2020年11月27日よりNetflixで配信されている『ザ・コール』(原題『콜/The Call』)は、韓国製作のSFスリラー映画です。
20年の時を越えて、ひとつの子機で繋がった2人の28歳女性……ただ友情を育んでいただけの2人は、いつしか対立するようになります。
ドラマ『美男ですね』で一躍有名になったパク・シネさんと、映画『バーニング』で鮮烈なデビューを果たしたチョン・ジョンソさんが主演を務めています。
オカルトとSFとスリラーにホラーを足すというてんこ盛りな作品! 恋愛要素ナシなのも好感度が高いです!
韓国映画『ザ・コール』とは
韓国映画『ザ・コール』(原題『콜/The Call』)は2020年3月に劇場公開する予定でしたが、コロナ禍のためNetflixでの動画配信となりました。
日本の作品はすぐに恋愛を絡めてきて主題から離れたメロドラマに尺を割くという悪癖がありますが、『ザ・コール』は恋愛要素ゼロです!
そんな『ザ・コール』の原作は、2011年に公開されたイギリス製作の映画『恐怖ノ黒電話』(原題:『THE CALLER』)です。
30歳のイ・チュンヒョン監督にとって、『ザ・コール』が長編デビュー作です。しかし短編映画で世界進出を果たしたイ監督の実力はトロントのお墨付き!
声だけで過去と未来が繋がるという設定は、日本でリメイクされた韓国ドラマ『シグナル』を彷彿とさせますよね。
しかし『シグナル』と全く異なるのは、繋がった2人がいつしか敵対し、血で血を洗うバトルへと突き進んでいくこと――。
28歳の女性ふたりは、20年の時を越えてどう闘い、どんな結末となるのか……? CGを多様したSF感満載の映像は必見です!
キャストとスタッフ
スタッフ
監督 脚本 |
イ・チュンヒョンさん 『Bargain』(演出)など |
脚本 | カン・ソンチュさん |
キャスト
パク・シネさん
幼い頃に事故で父を亡くし、それがきっかけで母と不仲になった孤独な28歳の女性。
2019年時点で28歳。一軒家に残されていた古い家庭用電話機の子機で1999年のヨンスクと繋がる。
チョン・ジョンソさん
実母を亡くした後、田舎の一軒家で養母に虐待されながら育った女性。
1999年時点で28歳。家に設置されている電話機の子機を通して2019年のソヨンと繋がる。
キム・ソンリョンさん
2019年時点、手術が困難な脳腫瘍を抱えて入院している。ソヨンとは不仲。
1999年の火事で夫を喪っており、母子家庭となっている。
イエルさん
1999年時点、田舎の一軒家で養女ヨンスクと同居し、ヨンスクの精神病を治療している。
しかし霊媒師という職業ゆえか、その治療はオカルティックで効果のほどは不明。
パク・ホサンさん
1999年に火事で亡くなっている。その墓は、ソヨンの叔父ソンホの暮らす村にある。
オ・ジョンセさん
ソヨンの叔父。田舎でイチゴ農家を営んでいる。独身。
1999年時点でもイチゴ農家であり、ヨンスクとも交流があったようで……。
イ・ドンフィさん
1999年から20年間、村で働く警察官。派出所で働いており、詳細な記録を残すメモ魔。
パク・シネさん
パク・シネさんは、2009年のドラマ『美男(イケメン)ですね』で男装してバンド活動をする歌手の役を演じ、日本でも一躍有名になりました。
現在はNetflixオリジナルドラマ『#生きている』にて、ゾンビが蔓延る世界で奮闘する力強い女性を演じて話題になっています。
ヨンスク(チョン・ジョンソさん)
ヨンスクを演じたチョン・ジョンソさんは、映画『バーニング 劇場版』(原作:村上春樹『納屋を焼く』)で鮮烈なデビューを飾りました。
チョン・ジョンソさんは『バーニング 劇場版』にて、危険な魅力をまとわせたヒロインを演じています。難解な映画ですが、おすすめです!
『ザ・コール』ネタバレあらすじ
同じ一軒家に暮らす2019年のソヨン(パク・シネさん)と1999年に生きるヨンスク(チョン・ジョンソさん)が、電話を通して繋がります。
ソヨンとヨンスクは仲良くなります。そして、1999年にソヨンの父が亡くなると知ったヨンスクは、ソヨンの父を救いました。
父が生き延びたことでソヨンの人生は変わり、家族仲がよくなります。その一方で、ヨンスクとの友情は薄れていきます。
養母によって虐待されていたヨンスクは、自分を捨てたソヨンに恨みを募らせます。そして、ソヨンの叔父や父を殺していきました。
ソヨンとヨンスクの闘いが始まります。圧倒的優位なヨンスクに対し、ソヨンは巧妙な嘘でヨンスクを殺した……はずでした。
運よく生き延びたヨンスクは、ソヨンの母と幼いソヨンを殺そうとします。しかしソヨンの母の命懸けの奮闘により、2人は生き残りました。
めでたしめでたし――とはいきませんでした。2019年のヨンスクは1999年のヨンスクと通話し、死ぬ運命を回避したのです。
ヨンスクは息を吹き返します。ソヨンの母は殺され、2019年のソヨンもヨンスクに捕らえられてしまうのでした……。
『ザ・コール』の詳細なネタバレ
スマホ紛失
ソヨン(パク・シネさん)は、昔暮らしていた家へと向かっていました。その途中で、ソヨンはスマホを失くしたことに気付きます。
送迎してくれたソンホおじさん(オ・ジョンセさん)のスマホを借りて、ソヨンは自分のスマホに電話をかけました。しかし、誰も出ません。
田舎にある一軒家がソヨンの新しい住み家でした。家に入ったソヨンは、自室にある物置から古びた家庭用の電話機を取り出します。
受話器を取ってもう一度電話をかけると、若い女性が出ました。女は彼氏と一緒にいるようで、両者とも軽薄な雰囲気です。
電話の向こうのカップルは、ソヨンにスマホを渡す代わりに謝礼を要求してきました。そして「かけ直します」と一方的に電話を切られます。
ソヨンはパソコンを使って、スマホの位置を検索しました。結果が表示されるのを待っていると、家に電話がかかってきます。
ソヨンが子機を取ると、先程の女とは違う女性の声が聞こえてきました。「あなたの言う通り、母は普通じゃないわ。私を家に閉じ込めた」
ソヨンがかけ間違いを指摘すると、相手は「ソニでは?」と尋ねてきます。ソヨンが戸惑っている間に、電話は切れてしまいました。
同じ住所
ソヨンの母(キム・ソンリョンさん)は、脳腫瘍を抱えています。その手術はとても難しく、1億ウォンかかります。
母は生きることを諦めて、夫と同じ墓に入ろうと考えていました。そんな母を、ソヨンは「隣に眠る資格があると思う?」と冷たくあしらいます。
そんなことを思い出しながら、ソヨンは父の墓を見つめました。1999年11月27日没――ソヨンが幼い頃に、父は亡くなったのです。。
帰宅したソヨンは、コール音を聞きあわてて子機を取ります。すると以前かけ間違いをしてきた女性が「ソニ、母に殺されそうなの。今すぐ来て」と言ってきました。
「ポソン邑ヨンチョン里4番地よ」と言われたソヨンは、ふと請求書を見ます。そこには「旧ヨンチョン里4番地」と書かれているのでした……。
隠し部屋
ソヨンが眠っていると、突然大きな音がしました。目を覚ましたソヨンは、壁にかけられていた家族写真が額ごと落ちたことに気付きます。
額がかけられて釘が古くなったのだと思ったソヨンは、釘穴に新しい釘を打ち込みます。すると、釘が壁の向こう側へと落ちていきました。
壁を叩いたソヨンは、壁の向こう側に空間があることに気付きます。カナヅチで壁を叩き壊すと、そこには階段がありました。
階段の下には、コンクリートの壁に囲まれた広い空間がありました。部屋の中央には木製の椅子があり、クマのぬいぐるみが置かれています。
奥には、タイル張りの空間がありました。そこには、ひとつの段ボール箱が置かれています。ソヨンはそこから古びた手帳を取り出しました。
手帳を開くと「1999年8月27日 金曜日」「霊を撃退するためだと言い、お母さんが私に火をつける」と書いてありました。
ソヨンがページをめくると、1枚の写真が滑り落ちました。ソヨンはそれを持って、ソンホおじさんを訪ねるのでした。
ヨンスク
ソンホおじさんは写真を見て「ヨンスク」とつぶやきます。そして、ヨンスク(チョン・ジョンソさん)の母親は霊媒師だったと話しました。
口が重いソンホおじさんから話を聞き出すのを諦めて、ソヨンは帰路につきます。そこでヨンスクの写真は、1999年11月26日に撮られたものだと気付きました。
ふと目を上げたソヨンは「ソニのスーパー」という店に気付きます。店先に置かれた赤いソファーには、疲れた様子の中年女性が座っています。
その夜、また電話がかかってきました。「ソニ!早く助けて!お母さんが私の体に火をつけようと……」
電話の向こうにいるのはヨンスクなのだと、ソヨンは気付きます。しかし、ヨンスクが生きていたのは90年代のはず――。
泣き叫ぶヨンスクの声が遠ざかっていきます。ソヨンは、ヨンスクのものであろう日記に書かれていたことを思い出します。
ソヨンは、隠し部屋に繋がる階段へと向かいました。穴からはもくもくと煙が出てきます。そして、階段は燃えて炭になっていました。
ソヨンとヨンスクの友情
「来ないなんてひどすぎない?」翌日、ヨンスクは電話口でソヨンを責めました。ソヨンは意を決し、事実を教えました。
ソヨンが生きる2019年とヨンスクが生きる1999年がこの電話で繋がっているのだとソヨンは語ります。
信じようとしないヨンスクに、ソヨンはこれから起きる事故のことを教えました。
養母(イエルさん)と暮らしているヨンスクは、虐待を受けていました。ヨンスクは実母同様に精神病を抱えており、治療と称した暴力を受けているのです。
霊媒師であるヨンスクの養母は、ヨンスクを家に閉じ込めて、奇妙な方法で「治療」を続けていました。
ヨンスクが食卓で養母に反抗していた時、ソヨンが話していた事故が起きたことがテレビで報道されます。
部屋に戻ったヨンスクは、子機でソヨンに電話をかけました。そして時間を超えて出会った2人は、友情を育むことになります。
同じ28歳である2人は、電話を通して情報交換します。そこでヨンスクが歌手ソ・テジのファンだと知り、ソヨンは新曲を聞かせました。
そして2人は、お互いの家庭事情を知ります。ヨンスクの実母が亡くなっていると知り、ソヨンも父を亡くしていることを明かしました。
ソヨンの父は、母がコンロの火を点けっぱなしにしたことが原因で亡くなったのです。ソヨン自身もその事故で、脚に大きな火傷を負っていました。
ふと思いついて、ソヨンはヨンスクに日付を尋ねます。しかし、そのタイミングでヨンスクの養母が来たため、2人の通話は終わるのでした。
1999年11月21日
ヨンスクが暮らしている一軒家に、内見の家族がやってきました。父母と幼い娘の家族を、ヨンスクはじっと見つめます。
内見にしにきた男性が、幼い女の子に「ソヨン」と呼びかけました。ヨンスクは女の子を見下ろします。「ソヨンっていうの?」
急いで部屋に戻ったヨンスクは、ソヨンに電話をかけました。電話越しに、ソヨンの父の声が聞こえてきます。
ヨンスクは「私、面白いこと考えちゃった」と笑い、ソヨンの父を生き返らせると言い出しました。
ある朝、養母の隙をついてヨンスクは家を出ます。ヨンスクは田舎道を駆け抜けて、引っ越し前のソヨンの家へと向かいました。
ソヨンの母は、鍋を火にかけたまま出かけました。ソヨンの父は昼寝をしており、ソヨン自身は幼いため、誰も異常に気付いていません。
ソヨンの母が玄関の鍵を植木鉢の下に入れたところを確認したヨンスクは、すぐに鍵を取り出して家に入りました。
現在――あるはずのないソヨンのスマホが鳴り始めました。そして、ソヨンの脚から火傷の跡が消えていきます。
ソヨンの周りにあるものが、姿を変えていきます。まずは質素な木目調の部屋が、ガーリーな部屋に変わりました。
ソヨンの着ている服も、女性らしい柔らかいシルエットの服に変わりました。家を出たソヨンは、植物園へと入っていきます。
するとそこには健康そのものの母と、白髪になった父(パク・ホサンさん)がいました。ソヨンは涙をあふれさせながら、父に抱きつくのでした。
ヨンスクはソヨンの現実が変わったことを知ります。自分の行動で未来が変わったことに、ヨンスクは驚くのでした。
友情崩壊
ソヨンとヨンスクは電話越しの友情を育み続けました。家から出られないヨンスクにとって、ソヨンは数少ない大切な友達でした。
しかし、父が生き返り、母の病気もなくなった今――ソヨンは家族で楽しく過ごす時間が忙しく、ヨンスクを構う暇がなくなっていました。
ヨンスクは、幸せそうなソヨンの声を聞いて笑い出します。しかしその声は怒りに満ちていました。「ちくしょう……ムカつく……」
「クソ女め。おい!」ヨンスクが大声を出した次の瞬間、養母が部屋に入ってきてヨンスクから子機を奪いました。
養母の目を盗んで外出したり電話したりしたことがバレてしまい、ヨンスクは拘束され、より激しく虐待されることになりました。
もう穴の開いていない隠し部屋への入口へと、ソヨンは向かいます。壁を叩きますが、そこに空間があるようには聞こえませんでした。
養母はヨンスクに粉をかけたり、呪文を唱えたりします。その時、養母はヨンスクが血塗れになっている姿を幻視しました。
ソヨンは、ヨンスクの現在を知ろうとSNSで検索し始めます。しかし、同姓同名の人ばかりが引っかかって本人に辿り着けません。
ヨンスクの治療を始めた養母は、ソニのスーパーの中から少女がじっと自分を見つめていることに気付きます。
スーパーに入った養母は、脅える少女のスカートをめくり、少女の脚に包帯がぐるぐると巻かれている様子を見るのでした。
ヨンスクの死
ヨンスクがありがちな名前だと気付いたソヨンは、一軒家の住所で検索をかけました。すると、ある記事が引っかかります。
「魔除けと称して養女を殺害」――精神病の治療のためにヨンスクを殺した罪で、養母は1999年12月30日に逮捕されていました。
ソヨンは久し振りにヨンスクからの電話を待ちます。かかってきた電話にすぐに出たソヨンは、今夜ヨンスクが殺されることを教えました。
その頃、養母は水槽の砂の中に隠していたナイフを取り出しました。そして、ヨンスクが寝ているであろうベッドにナイフを突き立てます。
しかし、そこにいたのはヨンスクではなく、クマのぬいぐるみでした。ヨンスクは部屋のドアを閉めて「本当に殺したのね」とつぶやきます。
「なぜ殺したのよ!」と怒るヨンスクに、養母は「あなたは大勢の人を殺す」と語りました。ヨンスクは大笑いします。
ヨンスクは物置に隠していた消火器の栓を抜き、部屋を煙で満たしました。そしてナイフを手に取ると、呪文を唱える養母にナイフを突き立てます。
全てが終わった後、ヨンスクはソヨンに電話をかけました。「誤解があっただけみたい。ちゃんと解決した」ヨンスクは嘘をつきました。
「生まれ変わったみたい。今日が誕生日みたい」――歴史が変わり、死ぬはずだったヨンスクは自由の身になったのでした。
消えたソンホおじさん
家を出たヨンスクは、ファーストフード店で食事を楽しみます。そして街を歩いていたヨンスクは、何かを思いつくのでした。
ソヨンの家には、ソンホおじさんがイチゴを届けにきています。その頃、ヨンスクは派手なファッションに身を包み、ソンホおじさんに見せていました。
1999年、ヨンスクにイチゴを届けにきたソンホおじさんは家に上げられます。そして、ヨンスクの養母の姿が見えないことに気付きました。
ヨンスクが別の部屋へ着替えにいった時、ソンホおじさんはイチゴをしまうために冷蔵庫を開けました。そして、中のものを見てしまいます。
冷蔵庫には、バラバラになった養母の死体が入れられていました。それを見て脅えるソンホおじさんを見て、ヨンスクはため息をつきます。
ヨンスクは、ソヨンに電話をかけました。コール音に気付いたソヨンは、両親とソンホおじさんをリビングに残し、自室へと向かいます。
電話の向こうからは、命乞いをする男性の声が聞こえました。そしてヨンスクは「クソッ、買ったばかりの服が……」とつぶやきます。
それを聞いているソヨンの服からは、こぼしてしまったイチゴの果汁のシミがなくなっていくのでした。
連続殺人犯ヨンスク
ソヨンがリビングに戻ると、ソンホおじさんが消えていました。イチゴもありません。そして両親は、ソンホおじさんのことを忘れていました。
ソヨンは、ソンホおじさんが営んでいたイチゴ農場に向かいます。しかしそこは朽ち果てており、誰の姿も見えないのでした。
派出所に駆け込んだソヨンは、警察官のペク・ミニョン(イ・ドンフィさん)から「ソンホおじさんはだいぶ前に亡くなった」と知らされます。
ヨンスクは、養母とソンホおじさんを殺害した犯人と記録されていました。そして、境界性人格障害であることも……。
当時ヨンスクは、警官ペクに辻褄の合わない供述をしました。疑われる恐れがあると気付いたヨンスクは、ペクの名前をそっと確認します。
派出所からソニのスーパーへと向かったソヨンは、店先の女性にヨンスクのことを尋ねました。そして、養母がソニを助けたことを知ります。
帰宅したヨンスクは、ソヨンに電話をかけました。そこでソヨンは、養母とソンホおじさんを殺したのかと問いかけます。
ヨンスクはシラを切ろうとしますが、現在のヨンスクは殺人罪で無期懲役となったと教えられて、殺人を認めます。
しかし、ヨンスクは反省したわけではありませんでした。せっかく自由の身になったのに一生刑務所暮らしなんてと、ソヨンを脅したのです。
ソヨンの父を助けたのは自分だと、ヨンスクは激高しながらソヨンを責め立てます。ソヨンとヨンスクは今や、加害者と被害者でした。
それでも2人は、お互いを繋ぐ電話を壊せずにいるのでした――。
父との別れ
電話に出ないソヨンに、ヨンスクはいらだっていました。するとそこに、幼いソヨンを連れてソヨンの父が訪ねてきます。
養母は、ソヨンの父と会う約束をしていたのです。それを知ったヨンスクは、ソヨンたちを家に招き入れるのでした。
現在――ソヨンと父はドライブをしていました。悩みを抱えて暗い顔をしているソヨンを、父は心配しています。
ソヨンの運転技術を磨こうと、父はカップコーヒーを取り出しました。そして、コーヒーがこぼれないように運転するよう指示します。
1999年――ヨンスクはソヨンの父を襲いました。現在のソヨンの目の前から父の姿が消えていき、それと同時に車も崩れていきます。
幼いソヨンの目の前で、ヨンスクはソヨンの父を殺したのです。そしてヨンスクは幼いソヨンに「電話に出ないのが悪いの」と詰め寄りました。
ソヨンとヨンスクの闘い
ソヨンの服装は、地味で暗いものに変わっていました。走って家へと戻ったソヨンは、廃墟となった家の床に「ソヨン 電話に出て」という血文字を見つけます。
ヨンスクが電話をかけてきました。父の首を切り落とされたと知り、ソヨンは「私がお前を殺してやる」と叫びます。
しかし、ソヨンはヨンスクの居場所を知りません。逆にヨンスクはソヨンの家族を知っており、母の命を奪うと脅してきます。
1時間の猶予を与えられ、ソヨンはヨンスクの逮捕を防ぐための情報集めをするよう命じられました。
電話を切ったソヨンは、ヨンスクが逮捕されるきっかけではなく、12月31日に起きる事故を調べました。
その横で、ヨンスクが書いた血文字が消えていきます。ソヨンへのメッセージが不要になり、ヨンスクが掃除したからでした。
掃除のために、ヨンスクは血塗れになっていました。その姿は、養母が幻視したものと全く同じものなのでした――。
ヨンスク爆発
ソヨンは、ヨンスクにある場所を教えます。そこで証拠の残った凶器が発見されたと聞かされ、ヨンスクは準備を始めました。
幼いソヨンを拘束して地下室に閉じ込めたまま、ヨンスクは凶器が発見される場所へと向かいます。
不思議なことに、1999年と2019年の2人は同じ日付の同じ時刻にいるようです。事故が起きる午後5時は……もうすぐでした。
しかし、事故が起きる数分前、ヨンスクは建物を出てしまいました。近くにいた子犬たちの声に気付いて、見に行ったからです。
ヨンスクが子犬に飽きて建物へと戻ろうとした瞬間、爆発事故が起きました。ヨンスクは爆風をもろに受け、吹き飛ばされます。
火事の真実
午後5時が過ぎ、ソヨンに電話がかかってきました。ソヨンは震えながら電話に出ます。すると、電話口から幼いソヨンの声が聞こえてきました。
幼いソヨンは、ソヨンに助けを求めてきます。電話を替わったヨンスクは、ソヨンが言う通りにしないなら幼いソヨンを虐待すると言いました。
そして、ウソつきの悪霊を撃退するためと言って、幼いソヨンに桃の木を煮込んだ熱湯をかけました。
ソヨンの体に火傷の跡が広がっていきます。痛みにもだえるソヨンに向かって、ヨンスクは自分が目撃した真実を告げました。
火事を起こすきっかけを作ったのは、ソヨンの母ではありませんでした。母が出かけた後、幼いソヨンがもう一度コンロに点火したのです。
ヨンスクはソヨンを「空想虚言症」とけなしました。母親を嫌うあまり、ソヨンは自分の罪を母になすりつけていたのだと――。
ソヨンと母の共闘
ソヨンはふらつきながら、派出所へと向かいました。1999年に書かれた聞き込みのノートを盗んだソヨンは、ノートを読み始めます。
同じ頃、ヨンスクは凶器を手に入れ、処分していました。ソヨンの目の前でノートの記述は消えていき、家の内装も変わっていきます。
ソヨンの周りには、おびただしい数の銀色の冷蔵庫が並んでいました。
ノートを読むと、新しい記録を見つけます。1999年、ソヨンの母は警官ペクと共にヨンスクの家を訪ねていたのです。
「コードレス電話を使用」という赤字の記録を見て、ソヨンはコードレス電話――つまり、あの子機を探し始めました。
1999年にいるソヨンの母も、現在のソヨンも、ヨンスクの手がかりを探し回っていました。
ソヨンは隠し部屋に入り、中央にある椅子が血塗れになっていることに気付きます。その奥には、1999年に通じる子機がありました。
父の姿を見つけられなかったソヨンの母は、ヨンスクに電話を借ります。すると現在のソヨンと繋がりました。
ソヨンは母に「逃げて」と告げます。戸惑う母の目の前で、警官パクがヨンスクに殺されました。
ソヨンは、隠し部屋に戻ってきたヨンスクに襲われていました。しかし母の命を救うため、命懸けでヨンスクから子機を奪います。
ソヨンも母も、2階にある同じ部屋に逃げ込んでいました。母から助けを求められたソヨンは、ヨンスクと闘うよう助言します。
母は、部屋のなかにある消火器を構えました。しかしその時、幼いソヨンの泣き叫ぶ声を聞きます。
幼いソヨンに駆け寄った母は、ヨンスクにナタで切りつけられました。幼いソヨンは縛られているため、何もできません。
母は幼いソヨンを守るため、ヨンスクを連れて部屋の中に戻りました。2019年にいるソヨンの目の前で壁に返り血が飛び、窓が割れていきます。
母がヨンスクと闘っていることを知り、ソヨンは嗚咽します。そして少し時間が経ち……ヨンスクだけが部屋から出て行きました。
ヨンスクが幼いソヨンへとナタを振り上げた時、2019年のヨンスクもソヨンに向かって武器を振り上げていました。
しかし、部屋から飛び出してきた母がヨンスクへと飛びかかり、その勢いのまま手すりを越えて1階へと落ちていきます。
死を覚悟したソヨンが目を開くと、そこは廃墟と化していました。ヨンスクの姿もありません。
ソヨンは母の姿を探して、病院から父の墓へと、心当たりの場所を辿ります。そして墓の前で、のんびりした声の母と出会うのでした。
母の首にも手にも、大きな古傷が残っていました。それが命懸けでソヨンを守り、ヨンスクと闘った証なのです。
エンドロール
「よく聞いて、下手すればあなたは死ぬ。もうすぐ警察とソヨンの母親が来る。電話は絶対に手放さないで。変えられなくなるから」
1999年、ソヨンの母と共に1階に落ちたヨンスクが目を覚まします。それと同時に、ソヨンの隣を歩く母の姿が消えていきました。
隠し部屋に拘束された人にかけられている布が吹き飛びます。その下には、脅えるソヨンの姿があるのでした……。
『ザ・コール』の考察と感想
『ザ・コール』は、2019年に生きる孤独な女性ソヨンと、1999年に生きる殺人鬼ヨンスクの闘いが描かれた映画でした。
すぐに人を殺すヨンスクの恐ろしさが印象に残りますが、ソヨンにも色々と問題がありましたね。
身勝手なソヨン
ソヨンは、幼い頃に火事で父を喪っています。その理由を、ソヨン自身は「母がガスコンロの火を点けっぱなしにしたから」だと思っていました。
しかし、事実は違いました。ソヨンの父を救いに行ったヨンスクが目撃したのは、幼いソヨンがおままごと感覚でコンロの火を点ける姿だったのです。
ソヨンは父の死を招いたのが自分だという辛い記憶を、記憶の底に封じ込めていたのでしょう。
しかし、ソヨンが自分可愛さゆえに傷付けた相手は、母だけではありませんでした。
ヨンスクが養母に虐待を受けており、外出すら自由にはできないという状況を知っていて、ヨンスクを放り出したのです。
ヨンスクが養母の目を盗んでまで父の命を救ってくれたのに、ソヨンは家族と過ごす生活を楽しむためにヨンスクを捨てました。
ソヨンにそんなつもりはなかったかもしれません。しかし、ヨンスクは唯一の同年代の友人を急に失ったのです。
「苦労して家族の命を救ってあげたのに、ソヨンは私に感謝するどころか、用済みとでも言うように見捨てた」
ヨンスクがそう思ってしまっても仕方ないと思います。おまけに、ヨンスクは一度抱いた怒りを手放せる人ではありませんでした。
ヨンスクの異常性
ヨンスクは境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)です。ヨンスクの異常な行動は、この病が原因となっています。
この障害を持つ人は、対人関係に大きな困難を抱えています。相手のために必要以上に頑張る一方、期待を裏切られたらネガティブな感情に支配されます。
特に「見捨てられること」に対する不安と、実際にそうなった時の怒りは、周囲の理解が追いつかないくらい激しいものです。
ヨンスクがその傾向を見せたのは、養母が自分を殺そうとした時と、ソヨンが電話に出てくれなくなった時でした。
衝動的な行動に出ることも特徴とされており、養母を殺した後の大量の買い物もそれに入るのではないかと思いました。
孤独に生きてきたソヨンには、自分を気にかけてくれる人がいなければ生きていけないヨンスクの感情は理解できなかったのでしょう。
ヨンスクに必要だったのはオカルティックな「治療」ではなく、精神科に通って少しずつ考え方を変えていく努力でした。
ヨンスクが最後に頼ったのがソヨンではなく、唯一で絶対の味方である自分自身だった……というのが、悲しいですね。
伏線となった養母の幻視
ヨンスクを「治療」している際、養母は血塗れのヨンスクの姿を見ました。これは未来予知であり、養母は本当に力のある霊媒師だったのです。
養母がヨンスクを殺すことを決めた理由は、この幻視にあったのでしょう。ヨンスクを生かしておけば、多くの被害者が出ると分かったから……。
ヨンスクの人生の結末は、養母が幻視したものよりずっとひどいものになるのでしょう。
幸福なラストと急転直下のエンドロール
2019年を生きるヨンスクは、家の中に大量の冷蔵庫を置いていました。その中に入っているのは、大量の死体だと考えられます。
1999年、ソヨンの母が命懸けでヨンスクと闘ったことにより、ヨンスクは命を落とした……はずでした。
しかし、2019年のヨンスクはそんな最期など受け入れませんでした。1999年の自身にこの先に起きることを伝え、死を回避したのです。
そうして息を吹き返したヨンスクは、まずソヨンの母を殺しました。ソヨンに本当の孤独を与えて、同じ立場にしたかったのかもしれません。
そしてヨンスクは、ソヨンを捕らえました。養母に虐待された隠し部屋に、幼いソヨンを痛めつけたあの場所に、ソヨンを縛りつけたのです。
ヨンスクは今までの被害者と同じように――もしかしたらもっとひどい方法で、ソヨンを痛めつけ、死に至らしめるのでしょう……。
ヨンスクの怒りも理解できるし、ソヨンが完全無欠ないい子でもないので、どちらにも感情移入できずに巻き込まれる感覚でした……。
※トップ画像はNetflixから引用いたしました。
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