Netflixドラマ『なりすましの鼠』エピソード10【最終回】ネタバレ感想

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Netflix独占配信ドラマ『なりすましの鼠』エピソード10【最終回】は、3人いたムンジェが独りに決まる物語です。

ミヅチ
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最終回らしく、かなり詰め込まれた内容になっています。誰が<チェ・ムンジェ>となるのか……見守りましょう!

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Netflixドラマ『なりすましの鼠』エピソード10【最終回】情報

日本公開日2026年8月28日
制作国韓国
ジャンルウェブトゥーンが原作、ミステリー、犯罪、サスペンス
注意書き16+
暴力、言葉づかい
上映時間1時間4分

『なりすましの鼠』エピソード10【最終回】主なスタッフ

スタッフ

原作ウェブ漫画『들쥐』
Ludovico
監督キム・ホンソン
脚本イ・ジェゴン

『なりすましの鼠』エピソード10【最終回】あらすじ

ムンジェになり替わったユミンは、ムンジェに翌朝の船で済州島へ向かうよう指示します。ムンジェの叔父 ハン・ヒスは行方をくらまし、ある場所へと向かっていました。

生き埋めにされながらも生き延びたチンピラ ノジャは、自分を埋めたチンピラ スンギュへとお礼参りにやってきました。ノジャとスンギュとは、激しくもみ合います。

ハン・ヒスの目撃情報をもとに、パク刑事は捜索を始めました。その頃、済州島へと向かう船に乗っていたユミンのもとに、ある人物が現れます。

ここから先はネタバレがあります!

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ミヅチガタリ

結局のところ、<チェ・ムンジェ>とはなんだったのか……整理していきます。時系列に沿ってまとめましょう。

<1>養子のチェ・ムンジェ(1980年代生まれ)
これは、現在のパク刑事のことです。男の子がほしかったチェ・グヌとハン・ヨンヒ夫妻ですが、子供ができませんでした。そのため、施設から5歳の男の子を迎え、ムンジェとして育てます。

<2>実子のチェ・ムンジェ(1993年生まれ)
これは、主人公のムンジェのことです。養子を迎えたチェ・グヌとハン・ヨンヒ夫妻でしたが、実子ができたことで養子を手放し<ムンジェ>の名も変えさせます。その後、実子に<ムンジェ>と名付けました。

ムンジェの叔父 ハン・ヒスは、あっさり捨てられた養子のムンジェに愛情をかけていました。実子のムンジェにとって叔父の記憶が薄いのは、この反動だと思われます。ハン・ヒスにとってのムンジェは、パク刑事なのです。

<3>パク・チャヌを名乗ったチェ・ムンジェ
高校生の頃、ムンジェとしてよい子でい続けることに限界を感じたムンジェは、偽名を名乗ります。そこで別人になれた気がしたムンジェは、その翌日、修学旅行の宿泊先に放火をします。悪い子になれた気がしたそうです。

このあと、母親 ハン・ヨンヒが無理心中を図りました。父親 チェ・グヌの遺体は上がらず、保険金詐欺ではないかと疑われるもととなります。ムンジェが精神を病んだ記録は、ここから始まっています。

<4>大学生と偽るチェ・ムンジェ
街中で見かけたソ・ミニョンに一目ぼれしたムンジェは、身分を偽り文学部サークルに入ります。そこでミニョンやソ・ユミンと親しくなったムンジェは、3人で済州島へと旅行します。そこでムンジェはユミンと衝突しました。

ムンジェ目線で書かれた作り話の中で、ミニョンは二人の男をもてあそぶ女と描かれます。ムンジェはただ物語を作っただけのつもりが、薬の影響で知らぬ間に投稿していました。デマの影響で、ミニョンは自殺を図ります。

<6>ソ・ユミンの才能を盗んだチェ・ムンジェ
恋人 ミニョンの精神が不安定になったことで、ユミンは小説に費やす時間がなくなりました。その隙に、ムンジェはユミンの創作ノートを盗み、小説を執筆します。その作品は新人賞を獲り、ムンジェは小説家となりました。

身分を明かさない天才小説家となったムンジェは、マネージャーである会計士 ソン・スヒョンと組み、ノジャの金を奪います。その際、ムンジェはノジャと顔を合わせました。ノジャはこの後、3年間ムンジェを追います。

<7>チェ・ムンジェの身分を乗っ取ったソ・ユミン
3年の月日をかけ、ユミンはムンジェの行動を調べ上げ、なりすます方法を編み出しました。ユミン自身は3年前に自らの死を偽装しており、ムンジェの顔に整形したユミンは<もうひとりのムンジェ>となったのです。

<8>ムンジェを名乗るユミンを装うムンジェ
ムンジェとユミンとで格闘し、ユミンが命を落としました。その後、ムンジェは<天才小説家 チェ・ムンジェを演じるソ・ユミン>の真似をし始めます。それにより、ユミンが犯した罪は<偽者のムンジェ>のものとなりました。

しかし、ユミンはまだ罠を遺していました。上巻のみ出版されている『野ネズミ』の下巻原稿には、ユミンが犯した罪も記されていたのです。ムンジェは、ムンジェのままでいても、ユミンを装っても、罪びととなるのです。

数日後に迫った出版日に向けて下巻の原稿を執筆するムンジェですが……ユミンの創作ノートなしには、執筆などできません。そこに、奪われた金を寄越せと迫るチンピラ スンギュもやってきます。

ムンジェは、母親から<よりよいムンジェ>になることを求められていました。その期待を叶えるに足る能力がないことを受け入れられないムンジェは、別人になろうとしたり、別人の経歴や才能を乗っ取ったりします。

多くの経験を通して、ムンジェは<本物のチェ・ムンジェとして生きる>ことを決めました。けれども、それこそがユミンの張った罠だったのです。本物として生きたければ、その罪も業も背負わなければなりません。

ムンジェが生き延びるのか、殺されるのか……そして原稿は完成するのか、ユミンの書いたものが出版されるのか……どうなるのか分からないまま、物語は終わってしまいました。この先は、ユミンも知らぬことです。

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『なりすましの鼠』エピソード10【最終回】ネタバレと感想・考察

アンダーラインが引いてある役名をタップすると、キャストと簡単な役柄紹介が表示されます。

人探し

身分を乗っ取られた天才小説家 チェ・ムンジェは、済州島へと向かう長距離バスの中で居眠りしてしまいます。そのとき、すっかり忘れていた高校時代の大事件――校舎で火災が発生したときのことを思い出しました。

夜も更けた中、避難した生徒たちは悲鳴を上げています。何台もの消防車や救急車、パトカーが集まる大きな事件だったのです。うたた寝から目覚めたムンジェは、突然よみがえった記憶に驚きました。

そこに、非通知で電話がかかってきます。かけてきたのは、ムンジェの身分を乗っ取った<野ネズミ>ソ・ユミンでした。ユミンは、済州島へと向かう船便のチケットをムンジェのスマートフォンに送ってきます。

かつて、ムンジェとユミン、ソ・ミニョンが済州島へとやってきたときも、使われたのは同じ船でした。一日早く船に乗り込んだユミンは、ハヌルノウルペンションへ電話をかけます。二人分の予約の確認でした。

ユミンは、ムンジェを呼び出したペンションにて、自らの死を偽装するつもりです。そして、何も知らずにやってきたムンジェを殺人犯に仕立て上げる――という計画でした。

病院では、ムンジェを追っていた刑事 パク・スニョンが目を覚まします。そこで、ムンジェの叔父 ハン・ヒスは、チンピラ パク・スンギュが仕向けた刺客から逃げ、姿をくらませたことをミノ刑事が知らせました。

「まだ見つかってませんが、目撃者がいました。鉄道員です。目的地を目指すように『オリニ大公園はどこか』と、『人を探してるんだ』と……」

ムンジェとその協力者のチンピラ キム・ヨングン――ノジャ、そしてスンギュの行方は分かっていません。パク刑事が点滴を引きちぎって捜査に戻ろうとしていた頃……船の中では、事件が起きていました。

ムンジェの顔に整形したユミンがくつろいでいるところに、ノックの音が響きます。ドアを開けたユミンの前にいたのは、ムンジェでした。ムンジェは、ユミンにナイフを突きつけます。

「空港に車を頼む。明日、朝4時だ。期間は分からない。着いたら会おう」

スンギュは、外国へと逃亡する算段をつけていました。<チョン・サンホ>という名義で作ったパスポートと、いくばくかの金をポケットに入れます。そこに現れたのは、土と血にまみれオノを手にしたノジャでした。

やはり人探しのプロは違いますね。ノジャはここ3年ほど、裏社会の人々が探し当てられない人物を連行する仕事をしてきました。その際に築いた人脈が活きているのか、スンギュの居場所も簡単に特定します。

スンギュは<裏社会で幹部として君臨するノジャ>に憧れを抱いていました。そのため、稼ぐだけ稼いだのちに足を洗おうと考えたノジャに対し、強い怒りを覚えます。本来、スンギュの怒りは金に根ざすものではないのです。

ノジャは、知性もあり、暴力的でもあり、その一方で弟分たちを立場が変わっても世話し続ける人間性もあります。スンギュのみならず、ノジャに憧れる人は大勢いたのではないでしょうか。

しかし、多くのチンピラたちはノジャの本質を見抜けずにいたようです。それだけの能力があれば、裏社会でなくとも生きていけるはずです。それを許さなかったのは、ノジャ本人の気質にあったのだと思います。

ノジャは、相手が自分を侮ったり裏切ったりしていた場合、全力で報復します。だからこそ、組織の中で<監察官>という地位に置かれ、裏切り者を処分する役割となったのです。

こういった気質の人は、一般社会になじむのは難しいところがあります。裏切り者を自らの手で処分することは、一般社会では最も避けるべき行動とされるためです。しかし、ノジャは裏切り者の処分を人任せにできません。

現在、ノジャが敵と認識しているのはスンギュです。可愛がっていた弟分を殺し、協力者であるムンジェの敵 ユミンに手を貸し、ノジャ自身を生き埋めにしようとした……スンギュです。

ところで、スンギュの居場所を特定したノジャにならったのか、ムンジェもユミンの船室に乗り込みましたね。ノジャに比べれば、特定は簡単だったでしょう。ユミンは、ムンジェより早く済州島に到着したいはずです。

また、ユミンはムンジェの身分を乗っ取って以降、ムンジェの名義を利用していました。そのため、済州島へ向かうリストから<チェ・ムンジェ>を探せば、ユミンにたどり着けるのです。簡単ですね。

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偽者のムンジェ

オリニ大公園は、5歳のパク刑事と、生まれたばかりのムンジェとが最初に顔を合わせた場所でした。養子として<チェ・ムンジェ>の名を与えられたパク刑事でしたが、養父母に実子ができたことで名前と立場を奪われます。

自分こそがチェ・ムンジェだ――5歳のパク刑事は、赤ん坊のムンジェの手の甲へとプラスチックのフォークを振り下ろしたのです。すぐにムンジェの両親がやってきて、赤ん坊を抱き上げあやしました。

養父母はどちらも、実子のムンジェに意識を向けています。手放した養子には目もくれません。それを目の当たりにした5歳のパク刑事は、パッと駆け出しました。その場にいた叔父 ハン・ヒスは、パク刑事を探し始めます。

そして現在――アルツハイマーになったハン・ヒスは、ショックを受けて姿を消した5歳のパク刑事――<養子のチェ・ムンジェ>を捜していたあの頃に戻っているのです。

「俺たちは人間か? 人間になりたいなら、新しい個人情報を買え。別人になりすまさずに生きられるか?」

ノジャは、裏社会で生きるか死ぬかの生活を続けることに飽き飽きしていました。そんなノジャを見て、スンギュは現実の厳しさを訴えます。スンギュが胸に忍ばせていたパスポートは、血まみれになっていました。

ユミンの船室に入ったムンジェは、怒りに任せてユミンを殴りつけます。なぜユミンがこんなことをするのか、ムンジェには理解できないためでした。そんなムンジェに対し、ユミンは呆れたように笑います。

「決まってるだろ。お前になるためだ。もともと、お前の居場所じゃないだろ。チェ・ムンジェでもない」

ユミンは、パク刑事がムンジェの<兄>だと語ります。ムンジェが生まれる前に<チェ・ムンジェ>だった男の子がパク刑事であることを、ユミンは知っていたのです。しかし、叔父との関係は計算外でした。

大学時代、ムンジェは匿名掲示板にある投稿をしました。ミニョンが男二人をもてあそんでいるというデマです。ミニョンは注目の的となり、進学を諦め退学し、精神を病み自殺未遂を繰り返すようになりました。

ミニョンを救うため、ユミンは書き上げた小説を持って出版社を回ります。けれども、ユミンの小説はすでに出版されていたのです。ムンジェがユミンの才能の乗っ取りに成功したのと同じ頃――ミニョンは命を絶ちました。

「復讐しよう。俺もお前になって、すべて取り返そうと。その仮面を引きはがして、世に放り出そうと。答えになってるか? なぜ俺が怪物になったか」

ムンジェは今まで、ユミンのよいところをすべて自分のものだと主張し、自分の欠点をすべてユミンになすりつけていたと考えていいでしょう。罪が重いのはユミンですが、ムンジェもなかなかのものです。

ユミンは<ミニョンを殺したのはムンジェだ>と考えています。その理由は、ミニョンを追い込んだデマを流した張本人がムンジェだったためなんですね。ムンジェは、ミニョンがその後どうなったか知らなかったようです。

ムンジェの流したデマは抽象的で、個人名がはっきり書かれていません。どんな行為をしたかも、具体的には書かれていません。しかし、ムンジェ、ユミン、ミニョンの三人が済州島へと旅行に行ったことは周知の事実です。

ムンジェの投稿には、ひとりの男が、一組の恋仲にある男女の様子をそばで見ていた様子が描かれています。その中に、女がどちらの男にも気を持たせる描写が挟まれているのです。

ユミンとミニョンとが恋人同士であることは、大学内でも知られたことだったようです。そんな中、ミニョンはムンジェにも触手を伸ばしていたとなれば……想像力のたくましい文学部の学生は、興味を持つでしょうね。

今まで分かっていなかったミニョンの死亡時期もはっきりしました。ムンジェが新人賞を獲った作品『インタビュー』が出版された頃です。こちらももちろん、ユミンのアイディアを元にした作品です。

また、ミニョンの遺体が身元不明となった理由も判明しました。同棲していた部屋でミニョンが自殺したあと、ユミンはその遺体をベッドに置いたまま、共に過ごしていたのです。

ミニョンの学籍がないのも当然ですね。ミニョンは自ら大学を辞め、他人の目から逃れるために引きこもっていたのです。図らずも、ムンジェとミニョンとは<他人を脅威に感じる>という共通点を持っていました。

この作品はホラーではないので展開としてあり得ませんが……まるで、亡きミニョンがムンジェに呪いをかけたかのようですね。ムンジェが引きこもりになったからこそ、遅筆のユミンが『野ネズミ』を書けたわけですし……。

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悪意のない悪役

スンギュによって殺されたかのように思えたノジャでしたが、恐ろしく強い生命力によって目を覚ましました。薬局で包帯と痛み止めを買い、興信所へと戻ります。そして、パク刑事へと連絡しました。

「ムンジェは、ネズミ野郎に会いにいった。同じ顔の男だ。自分が誰か分かってない。かつては誰だろうと、やつはムンジェだ。助けてやれ。俺は行けそうにない」

罪があろうとなかろうと、生きたまま逮捕するのが警察官の道理だとノジャは説きます。パク刑事は納得し、海の上にいるムンジェを捕らえに向かいました。そんな中、ムンジェはユミンの言葉に混乱し続けています。

「待てよ。お前は……本気で言ってるな。他人になりすまし、パニック障害で隠れてたんじゃない。イカれたか、どうした。しっかりしろ。お前が……お前が悪役なんだ!」

ユミンが大学生を装っていたことも、ミニョンが恋人だったことも――小説に記したことはすべて、ムンジェの中で<真実>となっていたのです。実際は、街中で見かけたミニョンに一目ぼれしたムンジェの暴走でした。

大学生を装いミニョンに近付いたものの、ユミンと恋人だったミニョンは、ムンジェに見向きもしません。ユミンの才能も、恋人も、すべてムンジェの理想のものでした。偽者だったのは、ムンジェのほうなのです。

けれども、すべてムンジェが悪意を持って行ったことではありませんでした。ミニョンのデマも、投稿するつもりなく書いた小説です。創作ノートも、自分が作ったと思い込んでいました。

ムンジェが事実を受け止め、自分のせいでミニョンが自殺したと知ったとき――船室のドアが激しく叩かれます。船のスタッフたちが、警察の指示を受けて<チェ・ムンジェ>を捜しにきたのです。

「どんな状況か分かるか? 俺たちのどちらかが、ここで永遠に消えなきゃならない。ドアが開く前にな。……お前が死ね。俺はチェ・ムンジェになる」

ユミンは、ムンジェが持ち込んだナイフを拾いました。床にへたり込んでいるムンジェに向かって、ユミンがナイフを突き出します。そののち、船室にいる<チェ・ムンジェ>は独りになりました。

ムンジェを医学的に分析すると<空想虚言癖><作為症/虚偽性障害>となるのでしょう。一般的に、嘘をつくときには何かしらの利益を得たり、損害を回避したりする目的を持つものです。

しかし、上記のような病的な嘘となると、まったく違う性質を持ちます。そもそも<嘘をついている>という意識がない場合が多いのです。ムンジェのように、自分が捉えている物事こそが事実だと考えています。

ムンジェの場合<ユミンのような人間になりたい>と強く願ったために、記憶の中のユミンとムンジェとを入れ替えてしまったのでしょう。そのため、都合の悪いこと――ミニョンの不在に関しては何も語れないのです。

それでも、作家を続けている以上は限界が訪れます。ユミンから盗んだ創作ノートは3冊限りのため、4作目が書けないのです。その矛盾については、ムンジェ自身も違和感を覚えていたようです。

もし悪意を持ってユミンのアイディアを盗んでいたのならば、同じように、別の誰かからアイディアを盗んでいたことでしょう。執筆能力はあるのですから、アイディアさえあれば作品を作り続けることができます。

しかし、盗作しているという意識がないために、なぜ自分が書けないのかが分からないのです。<ムンジェは悪意によって行動している>と思っていたユミンにとっては、衝撃的な事実だったと思われます。

ムンジェは、母親が飲んでいた抗不安薬を子供の頃から真似していたと語っていました。そもそも、ムンジェが服用しているアルプラゾラム錠は、小児の服用が禁じられています。それほど強い薬だと考えていいでしょう。

症状が出ていない頃から使っていたとなれば、この抗不安薬の常用がムンジェの心身に悪影響を及ぼしたと考えるのが妥当です。両親の無理心中が最後の一押しとなり、日常生活に異常をきたすようになったのでしょう。

ユミンが自身への復讐心から、偽者のミニョンを作り出し殺害したと知って、ムンジェは怒っていました。このことから、ムンジェは記憶をすり替えているだけで、悪に染まったわけではないことが分かります。

ユミンにとっては、この3年間はなんだったんだと言いたくなる結末ですね。血を吐く思いでやっとたどり着いた<悪役>が、こんなに腑抜けだったとは……。ミニョンも草葉の陰でずっこけていることでしょう。

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生き残り

夜明けとなり、パク刑事たちは済州島行きの船の前に着きました。乗客たちが降りたあと、最後にムンジェが現れます。その額には、何者かと争ったであろう痕が残っていました。

「やつは俺を殺すため、船に潜入を。……海に落ちました。俺を投げ飛ばそうとして。俺になりたかったのかと」

パク刑事は、目の前の<チェ・ムンジェ>をじっくりと上から下まで眺めます。その後、連行したムンジェはパニック障害など持っていないように振る舞いました。叔父の生存を喜び、本物だと証明できると語ります。

「ボタン、一番上まで留めろ。あいつは、そう着てた」

パク刑事は、生き残ったのが<本物>でありながら<偽者>のふりをしていることを見抜いていました。なぜ、いつもそうやって<他人の居場所>を盗もうとするのかと、パク刑事は尋ねます。

ムンジェとユミンとの争いは、すぐに決着がつくようなものではありませんでした。二人は互いに締め合い、殴り合い、両者が血まみれになります。最後に追い詰められたユミンへと、ムンジェは語りました。

「お前じゃなくて、俺になりたかった。よりよい俺に」

割れた窓からユミンを海へと落とし、ムンジェは着替え始めます。その胸にあったのは<よりよいムンジェになりなさい>という母の言葉でした。そして、ムンジェは<チェ・ムンジェ>は最初から自分の居場所だと告げます。

パク刑事は、ムンジェに化けたユミンと長く接してきたため「この<チェ・ムンジェ>は連絡を取っていたほうのムンジェではない」と判断できたんですね。ユミンからは殺気が漂っていたという点もあるかもしれません。

ムンジェは悪意なく悪行を重ねてきた人物なので、刑事の勘には引っかからないのです。実際、ムンジェと対面で話し合ったパク刑事は、ムンジェを信じることを決意していました。

ユミンが初対面のパク刑事から疑われていたのは、悪事を働く者特有のオーラをまとっていたからなのでしょう。しかし、その雰囲気を作り出していたのは、ひどい被害を受けたがゆえに生まれた復讐心でした。

確信する証拠となったのは、ユミンとムンジェとのボタンのかけ方の違いです。調べてみると、このボタンのかけ方の違いで、本物と偽者とを見分けることが容易にできたんですね。

パニック障害を抱える人によくある現象として、首やのどに触れる位置にものがあるのが苦手というものがあるそうです。閉塞感が苦手なため、首回りにものがあると「窒息しそうだ」という感覚になってしまうそうです。

また、締め付けがきつい服や、着脱しにくい服も、閉塞感を招くものとなります。きつい服を脱いだあとにホッとすることがありますが、これは交感神経が優位になっていた――つまり、緊張状態にあったことの証拠です。

そうなると、パニック障害を抱えていたムンジェが、よく首回りのゆるい服を着ていたのは、当然のことなんですね。知ってか知らずか、ユミンは自ら偽者であることを見せつけて回っていたことになります。

警察署から出たムンジェは、ノジャの営む興信所へと向かいました。ノジャは、一目で<本物のムンジェ>だと見抜きます。右手が動かなくなったノジャは、裏社会から引退することを決めていました。

そこでムンジェは、ノジャの力になりたいと言います。そんなことよりも、ノジャが気になるのは<本物>か<偽者>かです。それを問われたムンジェは、ふっと目線を虚空に飛ばしました。

「修学旅行の火事……俺が火をつけた。薬をやめたら、全部思い出した。俺の仕業だった」

火事の前日、ムンジェは通っていたチョンウン学習塾にて、叱られていました。<チェ・ムンジェ>という名にプレッシャーを感じ、偽名 パク・チャヌで登録したためです。

違う名を名乗ったとき、ムンジェは生まれ変わったように感じました。よい子でしかいられないムンジェではなく、悪い子にもなれると自信を持ったのです。そんなムンジェに呆れつつ、ノジャは注意します。

スンギュは姿を消しましたが、金のこととなると諦めの悪い男です。ノジャは死んだと思っていますが、ムンジェのことはこれからも狙い続けるでしょう。しっかり隠れ続けるようにと言い残し、二人は別れました。

ここでは、ムンジェがずっと<チェ・ムンジェ>にプレッシャーを感じてきたことが明かされました。待望の実子だったムンジェですが、母親からかけられる期待の大きさにつぶれそうになっていたんですね。

よい子でいるのは苦しいが、<チェ・ムンジェ>のままでは悪い子になれない――その呪縛から解き放たれるための第一歩となったのは、別人の名を騙るという行動でした。ムンジェは、ムンジェをやめたかったのです。

しかし<よい子のムンジェ>に戻ったときには、悪い子の記憶は必要ありません。だからこそ、ムンジェは自身が放火魔である記憶を封印したのでしょう。そのルールを壊したのは、ノジャでした。

ノジャは、どう転んだとしても<本物のムンジェ>として生きるべきだと説きます。<よい子であること>がムンジェである際の条件だと思っていたムンジェには、衝撃的な言葉だったのではないでしょうか。

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ユミンの罠

ムンジェは、担当である編集長 ハン・ジヘのもとを訪ねました。ユミンは『野ネズミ』下巻を渡しておらず、その続きを渡すようハン編集長が急かしてきます。ハン編集長は、読者の反響を受けて目を輝かせていました。

「ルチェナタワー 705号室、暗証番号は0912――でしょう?」

ユミンが住んでいた部屋には、大金が遺されていました。その部屋にある鏡には、拳で割られた跡が残っています。各部屋を回ったムンジェは、開かれたままのカーテンを閉め、執筆作業にあたることとしました。

この物語は事実だ。私は人を殺した。
これは犯行の記録で、自首の手記である。
私が<ネズミ>である証明だ。

ユミンは、下巻を書き終えていたのです。そこにあったのは、ユミンが見たムンジェの行動記録でした。こんなものを出すわけにはいかないと、ムンジェはつぶやきます。ユミンは、ムンジェに対する罠を遺していたのです。

パク刑事は、妻と争う法廷にいました。そこでパク刑事は<家族とは何か>をムンジェの叔父から教わったと語ります。夫や父としての役目を果たせなかった反省を告げ、チャンスを与えてほしいと妻に乞いました。

その頃、ノジャは田舎町にやってきていました。田畑が広がる中、ノジャは目的地を目指して歩いていきます。ノジャを見つけた高齢女性が、ノジャに収穫を手伝うよう命じてきました。ノジャは仕方なさそうに応じます。

その夜、ムンジェはネズミに襲われる悪夢にうなされました。ストレスでかじった爪は深爪を越え、血がにじんでいます。今週末に出版するため、ムンジェは下巻を書き終えなければなりません。

そこに、何者かが訪ねてきました。ムンジェは包丁を握り、玄関へと向かいます。インターフォンを鳴らしているのは、スンギュでした。けれども、ムンジェが脅えているのは幻覚の中に現れたユミンです。

空には暗雲が渦巻き、雨が地面を打ちます。スンギュは激しくドアを叩き、ムンジェに出てくるよう急かしていました。ムンジェは、真っ赤になった目を虚空に泳がせます……。

ユミンは、自分が死んだところでムンジェの地獄は続くと言っていました。その理由は『野ネズミ』下巻に収録される原稿にあったんですね。ユミンが3年かけて仕上げた作品には、ムンジェの罪がすべて記されていたのです。

それだけではありません。ムンジェになり替わったユミンが犯してきた罪もつまびらかにされていました。つまり、生き残ったのが<本物のムンジェ>でも、<ムンジェに化けたユミン>でも、罪びととなるのです。

ユミンは、ムンジェを罪を明らかにできるのであれば、自分が罪人として裁かれてもよいと考えていたようです。すでにソ・ユミンとしての人生は終えているため、ムンジェを亡き者にできるのならば命さえ惜しくないのです。

そんな相手を敵に回してしまったことが、ムンジェの人生最大の失敗だったと言っていいでしょう。おまけに、ユミンはムンジェをはめる作戦にスンギュを取り込みました。これがさらに、ムンジェを苦しめることとなります。

故意ではなくとも、罪を重ねてきたムンジェには大きな罰が下ることとなりそうです。その一方で、裏社会の組織において幹部にまで上り詰めたノジャは、体の自由を失うことで引退することとなりました。

スンギュはノジャが死んだと思っているため、それを利用し、ノジャは足を洗うことにしたのです。ノジャはこれから、田舎で畑仕事をする日々を送ることとなりました。声をかけてきたのは、ノジャの母親でしょうか。

成功や金、復讐に執着せず、ただ生き続けることを選んだノジャは、穏やかな日々を過ごすのでしょう。また、パク刑事は、家族愛を教えてくれたムンジェの叔父 ハン・ヒスとの再会を通じて、家族と向き合うと決めます。

パク刑事も<奪われたムンジェの立ち位置>に執着することはありませんでした。ユミンはその復讐をするよう仕向けていましたが、パク刑事にとって大切だったのは、ハン・ヒスが向けてくれた愛情だったのです。

振り返ってみると、ユミンの策に乗ったのはムンジェとスンギュ、その子分くらいのものでした。ムンジェは<本物のムンジェ>であることに、スンギュは金に、子分たちは独立の夢に執着し、ひどい目に遭ったのです。

※トップ画像はNetflixから引用いたしました。

ミヅチ

ホラー好きのネタバレブロガーです。ダークファンタジーもミステリも好きです。Netflixオリジナルドラマに首ったけです。

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