Netflixドラマ『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「魔女の家での夢」ネタバレ感想

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Netflix独占配信の『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「魔女の家での夢」は、幼い頃に双子の妹を失った青年ウォルターが異次元についての執着を募らせていく物語です。

ミヅチ
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主人公ウォルターを演じるのは、皆様ご存じのルパート・グリントです。つやつやしたロン役が印象深いですが、疲れ果てた青年役もいいですよ!

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Netflixドラマ『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「魔女の家での夢」情報

日本公開日2022年10月25日
制作国アメリカ
ジャンルホラー
注意書きR-16+
暴力、ヌード、言葉づかい、薬物
上映時間1時間3分

『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「魔女の家での夢」主なキャスト・スタッフ

キャスト

ウォルター・ギルマン
亡き双子の妹との再会を望む青年
ルパート・グリント
フランク
ウォルターの同僚で友人
イスマエル・クルス・コルドバ
ジェンキンス・ブラウン
魔女の家の屋根裏に棲んでいる
DJ・クオールズ

スタッフ

監督キャサリン・ハードウィック
脚本ミカ・ワトキンス
ハワード・フィリップス・ラヴクラフト

『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「魔女の家での夢」あらすじ

スピリチュアリスト協会の会員として無給で働いている青年ウォルター・ギルマンは、幼い頃に双子の妹エパリーを喪っていました。

ウォルターは、目の前で異次元に連れ去られたエパリーのことを忘れられずにいます。そのため異次元についての情報を得ようと、貧乏に耐え今の生活を続けていました。

しかし、ウォルターの前に現れるのは偽物ばかりです。同じ年頃の友人フランクはそんな生活に嫌気が差し、まともな職に就くことに決めました。

副業でバー ブラックホルンで働いているウォルターは、男性客二人組が異次元について話しているところに遭遇します。そしてその出会いが、ウォルターの運命を変えていきます――。

ここから先はネタバレがあります!

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『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「魔女の家での夢」ネタバレと感想・考察

異次元の世界

これは俺と俺、二人の男が登場するハッピーエンドの物語である――。幼い男の子ウォルターは、青白い顔をした双子の妹エパリーから呼びかけられました。

エパリーは幽霊によってどこかに連れ去られると信じ込んでいます。ウォルターは、エパリーを守るという約束を信じてほしいと、エパリーの手を握りました。

しかし、ウォルターの言葉にうなづいた次の瞬間……エパリーは息を引き取ります。そして、強い風が部屋の中に吹き込んできました。

エパリーの魂はその体を離れ、ウォルターの前に現れます。輪郭のぼやけたエパリーは、ベッドの上の自分の体を見て、自らの死に気付きました。

そして、なんらかの強い力によってエパリーの魂は家の外へと引きずられていき……植え込みの中へと吸い込まれていきました。

死の近い人は、幽霊が見える、あの世を感じるといった発言をすることがありますよね。現実はどうか分かりませんが、ホラーではありがちなシーンです。

しかし、少年ウォルターにとってその言葉は、死を恐れる妹が作り上げた幻想のようなものだったのでしょう。

だからこそ、力強く妹を守ると言ったのだと思います。幼い頃特有の、理由のない全能感もあったかもしれません。

けれども、妹は亡くなって霊体となり、その霊体は妹の言葉通り連れ去られてしまいました。ウォルターはそれを目撃して、大きく人生が変わったことでしょう。

1933年――大人になったウォルターは、とある会場にいました。あの世とこの世の間にある境界、それを繋ぐ橋を渡ることのできる人物マダム・レヴィンを見るためです。

マダム・レヴィンは亡き人を呼び出すと宣言しました。するとろうそくがふっと消え、マダム・レヴィンと降霊を頼んだ遺族のいる場所が大きく揺れます。

そして、マダム・レヴィンの口に光る煙のようなものが入っていきました。ウォルターは食い入るように降霊術を見つめます。これは本物だと、確信していたのです。

妹との再会を望むウォルターは、マダム・レヴィンを頼ろうと考えます。しかし、そっと楽屋に忍び込んだウォルターの耳に入ってきたのは、衝撃的な事実でした。

マダム・レヴィンと司会者は組んでいたのです。卵白や、ホットミルクの粘土に浸したティッシュを使って、霊現象を起こしているように見せかけていただけでした。

皆様よくご存じのルパート・グリント――『ハリー・ポッター』シリーズにおけるロナルド・ウィーズリー役――が今作の主人公です。

ロン役とはかなり印象が違い、繊細でありながら執念深い青年ですね。共通しているのは、妹を大切にしていることでしょうか。

亡き妹が目の前で異次元の世界に吸い込まれていく様を見たウォルターは、本気で異次元の世界を信じています。

とはいえ、多くの人にとってそれはエンターテインメントのひとつに過ぎません。面白がって、金稼ぎの道具にして、消費するための道具なのです。

がっかりしたウォルターですが、その現実とは折り合いをつけて生きているようですね。マダム・レヴィンや司会者に突っかかっていくことはありませんでした。

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辺獄―LIMBO―

スピリチュアリスト協会に身を置くウォルターは、同じく協会に所属する友人フランクと共にいました。フランクは無給の協会で働くのを辞め、まともな職に就くと宣言します。

ひとり帰宅したウォルターは、暗い部屋の中で妹エパリーのことを思い出していました。明るく優しいエパリーとの日々は、いまだ生々しくウォルターの心に残っているのです。

ウォルターは州外にいる霊媒師の真偽を確かめるため、上司のラブスカフニに出張を打診します。けれども、実績を上げられないためお金は出せないと断られました。

ウォルターのいるマサチューセッツ支部は閉鎖目前です。副業でバー ブラックホルンで働いていると、タイム誌に勤め始めた友人フランクがやってきました。

フランクは貧乏暮らしを続けるウォルターを心配して、求人を紹介しに来たのです。しかしウォルターは聞く耳を持たず、フランクを追い返しました。

フランクも何か理由があってスピリチュアリスト協会にいたのでしょう。けれども、ウォルターとは傾ける情熱や執着の強さに違いがありました。

ウォルターはおそらく、妹エパリーを亡くした日からずっと、そこに心を残したままでいるのです。

フランクは自分の人生とスピリチュアルにかける時間を比べて、人生を選びました。それは大抵の人にとって、正しい選択だといえるでしょう。

それが、ウォルターにとっては間違いなのです。異次元について分からないままでは、エパリーを亡くした日からウォルターは永遠に離れられないのですから……。

テーブルの上を片付けていたウォルターは、とある二人組が異次元の世界について話していることに気付きます。彼らは、異次元である森のことを話していました。

妹エパリーの魂が吸い込まれていった植え込みを森と呼んでいるのでしょう。店の外へ出た男を追うと、男はウォルターの話を聞いてくれました。

どうやら妹が行ったのは、未練がある者が集う“辺獄(リンボ)”のようです。迷える魂の森とも呼ばれるその場所へ行こうと、ウォルターは決心しました。

奇妙な地下室へと誘われたウォルターは、“金の液体”――サボテンの花から抽出したウーラ・ドイエッリを手渡されます。そして、森で波紋を起こさないよう注意を受けました。

金を払い“金の液体”を手にしたウォルターは、小瓶の中身を一気に喉へと流し込みます。そして……ふと横を見ると、さきほどまで存在しなかった大きな穴が開いていました。

私にとってリンボとは、有名なゲームが思い浮かぶ言葉です。その名もまさしく『LIMBO』――なんと主人公は男の子で、探しに行く相手は妹なのです。

この物語と同じくリンボは辺獄を指しているため……ほぼ同じシチュエーションだと言っていいでしょう。おそらく、辺獄というものが似たアイディアを生みやすいものなのです。

まず辺獄とは何かというと、キリスト教圏においては、天国でも地獄でもない場所となります。天国に行く要件を満たせず、地獄に行く理由もない人が行く場所です。

とはいえ、原義としては「地獄の端」となり、決して明るい場所ではありません。それもそのはず、ここには洗礼を受けていない人がいるのです。

多くの場合、洗礼を受ける前に死んでしまった幼児がここにたどり着くとされています。エパリーは幼児とはいえない年齢でしたが、何か理由があったのでしょう。

厄介なのは、地獄は地獄同士で、煉獄と天国とは繋がっているのですが……辺獄はそのどことも繋がっていない場所とされています。

ゲームにおいては、妹とはぐれてしまった少年が地獄の最下層から上っていき、辺獄へとたどり着こうと試行錯誤する様子が描かれていました。

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三角形

双子の妹エパリーを吸い込んだときと同じように、地面を底辺として三角形に木の幹が重なり合っています。恐る恐るその中へと踏み込むと、ウォルターの腕に枝が絡みついてきました。

木のトンネルをくぐり抜けた先には、もやのかかった森がありました。見知らぬ人々がぼんやりとたたずんでいます。ウォルターは、妹の名を呼びながら森を進んでいきました。

エパリーはすぐに見つかりました。ウォルターは駆け寄ろうとしますが、その腕にまたしても枝が絡みつきます。そして、ウォルターは現実へと引き戻されてしまいました。

ウォルターは午前2時にも関わらず、フランクの部屋を訪ねます。話を聞いたフランクは、ウォルターが薬物を摂取させられたのだろうと言いました。

がっかりしたウォルターは、ひとり地下室へと向かいます。そして再び辺獄へと入り、今度は妹エパリーと会話しました。けれども、いつもいいところで現実に引き戻されるのです。

ウォルターは、フランクが喜ぶだろうと思ったのでしょう。自分と同じように死者に思いを馳せる人物だったのだと考えられます。

しかし、フランクはその思いを断ち切り、現実に身を置くことを選びました。もはやウォルターは困った知人でしかなく、薬物に手を出したとなれば絶交も有り得ます。

しれっとウォルターはフランクの金を盗もうとしていました。フランクは金を渡すくらいならいいと思っていたようですが、薬物を買うお金にはできないと取り上げます。

フランクは完全に善意の人です。ごく一般的な視点から見れば、フランクはいい友人です。けれども、今、辺獄にたどり着いたと信じているウォルターにとっては……。

辺獄の中には、スピリチュアリスト協会に調査依頼に訪れたキザイア・メイスン宅に住む女性画家もいました。その画家は、三角形のキャンバスに魔女の家を描いています。

現実に戻ったウォルターは、キザイアについて調べました。キザイアは17世紀後半の薬草療法師であり、異次元に移動する能力を持つと自称していた人です。

キザイアは古代の儀式用短剣を異世界に入る鍵として使っていました。その後、魔女裁判にかけられたキザイアは首吊り処刑されましたが、その遺体は持ち去られます。

キザイアの住む家は女性画家が描いていた通りのもので、ボストンから30km離れたオズグッド通り33にありました。ウォルターはなんとしても魔女の家に行こうと考えます。

そんなウォルターを見て、スピリチュアリスト協会は会員資格の剥奪を決めました。肩を落として帰るウォルターの目に入ったのは、あの女性画家が描いていた魔女の家の絵です。

キザイア・メイスンは有名ゲーム『Fate/Grand Order』にも登場しており、知名度は低くない人物かもしれませんね。

セイラム魔女裁判にて裁かれた魔女のひとりとされています。「墓場のネズミ」で語られた魔女たちは実在しますが、キザイアは非実在の人物ですね。

実際の魔女裁判は火あぶりなどの過激な方法が用いられていたので、首吊り処刑という穏便な方法を用いている時点で現実感が薄いと分かった方もいるでしょう。

女性画家は、キザイアの家を“神秘の直線(レイライン)”の上にある家なのだと語っていました。もしかしたら、画家は“金の液体”を使わずに“森”に入れるのかもしれません。

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キザイアとジェンキンス

ウォルターは、キザイアの家の屋根裏を借りることにしました。そこには大きなネズミも棲んでいましたが、ウォルターはまるで気にしていません。

ネズミが電気コードをかじってしまったため、ウォルターは暖炉に火を焚き、ランプで本を読みます。すると、どこからかウォルターの音読を復唱する声が聞こえてきました。

その声は、“鍵”があれば別世界の物質を現実に持ち込めると語ります。異次元について詳しい何者かがいると直感したウォルターは、ランプを手に部屋を歩き回り始めました。

部屋の隅の暖炉から、もう一方の隅へ――そして、再び暖炉へ。しかし、誰もいませんでした。諦めてベッドに就いたウォルターは、金縛りに遭います。

体を動かせずにいるウォルターのところへ、部屋の隅から“何か”が近付いてきました。うなり声を上げる“何か”は木の幹が人間に形を変えたもののようです。

天井から血のようなものがぽたぽたと落ちてきているのに、まるで気にしていないところが図太いですね。

屋根裏なので、その上にあるものは屋根くらいでしょう。屋根から血が染み出してくるというのは、かなり異常な状況だと思うのですが……ウォルターは我関せずです。

そんな胆力のあるウォルターに興味を持ったのか――おそらくはキザイア本人と思われる怪物が接触を図ってきたようです。

キザイアは肉体を失ったあと、植物に魂を宿すことで永遠の命を得たのでしょうか……。薬草療法師って、色々できるんですね。

“何か”とウォルターとの間に割って入るように、人面のネズミがウォルターの体に乗ってきます。ネズミはウォルターを貧乏人とバカにしますが、“何か”は違いました。

ウォルターが双子の片割れであると知り、“何か”は興味を持ったようでした。ネズミのジェンキンス・ブラウンは、ウォルターが自分たちを解放してくれる人物かと語ります。

“何か”は異次元に入る鍵を取り出すと、窓の横の壁に何度か押し付けます。すると急に部屋が明るくなり、ウォルターは動けるようになりました。

“何か”が触れていた壁を見ると、同じ大きさの人の形が並んで二つ描かれていました。そしてその絵は、鍵の絵とイコールで結ばれています。つまり、双子こそが鍵だということです。

ウォルターは再び地下室に行き、金の液体を飲みます。いつもは地下室で目覚めて“森”に入るのですが、今回目覚めた場所は魔女の家でした。そして、魔女の家と“森”が繋がります。

情報をまとめると、鍵は双子……つまりウォルターとエパリーです。そして双子がいれば、“森”つまり辺獄から現実へと、何かを持ち込むことができます。

キザイアが処刑されたあと、遺体がなくなったと本に書かれていました。しかしキザイアは今、その体を持っていません。

キザイアが持ち帰りたいのは、自身の肉体ではないでしょうか。ネズミのジェンキンスも、おそらくは元々人間だったのだと思います。

二人分の肉体は辺獄にあるけれど、鍵がなく現世に持ち帰れずにいる――そう考えると、二人が鍵を待って半世紀以上に渡り魔女の家に留まった理由が分かりますね。

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波紋

いつも穏やかな雰囲気の“森”が、今回はやけに暗く足元も見えません。双子の妹エパリーはすぐにウォルターを見つけ、すぐに逃げなければいけないと告げます。

ウォルターは“森”に波紋を起こしてしまったのです。二人が見つめる先には、木の幹と化したキザイアがいました。キザイアは二人を捜し、森の中を駆け回ります。

二人は追ってくるキザイアとジェンキンスを振り払い、現世へと戻りました。ウォルターは無事にエパリーの魂と共に、現世にある魔女の家の屋根裏に着いたのです。

しかし、キザイアとジェンキンスは諦めていませんでした。再び追われる立場となったウォルターとエパリーは、向かいにある女性画家の部屋に逃げ込みます。

画家は、キザイアが残した思念を絵にし続けていました。魔女の家だけでなく、エパリーもウォルターも、画家の頭の中へと流れ込む思念の中にあったのです。

女性画家は、自分の描いた絵をスピリチュアリスト協会へと持ち込んで調査を依頼していました。

魔女の思念に囚われて、その絵ばかり描かされるようになったことが原因でしょう。キザイアはまだ存在するのだと訴えるために足を運んだのです。

しかし、協会を保たせることを第一に考える上司ラブスカフニは「妙な画家が妙な絵を持ち込んで騒いでいる」くらいにしか思っていませんでした。

本当のところ、異次元の世界に最も近い場所にいる人物は、他の誰でもなくこの女性画家だったのです。ウォルターが協会ですれ違った、この画家です。

ずいぶんと遠回りしてしまいましたが、やっと真相にたどり着けそうですね!

三角形のキャンバスに描かれた絵を、女性画家が並べていきます。キザイアとエパリーは死した迷える魂であるため同じ円の中にいますが、生きているウォルターは別の円にいました。

死した魂を現世に戻し、その上で日の出前に生ける魂を奪う――それがキザイアの狙いでした。物事を逆転させることで、自らを生き返らせようというのです。

魔女が踏み込めない聖域で守ってもらうため、女性画家はウォルターを連れて教会に向かいました。シスターは悪魔と関わった二人に怒りつつも、教会に留めてくれます。

ウォルターは教会へとフランクを呼び出しました。本当に妹を連れ帰ったのだとフランクに伝えるためです。フランクは信じませんが、そこにキザイアが現れます。

キザイアは教会の中へは入れません。けれども、外から語りかけ、ウォルターを引きずり出す力は持っています。フランクは何もできず、ウォルターを奪われてしまいました。

キザイアはどうすれば復活できるのかと考えるうちに、双子こそが鍵であることに気付いたのでしょう。経緯は分かりませんが、これが最初の出来事だと思います。

そして、“森”――辺獄で双子を捜したものの、見つからなかったのだと思われます。それは難しいですよね、片方が辺獄にいて片方が現世にいる双子というのは……。

その状況を自ら作り出せばいいと、キザイアは考えるようになったはずです。現世で片方が命を落としそうな双子を捜し、その子を辺獄へと連れ帰ればいいのです。

そうして目をつけられたのが、ウォルターとエパリーだったのでしょう。エパリーが生きているうちに接触することで、エパリーは天国に行けない立場となります。

その上で、いつかウォルターがエパリーを取り戻しに来るようにしなければなりません。だからこそウォルターの目の前でエパリーを辺獄に引きずり込み、強いショックを与えたのです。

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日の出前

ウォルターは魔女の家の屋根裏――かつてキザイアが住んでいた部屋に連れて行かれました。その一方で、フランクは初めてエパリーの魂と対面しました。

キザイアに襲われているウォルターが助けを呼びます。その声は教会にも響きますが、フランクはすっかり弱気になっていました。エパリーは諦めて、自分でウォルターを救うことにします。

エパリーが邪魔をしたことで、キザイアが持っていた杖がキザイア自身を貫きました。キザイアの体はぼろぼろに朽ち果てていきます。

キザイアによる呪いの力から解き放たれたためか、エパリーの魂は天国へと迎えられることになりました。エパリーはまばゆい光の中、消えていきます。

ウォルターは、消えゆくエパリーの魂に「愛している」と告げました。そして、安心したようにゆっくりと床に倒れ込みます。

ウォルターが何を目的として動いているのかは、よく分かっていませんでした。分かることは、エパリーを救えなかった自分を責めているという一点です。

エパリーと再会できたこと、現世に連れ帰れたことは、ウォルターにとってうれしい出来事だったはずです。けれども、エパリー自身にとってはそうではありませんでした。

エパリーは兄の命を犠牲にしてまで生き返りたいとは思っていません。また、子どもの頃のようにウォルターには明るく前向きな人でいてほしいと思っていました。

兄たるもの、妹の要望を無視はできないでしょう。そうなれば、ウォルター自身の後悔を拭うことくらいしか目標がないことになります。

そう考えると、ウォルターが最後に見つけた希望は、魔女キザイアの手からエパリーの魂を取り戻し、本来向かうべきだった天国へと送ることだった……のかもしれません。

女性画家の部屋にあるベッドに寝かされたウォルターは、疲れ果てて眠り込んでいます。フランクは異次元の世界が実在することを認め、ウォルターに感心していました。

そのとき、フランクは上の階から何かが滴ってくることに気付きます。女性画家と共に屋根裏に向かったフランクは、塞がれたドアを見つけました。

その奥にはわらが敷き詰められた小部屋があり、白骨化したキザイアと、小さな人間の頭蓋骨がついたネズミの骨がありました。

ウォルターが悲鳴を上げて二人を呼び戻します。けれども、もう手遅れでした。キザイアは消えましたが、ジェンキンスはまだ“いる”のです。

ウォルターの胸を食い破り、人面ネズミのジェンキンスが飛び出しました。女性画家とフランクは、日の出前に予言通りウォルターが命を落としたことに肩を落とします。

二人が去ったあと、ジェンキンスはウォルターの胸の中に戻りました。そして、ウォルターの体が使えなくなるまで乗っ取ることを決めます。

そう、これは“俺”ジェンキンス・ブラウンと、“俺”ウォルター・ギルマンの物語――二人とも願いを叶えたハッピーエンドの物語なのです。

魔女キザイアにとって、ジェンキンスは使い魔のようなものでしょう。どこにでも潜り込んで、事前に準備をしてくれる有能な助手です。

キザイアが復活すれば、その魔法によってジェンキンスも復活できたのでしょう。遺骨を箱に入れて持っておくくらいですから、キザイアはジェンキンスを大切に思っていたと思われます。

しかし、そのキザイアはジェンキンスの目の前で朽ち果ててしまいました。ジェンキンスがこの先できることと言えば、体の小ささと動きの速さを生かして逃げることくらいです。

そんなジェンキンスにとって有利に働いたのは――皮肉にもキザイアの消滅でした。双子の妹エパリーが天国に上ったことも……。

皆「これで終わった」と思ったことでしょう。しかしよく考えれば、辺獄から現世に戻った死者はエパリー・キザイア・ジェンキンスの3人、生者はウォルターひとりです。

生者と死者を入れ替えることで死者が復活するシステムなのですから、ウォルターが生きており、ジェンキンスの魂が消滅していないのならば、安心するべきではなかったのです。

しかし結果として、ウォルターは双子の妹エパリーを魔女キザイアの手から取り戻す願いを叶え、ジェンキンスは復活する願いを叶えました。

ハッピーエンドと言うにはグロテスクですが、“俺”も“俺”も願いを叶えられたことは、幸福であったと言っていいでしょう。

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『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「魔女の家での夢」まとめ

魔女キザイア・メイスンとその使い魔の人面ネズミ ジェンキンス・ブラウンが出てくるため、ホラーというよりもファンタジーの香りが強い作品でした。

双子には不思議な力があるというのは、全世界で言われていることなのでしょうか……。キリスト教で双子と言えば、大天使ミカエルと悪魔サタンですが……。

もしそれに重ねているのだとすれば、ミカエルがエパリー、サタンがウォルターということでしょうか。常に正しい道を選ぶエパリーは、まさに天使といった風情でしたね。

結果的にウォルターは辺獄に行けましたが、金の液体が本当に辺獄への道を開くものだったのか分かりませんでした。フランクの言う通り、ただの薬物だったのかもしれません。

魔女キザイアは双子を狙っていたため、いつか必ずウォルターは辺獄に導かれたことでしょう。フランクの言葉通り、訳の分からないものは口に入れないほうがよさそうです……。

※トップ画像はNetflixから引用いたしました。

ミヅチ

ホラー好きのネタバレブロガーです。ダークファンタジーもミステリも好きです。Netflixオリジナルドラマに首ったけです。

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