Netflix独占配信映画『木曜殺人クラブ』ネタバレ感想

Netflix映画『木曜殺人クラブ』アイキャッチ
この記事は約33分で読めます。

Netflix独占配信映画『木曜殺人クラブ』は、高齢者施設クーパーズ・チェイスの入居者が作ったクラブの老人たちが殺人事件を解決していく物語です。

ミヅチ
ミヅチ

登場人物の半分以上が高齢者という珍しい設定ですが、サスペンスとミステリが満載で楽しかったです!

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Netflix独占配信映画『木曜殺人クラブ』情報

公開日2025年8月28日
制作国アメリカ
ジャンルコメディ、サスペンス、ミステリー
注意書きR-13+
暴力、言葉づかい
上映時間2時間

Netflix独占配信映画『木曜殺人クラブ』主なキャスト・スタッフ

キャスト

エリザベス・ベスト
クラブの中心人物/経歴は謎
ヘレン・ミレン
『サラ・クーパーのすべて順調』
ロン・リッチー
クラブのメンバー/元労働組合のリーダー
ピアース・ブロスナン
『ギリ義理ファミリー』『ユーロヴィジョン歌合戦~ファイア・サーガ物語~』
イブラヒム・アリフ
クラブのメンバー/元精神科医
ベン・キングズレー
『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』『紅海リゾート―奇跡の救出計画―』
ジョイス・メドウクロフト
クラブの新メンバー/元看護士
セリア・イムリー
『呪われた死霊館』『ため息に乾杯』
ドナ・デ・フレイタス
フェアヘイブン署の女性巡査
ナオミ・アッキー
『マスター・オブ・ゼロ』『このサイテーな世界の終わり』
クリス・ハドソン
フェアヘイブン署の主任警部
ダニエル・メイズ
『ホワイトライン』『チキンラン:ナゲット大作戦』
ボグダン・ヤンコフスキ
外国から来た建設業者
ヘンリー・ロイド=ヒューズ
『ベイカー街探偵団』『ザ・イングリッシュ・ゲーム』
ジェイソン・リッチー
ロンの息子/元ボクサー
トム・エリス
『プレイヤーズ:本気の恋、始めます!』『LUCIFER/ルシファー』
スティーブン・ベスト
エリザベスの夫/認知症
ジョナサン・プライス
『三体』『ザ・クラウン』『2人のローマ教皇』
ジョン・グレイ
ペニーの夫
ポール・フリーマン
トニー・カラン
施設の共同経営者/建設業者
ジェフ・ベル
ボビー・タナー
犯罪組織の親玉
リチャード・E・グラント
『説得』『イカれてる?!』『ことりのロビン』
ジョアンナ・メドウクロフト
ジョイスの娘/金融業
イングリッド・オリバー

スタッフ

原作『木曜殺人クラブ』
リチャード・オスマン 著
羽田詩津子 訳
監督クリス・コロンバス
『クリスマス・クロニクル PART2』
脚本ケイティ・ブランド
スザンヌ・ヒースコート

Netflix独占配信映画『木曜殺人クラブ』あらすじ

高齢者施設クーパーズ・チェイスの入居者エリザベス、ロン、イブラヒムの3名は、<木曜殺人クラブ>で未解決事件について推理する活動をしています。

そこで扱われているのは70年代に起きた殺人事件です。犯人は見つかっておらず、医療の知識が必要なため、3人だけではこれ以上捜査できません。

そこに現れたのは、元看護士のジョイスでした。3人がジョイスを巻き込んでクラブ活動をしていると、街で殺人事件が起こります。

殺されたのは施設のオーナーのひとり、トニーでした。トニーがいなくなれば、共同経営者イアンの考えにより施設は潰されてしまうかもしれません。

クーパーズ・チェイスを守るため、木曜殺人クラブの面々は動き出します……。

ここから先はネタバレがあります!

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Netflix独占配信映画『木曜殺人クラブ』ネタバレと感想・考察

クラブの新メンバー

未解決事件は1973年5月11日の午前0時48分頃に始まりました。ロンドン東部ブリックレーンにて、その男は恋人アンジェラ・ヒューズの家を訪ねる途中でした。

男が角を曲がったとき、アンジェラの部屋から争うような声が聞こえてきました。次の瞬間、アンジェラは窓を突き破って落ちてきたのです。

その胸にはナイフが刺さっていました。覆面男が、慌てた様子で建物から出てきます。そして男の姿を見るやいなや、走り去っていきました。

<木曜殺人クラブ>のメンバーである白髪の老女エリザベス・ベストが説明します。それに対し、白い髭をたくわえた老人ロン・リッチーが疑問を投げかけました。

アンジェラは貧乏な若者に過ぎず、盗まれたものもありません。強盗の目的が分からないのです。それにスキンヘッドの老人イブラヒム・アリフが続きました。

覆面男を目撃したのは恋人の男――25歳の整備士ピーター・マーサーだけなのです。体を負傷して戦場を退いたからには、トラウマによる犯行かもしれません。

ピーターが姿を消したこともあり、これ以上のことを3人で探るのは難しそうです。アンジェラは、医療に詳しい者が必要だと語るのでした。

開始早々、高齢者3名が現れました。エリザベスとロンはヨーロッパ系です。イブラヒムは名前から察するにイスラム圏、おそらくアジアの血が入っているでしょう。

エリザベスは飛びぬけて知的な物言いをします。しかし理系というよりは、情報処理に強い文系タイプのようですね。

ロンはどちらかというと体育会系な雰囲気です。でっぷりとしたお腹を見るに、現役時代はかなり体を動かしていた人物かも……。

イブラヒムはどこか神経質な、それでいて他人に寄り添うような、二面性を感じる人物です。推測よりも、まずは事実を確認する理系タイプです。

3人共、豊かな老後を送ることのできる資産を持っているようです。エリザベスとイブラヒムは、引退後もスーツを着るきっちりした人です。

一方、ロンはジーパンにデニムのジャケットと身軽さを重視した出で立ちです。上着がなくてもよい場であれば、もっとラフな恰好をしていそうですね。

3人が過ごしているのは、クーパーズ・チェイスという高齢者施設です。そこにハックニーに暮らす老女ジョイス・メドウクロフトが娘ジョアンナと共にやってきました。

ジョイスは、施設で暮らすことを心配する娘ジョアンナと話し合うつもりです。そのため、施設が充実していることを教えていました。

木曜日以外はパズル部屋になっている<木曜殺人クラブ>の部屋に、二人が入ってきます。しかし、遺体の写真を見ても驚きませんでした。

エリザベスが調べたところ、ジョイスは医療訓練を受けた元看護士――女医といってもいい存在でした。3人は、ジョイスを未解決事件の推理に巻き込みます。

ジョイスはアンジェラが助かる方法があっただろうかと尋ねられました。体重によるが、46kgならば助かった可能性はあるとジョイスは答えます。

ジョイスは確かな医療知識を持つ人物だと、エリザベスは確信しました。木曜殺人クラブに誘われたジョイスは、どこか楽しそうに微笑むのでした。

アーチェリーにラマに、施設の外観はまるでお城……と至れり尽くせりの施設ですね。それに、自主的に母親が施設に入ると言い出すなんて有難いことです。

それでも、ジョイスの娘には何か気にかかることがあるのでしょう。安い施設には思えないので、遺産が減るのが気がかりなのかもしれませんね。

ジョイスは、おそらく声をかけてくれたであろう数独に夢中な男性と一緒にいました。けれども、木曜殺人クラブの議題のほうが楽しそうだと思ったようです。

ところで、認知症が進んでいく要因として<脳への刺激不足>があげられます。四大原因のひとつともなっています。

一方で、急激な環境の変化もよくないそうです。脳が混乱することや、不安・恐怖を感じることが要因です。

考えてみると、ジョイスにとってはひとり暮らしの生活にも変化が起きています。街はどんどん若者向けになっていき、過ごしにくくなっているのです。

そこのところ、高齢者施設ならば仲間も作りやすく、生活習慣を大きく乱すこともなく、気が向けば運動だってできます。

何より、ジョイス自身が「楽しそうだ」と思えるクラブ活動に出会えたことで、豊かな生活を送れるのではと期待できますね。

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友情

中年の男イアン・ヴェンサムは、妻ジェマと争っていました。ジェマはイアンの浮気の代償として車、金、マヨルカのアパートを求めてきていました。

ジェマがなんとしても離婚する気のようだと聞き、イアンは怒りを爆発させます。資産を増やすため、墓地と教会を取り壊すと言い出しました。

土地の所有者であるイアンですが、独断で売却することはできません。共同経営者で建設業者のトニー・カランが反対するのが分かっているからです。

イアンは、トニーの代わりに建設業者ボグダン・ヤンコフスキーに解体を持ちかけます。ボグダンはポーランドにいる母の治療費を必要としているためです。

ボグダンは、トニーは危険人物だと恐れていました。イアンは自分こそが最も危険なのだと圧をかけ、ボグダンを頷かせるのでした。

いやはや、分かりやすい悪役が出てきたものですね。金! 女! 力! の三拍子で相手を屈服させてきた人生が透けて見えます。

ジェマはこんな男と結婚し、多額の慰謝料を請求するくらいなので、よくお似合いの夫婦なのでしょう。ジェマも不倫しているようですし……。

ところが、イアンに説得……というよりも無理矢理イエスと言わされている可哀想な男ボグダンは、そう悪い男ではなさそうです。

ボグダンは、母の治療費を稼ぐためにイアンのような男からの仕事も請け負う人物です。追い詰められているだけで、根は善人なのだと思います。

そして気になるのは、話に出てきた<危険人物>トニーですね。イアンと共同経営をするくらいですから、渡り合えるくらいの人物だと思っておいたほうがいいでしょう。

トニー・カランは、クーパーズ・チェイスに住むモードおばさんを訪ねていました。トニーは木曜殺人クラブのメンバーとも顔見知りです。

トニーは80年代に修道院を買い、自力で改修を行いました。資金のためにイアンとの共同経営を始めましたが、意見が対立していることは周知の事実です。

イアンが施設を高級マンションにしようと企んでいることは入居者も知っていることでした。そのため、入居者はトニーを重要視しています。

4人になった木曜殺人クラブは<白をまとった女性事件>の推理を再開させます。そのとき、ジョイスがなぜ事件の詳細を知ることができるのかと尋ねました。

当時、女性刑事ペニー・グレイ警部は、男性刑事たちによって捜査を妨害されました。ペニーはエリザベスの親友であり、創設メンバーでもあります。

ペニーは現在ホスピス棟におり、クラブに参加することはできません。そんなペニーのために、エリザベスは事件を解決しようと考えているのです。

最初にクーパーズ・チェイスを立ち上げたのはトニーだったんですね。イアンのような人は外聞のためであってもやらないだろうと思ったので、納得です。

トニーひとりでは経営が難しかったのか、イアンの財力に頼ったのか……どちらにしろ、共同経営となったことで、お互いに自分の意見を通しにくくなったはずです。

そんな中でも、木曜殺人クラブの活動は続いていきます。ジョイスを加えたことで、未解決事件解決に一筋の光明が差し込みました。

なぜ彼らが事件にこだわるのか。それは、創設メンバーであり、現在はクラブに参加できない状態にある事件関係者ペニーのためだったんですね。

ペニーの現役時代、女性刑事の言葉は軽く扱われたことでしょう。犯人かもしれない人物を逃してしまい、ペニーがどれほど悔やんだかは理解できます。

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ドナ巡査

ペニーの夫ジョンは、エリザベスに感謝していました。それまで退屈していたペニーを救ったのは、エリザベスと立ち上げた木曜殺人クラブでした。

エリザベスの夫スティーブンは認知症になっています。日によって、親しんできた夫であるときもあれば、そうでないときもあります。

よい状態であるときを大切にするよう、ジョンはエリザベスを諭します。エリザベスは悩み深き日々を過ごしているのです。

ある日、フェアヘイブン署から女性警察官ドナ・デ・フレイタス巡査がやってきました。入居者たちに家の防犯について教えるためです。

ドナ巡査は、話をまぜっかえす老人たちに苦心します。そんなときふと外に視線をやると、熱心な駐車委員がパトカーにタイヤロックをつけていました。

ドナ巡査はアフリカ系の女性警察官で、とても真面目ですが、うっかりしたところもあるようです。

老人たちのボケ――ツッコミと対になるほうのボケに、困ったように笑うことしかできないところが、かわいいですね。

そして、エリザベスが木曜殺人クラブの活動に熱心になる理由のひとつは友人ペニーです。そしてもうひとつは、夫スティーブンなんですね。

エリザベスの置かれた現実は厳しいものです。愛する夫が、まるで別人になってしまうときがあり、元に戻るときもあり……その波がエリザベスを悩ませています。

その現実から解放されて、ただひたすらに事件を追うことが、エリザベスの救いとなっているのでしょう。

1時間は施設から動けないこととなり、ドナ巡査は木曜殺人クラブと食事を共にすることにしました。

交通違反の取り締まりばかりで一日を終えるドナ巡査は、会話を楽しみ始めます。そこで、自己紹介が行われました。

イブラヒムは軍人のPTSD専門の精神科医でした。ロンは<レッド・ロン>と呼ばれた有名な労働組合員で、活動熱心なリーダーでした。

ジョイスは看護師で、エリザベスは外交関係――あまり他言できない活動をしていました。食事を終えた4人とドナ巡査は、皆で庭に出ます。

そこにロンの息子で有名人のジェイソン・リッチーがやってきました。ドナは、チャンピオンまで極めた元ボクサーのジェイソンと会えて感激します。

ドナ巡査は明るくて朗らかなよい若者に見えますが、どこか空気を読み切れない部分があるようです。

「ここまでしか話せない」というエリザベスの無言の圧力は通じず、何度も話をそらされて、やっと気付いていました。

ジェイソンと出会ったときもそうです。ジェイソンはスポーツに対してあまりいい思い出がないようで、元アスリートとして扱われることを嫌がっています。

しかしドナ巡査はにぶいので、大ファンだということを伝えることに精一杯で、ジェイソンが苦々しい顔で口ごもっていることに気付くまで時間がかかりました。

欠点に思えるドナ巡査のにぶさは、木曜殺人クラブにとっては好都合です。仲良くなれば「なんのために?」と考えずにポンポン答えてくれそうですからね。

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トニーの死

クーパーズ・チェイスの庭の隅で、施設を共同経営しているイアンとトニーが言い争っています。トニーは、イアンを訴えると息巻いています。

ロンは、契約書には住民との協議が必要だと書いてあるため、住民集会を開くと言います。トニーも対決する気満々でした。

集会当日、入居者たちの前にイアンが現れました。補償も住居も用意すると言うイアンに、住民たちは「生涯契約を結んでいる」と主張します。

イアンは、自分の土地に何をしようと勝手だと語りました。墓を掘り起こしてでも金を得ようとするイアンに、入居者たちは非難の目を向けます。

数日後――撲殺されたトニーが発見されました。凶器の行方は分かりません。ラジオでそれを知ったジョイスは、木曜殺人クラブの面々に声をかけました。

過去の未解決事件を調べていた木曜殺人クラブに、今まさに起きたばかりの事件が舞い込んできました。

容疑者はいます。けれども、そんな分かりやすい手口で殺してしまえば、大金を得るどころの話ではありません。

それでも、イアンが怪しいのは事実です。住民との協議がうまく進まなかったあとで、意見が対立していたトニーが殺されたのですから、当然ですね。

そして当座の問題は、犯人が誰かということではありません。共同経営者が亡くなった今、イアンの好きなように事を進められてしまう恐れがあります。

特にクーパーズ・チェイスに来たばかりのジョイスにとって、施設の存続は大きな問題です。食事を放り出してでも駆け回りたくなる気持ちは分かります。

庭に集められた3人は、ジョイスからトニー殺害の件を聞かされます。警察内部にいる人物から容疑者を聞き出して、犯人を捜すことに決めました。

フェアヘイブン署にいるドナ巡査は、この殺人事件に興味を持ちます。しかし、クリス・ハドソン主任警部から「他に仕事があるだろう」と追い出されてしまいました。

エリザベスとジョイスは、いつもとは違う身なりで街に出ます。一方でロンは部屋を荒らし、トニー殺人の情報を提供すると署に電話しました。

いかにもおばあちゃんといった風情の服装になった二人は、ボケたふりをしてフェアヘイブン署を訪ねます。そして修道女のため、女性警察官を出せと迫りました。

ドナ巡査は、録音付き取調室に二人を通しました。ドナ巡査は二人の勢いにおされ、捜査に協力すると決めます。

ロンは身なりを乱し、警察嫌いを演じます。そして、ドナ巡査にしか証言はしないと言い張りました。そうして、ドナ巡査は捜査に加わることになります。

ボケたふりをする老人と、コミュニケーションが取れない頑固者のふりをする老人……厄介ですね!

そういえば、クラブの面々はいかにも高齢者な恰好はしていませんでした。色合いは落ち着いているものの、今でも働きに出ていそうな装いです。

街を散歩するだけで一日が過ぎていそうないかにもな恰好をすると、どこかくたびれた感じに見えてきて面白いですね。

イブラヒムは精神科医だったこともあり、偏屈なおじいちゃんのビジュアルを極めるよう的確にアドバイスしていました。

レッド・ロンのまま、小綺麗で整った外見ではいけないのです。荒れた生活を送っていて、絶対に自分の意見を曲げなさそうなジジイでなくては……。

余談ですが、髪のボリューム感がどれほど若々しさに影響するか思い知らされました。特にエリザベスとロンの見た目の変化は衝撃的でしたね。

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第3の男

その夜、エリザベスはクーパーズ・チェイスの2023年 年次報告書に目を通しました。トニーとイアンの他に、3人目の投資家がいることが判明します。

とはいえ、会計報告書は専門知識がなければ理解できません。娘ジョアンナが金融業をしていることもあり、ジョイスは一肌脱ぐことになりました。

トニーには傷害や武器の所持など多くの前科があります。クリス主任警部が犯人とにらんでいるのは、ツーショット写真の人物でした。

その人物はボビー・タナー――ロンドン警視庁が探している犯罪組織の親玉です。そして、その写真には、腕に刺青のある男も写り込んでいました。

ジョアンナから、会計報告書の情報が届きました。そこには、トニーの取り分がイアンへ渡っていたことが記されています。重要な情報でした。

年次報告書を手に入れられる立場にあるエリザベスの友人とは一体……。などと考えていても仕方ありませんね。

ジョイスは母親の権力を振るいに振るって、娘に仕事を押しつけました。会いに来ないし、来てもすぐ帰るし、作ったケーキも食べてくれないし、と……。

自分を産み育てた母からここまで責められたら、娘としては言うことを聞かざるを得ないですよね。ジョイス、かわいらしく見えてやることが怖いです。

ドナ巡査はロンドン警視庁から異動してきたばかりでくさくさしていました。しかしまさか、その異動が大物犯罪者を見つけるきっかけになろうとは驚きですね。

そして第3の男、腕に刺青のある人物が現れました。犯罪組織の親玉ボビーや犯罪歴のデパートなトニーと仲がいいとなると、只者ではなさそうです。

エリザベスは、敵国のスパイを尋問するようにクリス主任警部を責めようと考えます。けれどもジョイスは、優しく接することで口を割らせようと言います。

ロンとイブラヒムの間に座ったクリス主任警部は、証言を聞いていきます。そして、ロンの息子ジェイソンもトニーと知り合いと知り、興味を持ちました。

エリザベスは、クーパーズ・チェイスの3人目の投資家はブルーミン・マーベラスという事業体を使っていると語ります。

そして、さらなる情報と引き換えに死亡時刻が知りたいと告げます。そこでドナ巡査は、11時24分だと答えました。スマートウォッチに記録されていたのです。

そこにジェイソンがやってきたため、クリス主任警部はツーショットを撮ります。そこでドナ巡査は、ジェイソンの刺青が<あの刺青>と同じだと気付きました。

世間が狭いですね……。殺されたトニーと、大物犯罪者ボビーとのツーショットを撮影した第3の男は、ロンの息子ジェイソンだったようです。

とはいえ、ジェイソンは芸能人として活躍する身です。殺人をすれば今の立場はもちろん、過去の栄光もすべて消え去ってしまうでしょう。

もしトニーを殺すほどの動機を持ったとしても、行動に移すでしょうか? 仲のいい大物犯罪者から報復される恐れもあるというのに……。

それに、トニーが死んで得をするのは、やはりイアンでした。トニーの分の金をも受け取ることができるようになるためです。

そして、スマートウォッチは便利ですね。山で遭難した人が助かった例を聞いたことがありますが、死亡時刻も正確に記録してくれるんですね。

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B.T.

エリザベスは、甥トニーが殺されたばかりのモードに声をかけます。モードは犯人に心当たりはあるようですが、警察に話すつもりはないと頑なでした。

モードに贈られた花束は、トニーの旧友である<B.T.>からのものでした。エリザベスが推理を進める一方で、ロンは息子ジェイソンに反発されます。

署に戻る車の中で、ドナ巡査はジェイソンが第3の男だと告げます。ジェイソンには、トニーや犯罪組織の親玉ボビーの下で働いていた過去もあり、容疑者となりました。

また、クーパーズ・チェイスの第3のオーナーがボビーであることが分かります。資金を得るため、トニーが引き込んだのです。

イアンは、何年もボビーの姿を見ていないため、死んでいると思っていました。また、自分にはアリバイがあるとも語ります。

トニーの死によってイアンは1200万ポンド儲けるとのことですが、計算すると約24億円だそうです。それは動機になる金額ですね……。

そして、3人目の投資家は大物犯罪者ボビーでした。事業体を作ってまで名前を隠したのは、大っぴらに名前を出せないからだったんですね。

また、名前を出さない人物がもう一人います。トニーの旧友だという<B.T.>です。あれ……もしかしてこれって、ボビー・タナーでは……?

イアンは、ボビーはもう死んでいると思っています。けれども、死者が旧友の死に際し、そのおばに花を贈れるはずがありません。

つまりボビーは生きています。そうなると、一気にボビーが怪しくなってきますね。ボビーがジェイソンを使って殺した可能性も出てきます。

何より恐ろしいのは、もし金が原因だとするならば、続けてイアンも殺される恐れがあるのです。連続殺人になってしまうのでしょうか?

クラブの4人は、イアンがトニーを殺害できるかどうか調べるため車を走らせます。イブラヒムの超安全運転により立証されたのは、不可能だということでした。

それはドナ巡査に伝わりました。車で移動したら死亡時刻を7分過ぎてしまうことは、警察の検証でも同様でした。

エリザベスは、夜道をひとり歩きながらドナ巡査と通話します。そこに見知らぬ男が現れ「死人を起こすな」と告げ、去って行きました。

男の顔は暗すぎて分かりませんでした。エリザベスはこの出来事を隠すと決め、まずは月曜のデモに全力を尽くすことにしました。

入居者たちは墓地の前に人の壁を作り、掘り起こさせないように邪魔する構えです。抗議デモを率いるのはレッド・ロンでした。

ロンの息子ジェイソンも含めて、皆が抗議デモを行っているとき――墓地の中で、こっそり動いている人がいました。

あまりにも正確に死亡時刻が分かってしまったために、イアンの犯行が不可能だということが立証されました。

そうなると、やはりボビーが怪しい……と思っていたら、ボビーらしき人物がエリザベスを脅しに現れます。

もちろん、これがボビーとは限りません。しかし、ボビーの意思によって動いている誰かであろうことは確かです。

ボビーは「ボビー・タナーは死んだ」ということにしておきたいのでしょう。だからこそ、ボビーに迫ろうとする木曜殺人クラブを警戒しているのです。

けれども、トニーのおばモードには、自分であると分かるように花を贈っています。それは、モードが何も話さないと信用しているためでしょう。

極悪犯罪者のように言われているボビーですが、そうではない一面が見え隠れしています。どういった人物なのか、気になるところですね……。

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マリーナ

エリザベスは、ボグダンが墓地を掘り返しているところを見つけました。ボグダンは、母と同じ名前<マリーナ>を名乗るエリザベスに興味を持ちます。

そこでエリザベスは、ボグダンの母語であるポルトガル語で語りかけました。ポーランドの大麦スープ クルプニクのことを話し、ぐっと距離を縮めます。

トニー亡き今、ボグダンは第一建設業者です。しかし、ボグダンはトニーの生前からイアンと手を組んでいました。

ボグダンは、イアンのために古い骨を掘り返すことはしても、殺人はしないと語ります。そんな中、車で帰ろうとしたイアンが急に倒れました。

ジョイスにより、イアンの死が確認されます。抗議デモに参加していた入居者たち全員が<殺人の目撃者>となりました。

イアンの死因は、フェンタニルの過剰摂取だったのです。死の直前に投与されたと思われます。薬も注射器も、入居者全員が入手可能なものでした。

ボグダンの腕の刺青を見て、とっさにマリーナを名乗るエリザベスに驚きました。ポルトガル語で会話できることにも、知識があることにもです。

スパイを取り調べたことがあるようですし、自らもスパイだったのではないでしょうか。専門知識は無いけれど、恐ろしく広く適度な深みの知識が素晴らしいですね。

ところで、古い骨を掘り返すとは、なんのことでしょうか。イアンは、過去に殺害した人でも墓地に埋めているのでしょうか?

トニーとボビーとジェイソンの関係性に比べると、イアンとボグダンは仲が良いとは思えません。ボスと手下という関係性でしょう。

ボグダンは、イアンについてあまり詳しくないように思えます。出稼ぎにきた身で治療費を補うため、必死に働いているだけでしょう。

ところで、フェンタニルとは鎮痛剤の一種です。全身麻酔にも使われる強力なもので、たった2mgの投与で死に至るとのことです。

脳と脊髄に作用するもので、多幸感を得られる作用もあります。アメリカでは原因薬物別の死者数においてヘロインやコカインを超えるNo.1の薬物です。

エリザベスは、トニーの殺害現場にあった写真について、クラブのメンバーに話します。しかし、ロンの息子ジェイソンについては口ごもります。

その代わりに、ボビーがクーパーズ・チェイスの3人目のオーナーであるため、居場所を探るべきだと語気を強めました。

3人のオーナーの中で、現在生き残っているのはボビーひとりです。木曜殺人クラブの今後の方針が決まったところで、エリザベスは帰宅しました。

そこには、状態のいい夫スティーブンと仲良く話すジェイソンがいました。ジェイソンは、ボグダンに<マリーナ>と名乗った女性を探していたのです。

エリザベスはすぐにマリーナと名乗ったことを認めます。そして、ポルトガル語に切り替えてボグダンと今夜墓地で会う約束をしました。

実の息子が殺人事件の関係者だと知ったらショックだろうと気を遣ったのでしょう。もしくは、レッド・ロンが大暴れするのを未然に防ぐためですね。

ところで、ジェイソンはトニー側についていると思っていたので、イアン側のボグダンと親しい間柄であることに驚きました。

トニーとイアンとは反りが合わずに喧嘩ばかりしています。しかし、周辺の人々は二人の不仲と自分の振る舞いとを沿わせるつもりはないのかもしれません。

そして、マリーナという女性が見つからないのならば……と捜す方法を変えるジェイソンの賢さにも驚きました。やはりテレビスターは賢いんですね。

もしやジェイソンは、エリザベスを脅しにきた男なのか? と思いましたが、違いますね。口周りと輪郭にびっしりヒゲが生えているジェイソンとは別人です。

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白骨遺体

アイススケートを始めたジェイソンのもとに、フェアヘイブン署からクリス主任警部とドナ巡査がやってきました。

『刑事コロンボ』のセリフを引用するクリス主任警部に、ドナ巡査が続きます。イアンはトニーと口論したあと、ジェイソンに3回も電話していたためです。

イアンに借金をしていたジェイソンは、イアンからも臨時の仕事を請け負っていたのです。クリス主任警部はジェイソンの言動を怪しみ、ジェイソンの身柄を拘束しました。

イブラヒムとロンは、施設の入居者に怪しい人物がいないか考えています。そのとき、ロンに息子ジェイソンから助けを求める電話がかかってきました。

こうして、ロンは息子が殺人事件に関わっている――犯人と疑われるほどに近しい関係にあったということを知ったわけですね。

ジェイソンがテレビスターになった現在もアスリートであった過去のことばかり話すロンを、ジェイソンはうっとうしがっていました。

それでも助けを求めてきたということは、結局頼りになるのは父親だと分かっていたのでしょう。<老害>であることは、敵に向ければ武器になりますからね。

そして、ジェイソンはトニーからもイアンからも仕事を受けていたとのこと……ボクサーを辞めた直後、かなり生活に困っていたのでしょう。

ジェイソンは表向きはトニー側ですが、イアン側の人間でもあります。誰の指示で動いたか分からない厄介な人物として、警察に警戒されていそうですね。

ボグダンは、土の中にあった棺の上に置かれた白骨死体をエリザベスに見せます。翌日、すぐにクリス主任警部とドナ巡査とが墓地を訪れました。

エリザベスは、ボグダンの名を出さずに証言します。水仙を植えるためにスコップで土を掘っていたという、あまりにも無理がある証言でした。

ロンは息子ジェイソンを牢に入れられた恨みもあり、クリス主任警部の捜査を批判します。するとクリス主任警部は<火曜死亡組合>とクラブをバカにしました。

エリザベスは、ドナ巡査に耳打ちします。あの白骨死体は今回の連続殺人に関係があると考えたのです。ドナ巡査は頷き、クリス主任警部と共に去りました。

エリザベスは夜中、物音によって目を覚まします。キッチンから走り去る人物がいました。そして、残された花束には「手を引け」と書かれていました。

翌朝、ドナ巡査は白骨遺体がピーター・マーサーだったと報告します。その男ピーターは、エリザベスの親友で元警部のペニーが追っていた犯人でした。

50年以上前に埋められたピーターの遺体が発見されたことを、ペニーに報告します。するとペニーの夫ジョンは、ドナ巡査の活躍を知り喜ぶのでした。

おそらくですが、ボグダンは独断で墓を掘っていたわけではないでしょう。50年前に母国ではない場所で埋められた遺体のことなど、ボグダンには無関係です。

墓地を掘るように指示したのがイアンだったとするならば、そこにはどんな意図があったのでしょうか?

50年前ということから、クーパーズ・チェイスの入居者が関わっている可能性はあります。入居者に遺体遺棄の犯人がいたと触れ回り、施設を潰すつもりだったのでしょうか……。

また、その遺体はピーター・マーサーでした。冒頭に取り扱っていた殺人事件の関係者であり、唯一犯人を目撃したと語ったのちに消えた男です。

ペニーはピーターを殺人犯だと考えていました。それが当たっていたのならば、復讐されたということも考えられますね。

そんなペニーは、女性だという理由で肩身の狭い思いをしていました。そこから時代は進み、ドナ巡査は殺人事件の捜査に深く関わる女性刑事となっています。

クラブのメンバーによる工作があったとはいえ、ドナ巡査はしっかり捜査に貢献しています。そんな姿をペニーが見たら、きっと喜ぶことでしょう。

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ジェイソンの秘密

フェアヘイブン署でクリス主任警部はジェイソンに事情聴取を行います。そこに派手なスーツ姿のロンが現れ、法定代理人だと主張しました。

続いてイブラヒムが現れ、精神鑑定を行うと言い出します。ジェイソンはPTSDを発症しているため、聴取を続ければ過失事件になると続けました。

言葉を失うクリス主任警部の前に、ジョイスもやってきます。大きなレモンケーキを持ってきたジョイスに、クリス主任警部は耐えかねて大声を出しました。

犯行時刻の行動さえ証言すればいいとクリス主任警部が告げます。ロンが問い詰めると、ジェイソンは溜息と共に、イアンの妻ジェマといたことを話しました。

ジェイソンはジェマの不倫相手だったのです。スマートフォンにはベッドの上で裸になっている二人の写真もありました。ジェイソンの釈放が認められます。

クリス主任警部はロンのスーツを見て「結婚式に出るのか」と聞いていましたが、私は「コメディ役担当の舞台俳優さんかな」と思いました。

ロンの中の弁護士のイメージって、ああいう感じなのでしょうか……。イギリスの弁護士も、もっと落ち着いたスーツを着ていると思いますが……。

それはそうと、父親の前で既婚女性との恋愛について話したり、写真を見せたりしなければいけない状況になったジェイソンが不憫でした。

イアンから何度も電話がかかってきていた理由も、これでしょう。手下程度の存在であるジェイソンが妻に手を出していたと知り、かなり怒ったはずです。

もしくは、計算高いイアンのこと、妻からの請求を極限まで減らすためにジェイソンに不倫の証拠を渡すよう迫るつもりだったかもしれません。

エリザベスはMI6から退職祝いにもらった車にドナ巡査を乗せ、ある花屋に向かいます。警告に使われた新鮮な花束は、近くで買ったものでしょう。

また、警告文が書かれたカードは、トニーのおばモードに届いたカードと同じ模様でした。それは、モートンにある花屋ソーニー・ブルームスのものです。

経営者はデレク・ウォード――おそらくボビーの偽名です。花の注文をしていたエリザベスは、ボビー本人に会うため階下へと向かいました。

その頃、エリザベスの夫スティーブンはボグダンとチェスをしていました。そしてスティーブンは、殺人犯が分かったと言い出します。

エリザベスはMI6――秘密情報部で働いていた元スパイなんですね。多くの言語を扱えることも、人脈がやけに広いことも、この経歴のためでしょう。

もしかしたら、刑事よりもよほど目の付け所がいいかもしれません。ちょっとした違和感や、ささいな可能性にも気付く力は今でも健在です。

それでも仲間を求めるのは、イブラヒムやロンが言っていた通り、楽しく生活するためかもしれません。独りになるのも、人と繋がるのも、施設の中では自由です。

エリザベスがそれほどまでに頭の切れる人物だったと分かった上で夫スティーブンを見ると、なるほど同じレベルで賢いなと思わされます。

自身を保てているときは、エリザベスと同じく賢く、そして大胆な一面が見えます。

エリザベスはスティーブンに聞かれないようポルトガル語で会話していました。しかし、それも理解していたのではないでしょうか。

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パスポート

デレクは、あっさりと自身がボビーだと認めました。そして犯行時刻には、ドーチェスター・ホテルで21歳になるカリド王子の誕生日パーティーのため花を活けていたと語ります。

ボビーのアリバイを証言できる人は200人近くいます。意外にも、ボビーは花を活けることに情熱を持っていました。真面目に花屋として働いているのです。

エリザベスは、クーパーズ・チェイスをどうする気かとボビーに尋ねます。魅力的な投資先ではなくなったため、土地を売るつもりだとボビーは答えました。

エリザベスはドナ巡査を部屋から出します。そして、違法労働のために労働者からパスポートを取り上げている罪は25年の拘禁刑になると告げました。

ただし、違法労働とパスポートの件とをやめて、クーパーズ・チェイスをエリザベスが選んだ相手に市場価格で売るのならば、すべて黙っていると続けます。

労働者からパスポートを取り上げてボビーに渡しに来ていた男こそ――エリザベスを脅迫していた男でしたね! 特徴的なあごの形から確信しました。

また、パスポートを奪われている件は、ボグダンが話していましたね。ボグダンはそのことにより、他のまともな職に就くことができないのです。

エリザベスは意外にも、ボグダンに寄り添う姿勢を見せています。ボグダン自身に悪意や敵意はなく、ただ必死に働いているだけだから……でしょうか。

けれども、ボビーは違います。ボビー自身は身分を捨て、真っ当な職を得ていながら、困っている貧しい外国人を飼い殺しにしているのです。

それでも、エリザベスはボビーを追い詰めません。エリザベスが求めるものは、ただひとつ。クーパーズ・チェイスでの穏やかな生活です。

そのためにドナ巡査に席を外させて、現役の頃よろしく、ボビーと渡り合ったのです。今やボビーが唯一のオーナーですから、ボビーさえ落とせればよいのです。

スティーブンは、ボグダンに寄り添います。母親の治療費で悩むボグダンに、その果てにトニーを殺してしまったのではないかと問いかけました。

動機は分かりませんが、犯人がボグダンであることだけは確かだとスティーブンは語ります。

するとボグダンは、事故だったのだと打ち明けました。ボグダンは奪われたパスポートを取り戻すため、トニーと争ったのでした。

エリザベスは、ボビーがトニーと労働者を分けており、トニーもパスポートを保管していたことを知ります。

ボビーはたまに労働者にパスポートを返し、ガス抜きをしていました。けれども権力欲の強いトニーは、決してパスポートを渡しませんでした。

パスポートを返してもらうための殺人――スティーブンとは逆に、エリザベスは動機から犯人にたどり着きました。

つまりは今、スティーブンは自室で殺人犯と二人きりになっているのです。そのことに、エリザベスも気付きました。

エリザベスも視聴者も、あくどいやり方で稼いでいるのはイアンとボビーだと思っていました。けれども、トニーもしっかりお仲間だったのです。

なんなら、人の扱い方を熟知しているボビーよりも、トニーのほうが厄介なくらいでした。よき甥っ子のトニーばかり見ている入居者には、その姿は見えませんよね。

トニーが親切にする相手はおばモードと、その友人となってくれた入居者たちのみだったのかもしれません。

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真犯人

スティーブンに突然、認知症の症状が出ます。そこでボグダンは紅茶を勧め、キッチンに置かれた薬瓶に目をやりました。

エリザベスはドナ巡査を連れ、急いで自室に戻ります。しかし駆けつけたとき、スティーブンはすでに紅茶を飲んでいました。

逃げようとしたボグダンでしたが、木曜殺人クラブの皆に止められます。そこでボグダンは、何か証拠があるのかとわめきました。

エリザベスは、スティーブンの上着のポケットからレコーダーを取り出します。体が不自由になったスティーブンはマス目を口に出してチェスを打つのです。

あとで戦略を練るための試合の録音でした。そこに、ボグダンの自白も残されています。観念したボグダンは、トニー殺害を認めました。

けれども、ボグダンはスティーブンに毒を盛ってはいません。ボグダンは、スティーブンをよき友人だと思っていたのです。

妻がいるときは紅茶に入れる砂糖はひとつ、妻がいないときは紅茶に入れる砂糖は4つ……スティーブン、そこはボケていてもしっかりしているんですね。

妻の前では、よき夫でいるように心がけていたのでしょう。甘い紅茶を飲みたい気持ちを抑えてでも、エリザベスを安心させたいんですね。

そんなスティーブンのよき夫ぶりに心打たれたのか……責める口調ではなく、優しく寄り添う形で追及されたからなのか……ボグダンは打ち明けてしまったわけです。

スティーブンに症状が出たのは、本当のことでした。ボグダンに致命的な行動をさせるための罠かと思っていましたが、違いましたね。

しかし、問題があります。殺人事件は3件あるのです。トニー殺害の件はこれで終幕ですが、イアン殺害、ピーター殺害についてはまだ終わっていません。

トニーとイアンとは連続殺人かと思われましたが、ボグダンにイアンを殺す理由はありません。一から考え直さなければなりませんね。

ロンの息子ジェイソンのスケートショーをテレビで見ながら、木曜殺人クラブの面々ははしゃいでいます。そこでエリザベスは、ある事実に気付きました。

親友ペニーの昔の写真を見ていて気付いたのです。<白をまとった女性事件>――アンジェラが殺され、恋人ピーターが犯人と目された事件です。

真犯人はピーターですが、警察は同好の士を起訴しませんでした。無罪放免となったピーターを殺したのはペニーで、夫ジョンと遺体を埋めたのです。

そして50年が経ち、イアンがピーターの遺体を掘り起こそうと考えました。そこでペニーを守ろうと、ジョンがイアンを殺害したのです。

ジョンが眠ったままの妻ペニーのためにできることは、それだけでした。永遠の別れになる前にと、ジョンはクラブの皆に部屋から出ていくよう頼みます。

二人の部屋には、イアン殺害に使った注射器が残されていました。大量のフェンタニルが入った注射器が、何本も……。

同好の士――男性刑事たちがピーターをお仲間だと考えた理由は分かりません。けれども、大口を開けて笑う犯人と刑事たちとの写真は残されています。

そんな男たちを、ペニーは殺意をたたえた目でにらみつけていました。女性警察官として軽んじられただけでなく、女性そのものが軽んじられていたようですね。

ペニーは、殺されたアンジェラの敵討ちというよりも、当時軽く扱われていた女性たち全員の思いを背負って、ピーターを葬ったのでしょう。

そんなペニーの行為を、夫ジョンは受け止めたようです。ペニーが眠ったままでも愛し続けられるほどに情の深いジョンですから、ためらわずに協力したことでしょう。

そうして70年代に墓地に葬ったピーターの件を、ずっと隠しておくこともできたはずです。けれどもペニーは、木曜殺人クラブに事件を持ち込みました。

おそらく、すべて見抜かれることは覚悟の上だったのでしょう。特にエリザベスは直感が鋭い人です。親友となったのも、自分の罪を暴いてくれる逸材だからかもしれません。

ジョンは、ペニーと心中することを選んだようです。夫婦が引き離されて裁きを待つよりも、二人一緒にいられるうちに旅立ちたかったのでしょうね。

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木曜殺人クラブは<白をまとった女性事件>も、トニー殺害も、イアン殺害も解決しました。しかしその心には、喪失感が広がっています。

イブラヒムは、ジョンの行動は妻ペニーへの愛によるものだったと弔辞を述べます。入居者たちとフェアヘイブン署の二人は、二人を見送りました。

エリザベスは、ペニーが身に着けていたペンダントをジョイスに贈ります。木曜殺人クラブのロゴ<TMC>が刻まれたものです。

ジョイスの娘ジョアンナは、夫の死後もっとも幸せそうな母を見て考えを改めました。そこでエリザベスは、クーパーズ・チェイスを買い取らないかと提案します。

ジョアンナはすぐに提案を受け入れました。反発してばかりの母娘でしたが、このときばかりは抱き合って喜びます。

エリザベスと夫スティーブン、ロンと息子ジェイソン、そしてイブラヒムとジョイス――皆それぞれの絆を築き、保ち、幸福な時間を過ごしていくのです……。

殺人事件を扱った映画とは思えないほどに、すがすがしい最後でした。つまるところは、愛が引き起こした事件だったんですね。

トニーを殺してしまったボグダンは、病気の母に会うためにパスポートを取り返そうとしていました。

逃げおおせた殺人犯を殺したペニーを愛し続けていた夫ジョンは、妻を守るために、秘密を暴こうとしたイアンを殺しました。

恋人の想いを裏切って殺害したピーターが無罪放免になったことを許せず、ペニーは刑事でありながら殺人を犯しました。

3件の殺人には、すべて愛が関わっていたのです。そして殺された者は皆、誰かから何かを奪っていた人物でした。

<木曜殺人クラブ>は活動を続けるようです。再び悲しい瞬間を迎えることになったとしても、正義を貫くことに意義はありますからね。

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Netflix独占配信映画『木曜殺人クラブ』まとめ

コメディ要素が強めに入っているためか、サスペンスやミステリーとの緩急がしっかりついていて楽しく観られる作品でしたね!

様々な専門職に就いていたメンバーが集まっているため、合わない部分も多いです。しかし、そこを譲り合いとフォローとで補う大人な一面があります

これが20代や30代だと、思いきりぶつかってしまうでしょう。また、40代や50代だと、気難しさを抑えきれず冷戦状態になってしまいます。

高齢者となり、人生に一段落ついたところだからこそ、まったく異なる生き方をしてきた相手とも仲良くできるのではないでしょうか。

おしゃれを忘れないところや、既成概念にとらわれないところ、運動や知的活動などを習慣として楽しんでいるところ……。

こんな未来があったら楽しいだろうな、と高齢者になる将来にわくわくできる作品でした。

※トップ画像はNetflixから引用いたしました。

ミヅチ

ホラー好きのネタバレブロガーです。ダークファンタジーもミステリも好きです。Netflixオリジナルドラマに首ったけです。

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