとしていました。
アーホンは自分をオトリにして、悪霊に霊油をかけるチャンスを作ります。スーはアーホンを救うため、霊油を使い切りました。
スーの決断
午時水も霊油もない状態でも、スーは杏林医院に残ると言います。二度と帰れないとしても、絶対に夫と再会するために……。
スーは夫が見えた手術室に戻り、手首を切ります。しかし再会できた夫は、既に心停止していました。
スーは現実に戻ると、再び手首を切ります。死ぬつもりのスーの手首に、誰かがそっとガーゼを当てました。
スーは手術衣を着たその人の姿を見て、涙ぐみます。血の気のない夫は優しくスーに語りかけました。
スーはやっと、夫に子どもができたことを伝えられました。スーを抱きしめた夫は、目から真っ黒な涙を流します。
スーがふと目を上げると、手術台の上には赤いワンピースを着た女性の首吊り死体がありました。そしてその死体が、カッと目を開きます。
人気ナンバーワン心霊スポット
怪我を負って瀕死の父を支えていたアーホンは、撮影クルーの声に気付きました。アーホンは父を救うため、クルーに話しかけます。
しかし、アーホンはクルーの体をすり抜けてしまいました。戸惑うアーホンを残して、クルーたちは去って行きます。
杏林医院の割れたガラスの向こうには、ぼうっと立っているアーホンたち4人の姿が見えるのでした……。
感想・考察
Twitterでの反応
ミヅチガタリ
終盤、スーの前に赤いワンピースの女の霊が出て来て「誰!?!?」となったのは私だけではないでしょう……!
台湾では人の魂のことを「鬼」(グイ)と言うそうですが、最後に出てきた女の霊は「鬼王」と言われていますね。
「鬼王」を翻訳すると「ゴーストキング」と言われました。おそらく、杏林医院におけるボス格の悪霊が赤いワンピースの女なのでしょう。
杏林医院で起きた全ての事件の発端は、心臓病の息子を亡くし焼身自殺を図った母親だと思われていました。
しかし、本当のボスは手術台の上で首を括った赤いワンピースの女だったわけですね……。今までの苦労は一体……。
赤いワンピースの女が憑いた相手がモンの姉だったのかな? と私は考えています。そうでなければ不幸が過ぎます!
アーホンを始め、父もスーもモンも杏林医院に棲む霊のひとりになってしまいましたね。霊安室に入った時点でアウトだったのかな……。
スーが見ていた赤ちゃんの写真ですが、1984年生まれで予定通り2016年公開として計算すると、劇中では30代前半になっているはずです。
初めは「スーの子どもかな?」と思いましたが、信頼できない病院で産むとは考えられませんし、そもそも計算が合わないですよね。
スー本人か、もしくは夫なのでしょうか? そしてスーの子どもについては、一切回収されないまま終わってしまいましたね……。
色々と回収して欲しい問題はありますが、資金調達で揉めたりコロナで苦労したり大変だったようなので、続編は望めませんね~。
※トップ画像はNetflixから引用いたしました。
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