Netflixドラマ『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「ロット36」ネタバレ感想

Netflixドラマ『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「ロット36」アイキャッチ
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Netflix独占配信の『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「ロット36」は、90年頃に借金に苦しんでいた中年の白人男性ニックが倉庫を借りることで始まる物語です。

ミヅチ
ミヅチ

倉庫を借りる権利さえ手に入れれば、前の持ち主が残していったものを自分のものとして扱っていいというのは、なかなか面白い制度だなと思いました!

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Netflixドラマ『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「ロット36」情報

日本公開日2022年10月25日
制作国アメリカ
ジャンルホラー
注意書きR-16+
暴力、ヌード、言葉づかい、薬物
上映時間46分

『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「ロット36」主なキャスト・スタッフ

キャスト

ニック・アップルトン
戦争の後遺症と借金に苦しむ白人の中年男性
ティム・ブレイク・ネルソン
『ディードラ&レイニーの列車強盗』『バスターのバラード』
エディ
24時間営業の倉庫で働く黒人の中年男性
デミトリアス・グロッセ
ローランド
霊の専門家
セバスチャン・ロッシェ
『涙の女王』

スタッフ

監督ギレルモ・ナヴァロ
脚本レジーナ・コッラド
ギレルモ・デル・トロ
『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』

『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「ロット36」あらすじ

ある日、ひとり暮らしをしていた老人が亡くなったことにより、24時間営業の倉庫のひとつが売りに出されました。

売りに出された倉庫であるロット36は、管理人として働く黒人の中年男性エディが気になっていた場所でした。

1940年代から50年近くロット36を借り続けていた男は、毎日倉庫に通ってきていました。それも、いつも1時間半も倉庫にこもっていたのです。

何かお宝が眠っているのではと考えたエディは、借金で首が回らなくなっている同じ年頃の白人男性ニックに倉庫を借りるよう勧め……。

ここから先はネタバレがあります!

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『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「ロット36」ネタバレと感想・考察

24時間営業の倉庫

つまみのついた古めかしいテレビから戦況が望ましいものだというニュースが流れてきます。いつも通りの食事を終えた老人は、肉をさばき始めました。

36という数字が刻まれたタグのついた鍵がテーブルの上に置いてあります。老人は肉切り包丁を振り上げていましたが、突然胸をおさえて床に倒れ込みました。

とある24時間営業の長期レンタル倉庫でオークションが開かれていました。中年の白人男性ニックは、持ち主が亡くなった倉庫を借りようと考えているのです。

中年の黒人男性エディがマイクを持ち、ロット36――肉をさばいていた老人が数十年借りていた倉庫を紹介します。倉庫の中はそのまま残されていました。

すぐに入札が始まりました。ニックは静かに400ドルを出すと告げ、他の入札者たちを黙らせます。ロット36はニックの持ち物となりました。

イラクとクウェートについての話が出てきており、この作品の舞台はアメリカですので、報道されているのは湾岸戦争でしょう。

つまり、この作品の年代は1990年頃ですね。しかし、1990年頃というとつまみのついたテレビはさすがに時代遅れです。物持ちのいい老人だったんですね。

24時間営業の倉庫が出てきましたが、どうも法を遵守するつもりのなさそうな雰囲気です。倉庫を借りる権利をオークションで入手するというのも、なかなか……。

ニックは倉庫の関係者から「金持ち」と呼ばれていましたが、そうは見えない外見です。むしろ、貧しさにあえいでいるような服装でした。

一体この倉庫にはどんな魅力があるのか――ニックはどんな事情を抱えているのか――気になりますね!

ニックは借金取りとの電話を終えると、契約書と金をエディに渡します。エディはそこから数枚をくすねると、ロット36の所有者だった老人の映像を見せました。

その男は1945年の倉庫創業時から借りていた大人しい男でした。彼は毎日同じバッグを持って1時間半ほど倉庫の中にこもる生活を続けていたとエディは語ります。

それほど大切なものがあったのだと興味津々なエディですが、ニックは無関心でした。しかし、老人が倉庫の中でジャンプする様子を見て気が変わります。

倉庫に向かうエディとすれ違いになったスペイン系の老婆アメリアがエディを訪ねてきました。しかし手違いがあり、倉庫はもう売ってしまっていました。

アメリアに責められたエディは、倉庫を売った相手はニックだと教えます。しかしアメリアが借りていたのはロット87で、ニックの借りたロット36とは違います。

エディとニックが知り合いだったことを思うと、もしかしたら倉庫が大体どれくらいの値段で売れるのかを事前に教えていたのかもしれませんね。

エディは倉庫の管理人としての給料が低いとぼやいていましたし、こういった小遣い稼ぎをしないと生活が成り立たなくなるのかもしれません。

二人とも中年ですが、悪友といっていい関係性でしょう。アメリアが借りた倉庫は別の場所だと分かっていながら、二人は結託して嘘をついています。

エディは管理人として行うべきことはしています。しかし、アメリアが上司にエディの手落ちだと訴えでもしたら、エディは職を失うかもしれません。

それを防ぐために、エディはニックのもとにアメリアを向かわせたのでしょう。ニックも自分とは関係ない話だと分かっていながら、アメリアをたぶらかしていきます。

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金になるもの

ロット87を借りていた老婆アメリアが、中に入っていた思い出の品を返すようニックに迫ってきました。そこでニックは、1000ドル払えば中身を返すと告げました。

スペイン語で毒づくアメリアに、ニックは「この国の言葉を使え」と吐き捨てて去って行きます。面倒事を避けて生きる主義のニックですが、その方法は褒められたものではありませんでした。

ロット40ではパイプが壊れて水漏れが止まりません。パイプを修理していたエディと倉庫の中身を確認していたニックは、いつしか言い争っていました。

二人はお互いにやりきれない思いを抱えているのです。戦争によって左耳の聴力と家族を失ったニックと、当然のように差別される立場の黒人であるエディと――。

ひとり倉庫の中を整理していたエディは、金になりそうな燭台を見つけました。手前に積み重なっていたゴミをどけていくと、倉庫の奥から売れそうな物が出てきます。

おそらくニックは戦争中にひどい経験をし、その中で聴力を失ったことで、性格が荒っぽくなってしまったのだと思います。

しかし、そんな人は少なくない状況でしょう。借金を抱えることになった人もまた、多くいた時代なのではないでしょうか。

倉庫を借りることにしたのは、エディが「ロット36には何かしらのお宝がある」と吹き込んだためなのかな……と思います。

400ドル払ってもいいと思えるほどの何かがあるとすれば、借金を返すための一種のギャンブルとして倉庫を借りることもあるでしょう。

暗い中、ニックはトラックの荷台に売れそうな物を積み込みます。そして運転席に座ったとき、突然ハンマーで殴りつけられました。

ニックを殴った借金取りの男は、明日1万2000ドルを用意しろと告げます。男はフロントガラスもサイドウィンドウも割り、闇の中へと消えていきました。

ドアミラーで頭の傷を確認しているとき、ニックは視線を感じます。その先には、ニックの行動をじっと見張る老婆アメリアがいました。

管理人室に入ったニックは、骨董品と金製品を売りたいとエディに話します。するとエディは、ダグラス通りのアガサの店に行くよう勧めてきました。

ニックは、割れたフロントガラスをガムテープで補強します。そして、気位の高い白髪の老婆アガサの店へと向かうのでした。

どんなことをすると突然ハンマーで殴りつけられることになるのか分かりませんが、ニックは面倒を避けて生きてきたとは思えない人生を歩んでいますね……。

1990年頃だと1ドル140円ほどですので、明日までに170万円ほどを用意しろと言われているわけですね。

当時のアメリカは景気が回復しつつあるとはいえ、急に用意できる額だとは思えません。ニックは、かなり危険な賭けに出ているといえます。

しかし、今までなんとかやってこられたこともあり、ニックから悲壮感は漂ってきません。不思議なことです。

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象眼のテーブル

目利きの老婆アガサは、燭台には価値がないとすぐに切り捨てます。ニックは次に象眼細工のテーブルと椅子を差し出しました。

テーブルを一目見た瞬間、アガサの口角が上がります。それは“降霊用テーブル”だったのです。ウィジャ盤よりも本格的なものだとアガサは語りました。

アガサがテーブルに刻まれた文字をなでると、隠し引き出しが現れます。その中にあったのは、第一の書“悪霊”、第二の書“シンボル”、第三の書“災禍”の3冊の本でした。

価値のある本ではないかとにらんだニックでしたが、アガサは専門外のため別の人を勧めてきました。そして、ニックは最後のものを差し出します。

額に入れられたウールで編まれている飾り――とニックが思っていたものは、人の髪の毛で作られたものでした。アガサは喜びますが、ニックは気味悪さを感じます。

もともとロット36を借りていた老人は、黒魔術を好んでいたのでしょうか? 現代にも呪物を集める人はいますし、そういった趣味の人はいつの時代にもいるものでしょう。

欧米のホラーものにはよく出てくるウィジャ盤ですが、まあざっくり言うと、こちらでいうところの“こっくりさん”です。

ウィジャ盤をテーマにした作品だと、いわゆる低級霊や怨霊を呼び寄せてしまって大変なことになる……というのが定番の流れですね。

しかし、このテーブルはそういった子ども騙しのおもちゃではありません。悪魔を呼び出す魔法陣のようなものが刻まれています。

アガサはそういった方面にもちょっとした知識があるものの、専門家ではないようですね。ニックは専門家に高く売りつけるため、闇の世界へと踏み込むことになりそうです。

アガサは専門家ローランドに本のことを伝えました。ローランドはすぐに店に現れ、テーブルを見るなり19世紀のオーストラリア製だと語りました。

続いて、テーブルがヌマヒノキとサンダルウッドでできていること、霊体を呼び出しやすい特殊な工法で作られていることを見抜きます。

ニックが3冊の本を差し出すと、ローランドは4冊目について尋ねてきます。そして、3冊で1万ドル、4冊ならば30万ドルだと言いました。

第四の書“七つの秘跡(サクラメント)”こそ最も希少価値があり欲される本なのです。しかし、悪魔を呼び出す儀式の最後、燃えてなくなってしまうという特性がありました。

それを避けるためには、悪魔を欺き本を回収されないようにする必要があるのです。それを聞いたニックは、なんとしても四冊目を見つけようと決意します。

“サクラメント”や“秘跡”という耳慣れない言葉が出てきたので、調べてみました。

どちらもキリスト教用語ですが、秘跡は特にカトリック教会においてサクラメントの訳として使われる言葉だそうです。

キリストの神秘とはそもそも目に見えないものですが、それを現実に目に見える形で行うこと――その儀式がサクラメントと呼ばれているようですね。

正式にサクラメントとして扱われるのは、入信するときに行う洗礼の儀式や、最後の晩餐を模した会食などの限られたものです。

しかし、この魔術ではサクラメントを悪魔を呼び出す儀式としています。敬虔な信者が聞いたら怒りに震えそうですね。

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30万ドルのために

ニックはローランドを連れて倉庫――ロット36へと向かいます。車の中で、ローランドは前の持ち主である男を知っていると言い出しました。

男はヨーロッパにて鉄鋼業で儲けたのち、第二次世界大戦の終わりにアメリカに渡り戦車に積む弾を作っていました。

男は母国の敵に力を貸した完全に邪悪な人間だと、ローランドは語ります。そして、底なしの欲望を抱えていた男は、ベルリンとウィーンでオカルトにのめりこんだのです。

男は妹のドッティ・ウォルマーを霊体の入れ物として生贄にしました。その妹は見つかっていません。

そんな話を聞いても、ニックは怖がることなどありませんでした。今ニックが考えているのは、四冊目を見つけて30万ドルを手にすることだけです。

ニックの無関心ぶりには驚かされます。もはやニックの頭には30万ドルが手に入る未来しかないのでしょう。

そしてやはり、前の持ち主はオカルトに傾倒した人でした。しかし、霊体を呼び出すために妹を犠牲にするとは……。

あれだけのオカルトグッズを集められる財力があるのだから、どこかから連れてきた貧乏な人を犠牲にしたのかなと思っていたので驚きました。

金を稼ぐためならば母国に打ち込まれる弾丸を製造することもためらわないというとんでもない男ですし、家族のこともなんとも思っていなかったのかもしれませんね。

消灯タイマーのせいで、作業中に何度も電気をつけなければなりません。ニックがゴミを捨てに行くと、相変わらず老婆アメリアが様子をうかがっていました。

倉庫に戻ったニックが椅子を落としたとき、壁の向こう側に空洞があることが分かりました。悪魔を避けるため、ローランドは燭台のろうそくを灯します。

壁の向こう側には悪気――エフルーヴィアが充満していました。ひどい臭いをニックが口汚く罵ると、ローランドが忠告してきます。

奥の部屋に入ったら、何も触るな、何もしゃべるな……そして目を合わせるな。不満げなニックを引き連れ、ローランドは奥へと進んでいきます。

倉庫の奥には長く細い通路がありました。レンガ造りの道は曲がりくねっています。そしてその先には――痩せきった女性の亡骸が横たわっていました。

悪魔って臭いんですね……。鬼や妖怪は「臭い」と明言されているものだけが臭いイメージですが、悪魔は基本臭いようです。

エフルーヴィア――effluviaはeffluviumの複数形です。意味のひとつに悪臭とあるので、基本的によい香りがするものは指さないと思われます。

ニックが耐えきれなくなるほど臭いので、大概でしょう。常人には耐えられないような類の臭いなのだと思います。

前の持ち主は、そんな臭いがする場所に毎日1時間以上もいたということですよね。常軌を逸しています。

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ドッティの亡骸

悪魔の入れ物となったドッティ・ウォルマーの遺体には、顔がありませんでした。そこには空洞があり、悪魔がうごめいています。

ドッティの遺体の奥には、譜面台に置かれた第四の書がありました。ニックは本を手に入れるため、足元を確認せずに進んでいきます。

そのため、ニックはドッティの下に描かれていた魔法陣を踏みつけてしまいました。ローランドは、ニックが悪魔を目覚めさせてしまったことに気付きます。

ドッティの遺体の中から、無数の触手が伸びてきました。その触手はローランドを捕らえ、バリバリと音を立てて食らいます。

ニックは手にしていた第四の書が燃え始めた瞬間、外へと駆け出しました。ロット36を出たあとも、触手の悪魔はニックを追いかけてきます。

なんだかタコみたいですね。そういえば欧米ではタコをデビルフィッシュと呼ぶと聞いたことがありますが、その元凶はヴィクトル・ユーゴーだそうです。

見たことがない生物であるタコを恐ろしいものとして描いたことで、巨大なタコを海の怪物クラーケンとして恐れるようになったとのことで……。

もしタコが美味しい食材ではなかったらと考えると、確かに気持ち悪い見た目をしているなとは思います。どう動くか予測がつかないという怖さもあります。

ホラー作品で描かれる触手には、タコの足のように柔らかくてヌメヌメしているものと、虫の脚のように細くて硬いものがありますよね。

タイのホラーでは虫タイプが多かったですが、欧米になるとタコタイプになるのでしょうか。ここら辺の違いも面白いですね。

ようやく倉庫の建物の出入口まで来たものの、ドアが開きません。しかし、すぐ外には老婆アメリアの姿がありました。

ニックは必死でアメリアにドアを開けてくれるよう頼みます。しかしアメリアが取り出したのは、倉庫の管理人エディが切った南京錠でした。

大金を払えないのならば壊れた南京錠しか与えない――ニックはアメリアに対応することを面倒臭いと思い、聞こえないほうの耳を向けて話を聞き流しました。

アメリアにニックを助ける義理などありません。アメリアがニックを見張っていた理由は、困っている人を冷たく切り捨てたニックに、そうされた側の気持ちを思い知らせるためでしょう。

ニックはローランドの忠告を思い出し、電気をつけながら触手の悪魔から逃げようと建物内を駆け回ります。しかし悪魔はニックの背後を取り、頭から食らうのでした……。

アメリアに対してはGood Job! という気持ちになる人が多いのではないでしょうか。一番ひどいと思ったのは、ローランドを見捨てたことですね。

借金を返せる当てのないニックにとって、価値が分かる人へのルートを築いてくれるローランドは大切にすべき相手です。

しかし、ニックは最初からローランドをどこか下に見ており、倉庫を捜索する際には盗人扱いまでしていました。盗人は己だろうに……。

アメリアはそんなニックの性根をほんの数分で見抜いたのでしょう。ニックにとって価値があるのは、持ち主のいない金になる物品だけです。

金のためなら他の何を犠牲にしてもいいのだろう? その命ですらも、惜しくはないのだろう?

――アメリアは、そう思っているように感じました。命とは、その人そのものです。もしアメリアに親切に接していたら、結果は変わったのかもしれません。

助ける価値のある命になるために必要なのは、家柄や金銭ではなく、この人を助けてあげたいと思わせられるような人柄なのでしょうね……。

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『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』「ロット36」まとめ

タイのホラーを見ているときには仏教が深く関わってきましたが、アメリカのホラーとなるとやはりキリスト教が関わってくるんですね。

それはそうと、CGの出来が素晴らしいです。タコのように動く触手が、本当にタコのようでした。ちょっと美味しそうなくらいに……。

印象に残ったのは、悪魔を呼び出し現世に留めるための本ですね。第一の書“悪霊”、第二の書“シンボル”、第三の書“災禍”、第四の書“七つの秘跡(サクラメント)”の4冊セットです。

そして悪魔を呼び出して現世に留めることに成功しても、人間よりもずっと寿命の長い悪魔の対応をするためには、引き継ぎが必要になります。

誰かが興味本位で、または欲にかられて悪魔を呼び出したはいいものの、ニックのように何も知らない人が間違った対応をしてしまい、悪魔を世に放ってしまう……。

そんなこと、ざらにありそうですよね。あの薄暗い倉庫の中で、触手の悪魔は人を食らい続けるのかもしれません。

※トップ画像はNetflixから引用いたしました。

ミヅチ

ホラー好きのネタバレブロガーです。ダークファンタジーもミステリも好きです。Netflixオリジナルドラマに首ったけです。

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