この記事は、Netflixオリジナルの台湾ドラマ『子供はあなたの所有物じゃない』(原題:你的孩子不是你的孩子)「クジャク」のネタバレと考察、感想です。
主な登場人物とキャスト
母・方美琪(シエ・チョンシュアン/謝瓊煖)
父・劉景輝(チェン・イーウェン/陳以文)
クジャクの声(ジャック・ナ/那維勳)
劉巧藝(ワン・ルンイー/王淪萓)
劉巧新(リチャード・リン/林鼎軒)
施宇婕(ムーン・リー/李宇彤)
あらすじ
厳しい校則で生徒を縛る代わりに一流大学への進学率が高く、金持ちの子息ばかりが通う私立の維徳高校に、貧乏な家庭の劉巧藝が通っていました。
巧藝も母もそうとは知られないよう周囲のお金持ちたちと同じように出費をするため、家計は火の車でした。
しかし巧藝には学年トップの成績と優れた芸術的センスと器用な手先が備わっていたため、周りは「才能がある」と褒めていました。
それでも巧藝は貧乏からくるコンプレックスを消せずにいます。クラスメイトとの交流にもいちいちお金がかかるのです。
ある日、校長が飼っているクジャクが巧藝に話しかけてきました。クジャクは交換品があれば金を渡すと言ってきたのです。
巧藝は友人・楽楽と交流するための金を得ましたが、その代わりに巧藝の色彩的センスは失われてしまいました。
そのせいで出場予定だった国際大会への出場が危うくなる中、クジャクは転校生を連れてくるよう巧藝に命じます。
公立高校からの転校生・宇婕はクジャクと取引してクラス1位になります。しかしその後、巧藝と宇婕の体に異変が起こります。
ふたりともクジャクへと変わっていっているのです。声を失った宇婕は休学し、治療に専念することになりました。
どんどん金を得ていった巧藝は、ついに目に膜が張り、腕からは羽毛が生えてきてしまいました。
巧藝の父と弟の巧新は協力して、クジャクの指示通りに危ない橋を渡ります。しかし求めた結果は得られませんでした。
子どもを一流大学に進学させて貧しい生活から脱却させる計画を狂わされた巧藝の母は、怒ってクジャクを殺しに行きました。
しかしクジャクの甘いささやきに母は身を委ねてしまいました。母は行方不明となり、巧藝の体は元に戻ります。
巧藝と父、弟の巧新はどこかで「母はクジャクと一体になった」と分かっているため、クジャクの鳥かごの前に集まり“4人”で食事をするのでした。
ミヅチガタリ
今までは学歴社会に悩む子どもが解放されたくてもがく話でしたが、今回は少し毛色が違いました。
巧藝はそもそも成績がよく才能も持っているので、求めているものは成績や親からの評価ではありませんでした。
金持ちばかりの維徳高校で、巧藝は友達が欲しかったのです。しかし金がないと、まともに友人関係も築けません。
クラスでも一目置かれる存在である楽楽と仲良くなった巧藝は、それだけでは飽き足らず、楽楽と肩を並べようとしました。
一流大学に進む際に武器になる芸術的センスを失ってまでも、巧藝は周りから認められたかったのです。
巧藝自身はそんな自分を振り返り「物質主義だった」と語りました。努力や才能では得られないものを金で買おうとしたためです。
お弁当すら隠れて食べなければいけないような立場だった巧藝にとっては、クジャクの甘い誘惑が天からの救いに思えたでしょう。
思えば、クジャク自身が物質主義でした。クジャクは相手の欲しいものを目の前にぶら下げ、自分の欲しいものを奪ったのです。
しかし雑草やカエルを食べるようになっても変わらず金を求め続けた巧藝の図太さは尊敬します。生のカエル……無理です……。
ずっと母の言いなりになってきた父でしたが、子どもたちの安全と健康が脅かされた時には、しっかりと母に立ち向かいました。
中卒でタクシー運転手にしかなれなかったのかもしれませんが、信念を貫いて家族を守ろうとする父親は素晴らしいと思いました。
そして最後にクジャクが狙ったのは、巧藝の母でした。母は、自分の人生が他の誰かによって狂わされてきたと考えていたのです。
そんな母を吸収(?)したクジャクですが、母からは何を奪ったのでしょうか……。寿命ですかね?
子どもを持つということは、自分の人生の数十年分を子どもに捧げることだと言う人もいます。
いざ「後悔していないか」と聞かれた時、どんな感情が湧いてくるかは分からないものなのでしょうね……。
子供はあなたの所有物じゃない – クジャク
貧乏な巧藝
朝――台北市立維徳高校の生徒たちは一列に並び、荷物検査と身体検査を受けて学校に入っていきます。
クジャクが入っている大きな鳥かごの前では、派手なスーツを着た校長が興奮気味にひとり語りしていました。
一流大学に入る生徒を12人選ぶマルチスター計画、最低でも120人が大学入試で70点以上を獲得すること……。
生徒たちは学習に必要ない小説やカエルのおもちゃを取り上げられ、粛々と校舎へと続く道を並んで歩いていきます。
今学期の保護者同意書には、校外での買い物禁止や趣味のものの持ち込み禁止の他に、放課後のスポーツ禁止というものまでありました。
劉巧藝は維徳高校の女子生徒です。お金持ちの子息が集まる学校で、巧藝は少し浮いた生徒でした。
人目を避けて取り出したお弁当箱の中には、コンビニやスーパーで売っている市販のおにぎりがふたつ入っています。
自宅は狭いので、幼い弟の巧新と同じ部屋で過ごしています。部屋で遊ぶ巧新にイライラしながら、巧藝は女友達の楽楽の誕生日プレゼントを作っていました。
手先の器用な巧藝は切り絵で写真フレームを作り、それとスマホで撮影した楽楽の写真を組み合わせているのです。
巧新から、楽楽は買ったものを渡してきたのだから巧藝もプレゼントを買えばいいと言われ、巧藝はいらだつのでした。
クジャクの声
巧藝の父はタクシー運転手をしていますが客が取れず、1日1200ドルしか稼げないと妻にぼやきます。
おまけにタクシーから降りてゴミを公演のごみ箱に詰め込んでいたところを警察に発見され、取り締まられてしまいました。
巧藝は悩んだ末、学校からの書類に父の職業を「自営業の運送業」と書きます。そして何でも使い回すアイデア主婦の母は「生活創作家」です。
巧藝と弟の巧新は、父のタクシーで登校しています。巧藝は誰も道を通っていない隙を見つけて、タクシーから降りていきました。
巧新は周りに気を遣って生きなければならない巧藝を見て、自分は維徳ではなく体育学校に行きたいとつぶやくのでした。
巧藝がクジャクのかごの前で楽楽へのプレゼントである切り絵と写真を組み合わせて作ったフォトブックを見ていると、突然男の笑い声が聞こえてきます。
「これでもプレゼント?」あざける声に驚いた巧藝は声の主を探しますが、その場にはクジャクしかいませんでした。
恐ろしくなった巧藝は荷物を持ってすぐにその場から立ち去っていくのでした……。
そして校長先生が主催した楽楽の誕生日会が開かれます。楽楽は事業提携者になる人物だということで、扱いが特別なのです。
楽楽は参加した生徒たち全員にマカロンを配りました。今回は買えないものということで、生徒たちは盛り上がります。
母の虚勢
お茶摘みをして働く巧藝の母は、身なりを整えて保護者会に向かいました。議題は国際遺伝子操作機大会についてです。
MIT主催のこの大会は、世界中の高校が参加するものです。過去の参加者は皆一流大学に入っていると聞き、巧藝の母は目を輝かせました。
一方、楽楽の誕生日会では生徒たちが次々とプレゼントを渡していきます。高価なものばかりで、巧藝の顔は引きつりました。
しかし繊細な切り絵を見た生徒たちは盛り上がり、巧藝の自作だと知って「才能がある」と褒めてくれるのでした。
保護者会にて、巧藝はポスターやウェブサイトをデザインする芸術グループに選ばれていると聞いた母は喜びます。
生徒たちは、芸術品の中にはお金で買えないものもあると知っています。巧藝の誕生日が来週の5月1日だと知り、楽楽はお返しに悩みました。
笑顔で担任の話を聞いていた巧藝の母でしたが、大会参加にあたり飛行機代・ホテル代・顧問の出張費用も保護者が出すと聞いて驚きます。
20万台湾ドル、およそ80万円以上を保護者が負担しろと言うのです。巧藝の母は、顧問の費用は学校負担にしてもらえないかと発言しました。
失笑が広がる中、担任は凄腕の一流顧問を雇用するためお金がかかるのだと説明しました。
他の保護者たちに貧乏であることが知られないようにと、巧藝の母はお金に困ってなどいないという態度を取るのでした。
タイルイの悩み
巧藝の母は、まだ小学4年生の巧新を維徳予備校に入れることにしました。将来のことを考えてのことですが、巧新は不満気です。
巧藝の父は、中学からずっと成績トップの巧藝を海外大会に参加させなくてもと口答えしますが、母は折れる気などありません。
父が毎週1200台湾ドルを宝くじに費やしていることが気に入らないのです。運のない父に当たるわけがないと母は毒づきました。
母がいつもと同じ炒飯を作っている頃、巧藝に楽楽からメッセージが届きました。日曜、タイルイに行かないかと……。
タイルイはフランス料理のお店です。巧藝はお小遣いが足りないため、仕事に出る前の母に追加でもらうよう頼みました。
何とか200台湾ドルをもらえたものの、手持ちの300数十台湾ドルと合わせてもタイルイでの食事は厳しそうです。
巧藝がクジャクの鳥かごの前で落ち込んでいると、また声が聞こえてきました。
「なぜ うちは貧乏なの? この家族に生まれなければよかった。――図星だろ?」
脅えて立ち去ろうとする巧藝を呼び止めたクジャクは、当たり前のように巧藝と会話してみせます。
目の前の現実を信じられない巧藝でしたが、クジャクの「手を貸そう」という言葉に足を止めるのでした。
巧藝の色の行方
「お金がいる時は物と交換してやる。簡単だ。君だけに少し、少しだけ、ほんの少し……」そう言ってクジャクは笑います。
帰宅した巧藝は、靴の中に1000台湾ドル札が入っているのを見て喜びます。4000台湾ドルのコース料理を食べられることになったのです。
フランス料理店タイルイでクラスメイトの楽楽と小佩がサプライズパーティーを開いてくれて、巧藝は喜びます。
しかし、巧藝の目にはケーキの鮮やかな色が見えなくなっていました。何度も目をこする巧藝ですが、ケーキはモノクロのままでした。
帰宅すると、母からの浮かれたお祝いメールと、600台湾ドル勝ったという父からのケーキが待っていました。
弟の巧新は先に一口食べ、先に寝てしまったようでした。巧藝は家族の優しさに顔をほころばせて、フォークを手に取ります。
翌日、色に対する繊細さを買われている巧藝は、美術教師から前に出て森の木々を描くよう指示されました。
しかし、巧藝はいつものように鮮やかな色を作ることができません。巧藝はやっと、この異常はクジャクのせいだと気付きました。
抗議しにきた巧藝に、クジャクは悪びれることなく巧藝の頭の中にあった色を使って羽を美しい色にしたと答えます。
色を見分けられなくなって困る巧藝に、クジャクは明日やってくる転校生を連れてくるようにと指示するのでした。
欲しいもの
翌日、クジャクの予言通り転校生がやってきました。施宇婕と名乗ったその女子生徒は、バスケットボールを持った快活な子でした。
公立校のクラスでトップだった宇婕を、巧藝は空いていた隣の席に座るよう導きました。
クラスでトップだったという宇婕ですが、試験に出ないことは一切教えない維徳高校のやり方に不満を持ちます。
休み時間に持参したバスケットボールを使って体を動かしていた宇婕は、校長先生から校則違反を見とがめられます。
落ち込む宇婕に声をかけた巧藝は、自然な流れで宇婕をクジャクの前へと連れてくることができました。
テストが終わり、公立校でトップだったはずの宇婕は最下位となりました。それを見た巧藝は、宇婕からそっと離れました。
そして巧藝は、学校が配った書類の中にある「ドナー名」と書かれた欄が気になります。
次のテストが終わり、宇婕は成績トップとなりました。今までずっとトップだった巧藝は、そっと目を伏せます。
朝会が開かれ、校長先生が現れました。一流校の建国高校ではなく維新に入る生徒には100万台湾ドルが進呈されると校長は語ります。
足を引きずって出てきた校長を見た巧藝は、校長もあのクジャクに何かを渡しているのではないかと勘付きました。
声が、舌が
朝会の中で、50万台湾ドルを寄付した生徒として巧藝は楽楽たちお金持ちと共に呼び出されました。
その頃、クジャクは特に必要とはしていなかったけれど、校長から自由に動く足をもらって喜んでいました。
そしてある日、巧藝や宇婕たちが体育の授業でバトミントンをしている時、クジャクの鳴き声が聞こえてきました。
鳴き声を聞いた宇婕は真っ青な顔をして身を屈めます。そして次の瞬間、クジャクと同じ声で鳴き始めました。
その姿を見ていた巧藝は、弾かれるように体育館を飛び出しました。そしてグラウンドに生えている雑草をもいで食べ始めます。
さらに、草の間にいる虫までもが美味しそうに見えてきた巧藝は、興奮しながら虫を口へと運びました。
巧藝を追ってきたクラスメイトは、嬉々として虫を食べている巧藝を見て悲鳴を上げると逃げ去っていくのでした。
帰宅した巧藝はカエルを口に運びます。しかし、はたと我に返って必死で歯磨きをはじめました。
そこにやってきた巧藝の父は、キッチンの鍋の中に生きたカエルが入っているのを見て驚きます。
「私のじゃない、クジャクのよ」――その言葉を聞いて、巧藝の父は維徳高校にいるクジャクのもとへと急ぐのでした。
母と娘の対立
クジャクは当たり前のように巧藝の父に話しかけます。父は、巧藝に手を出すなとクジャクに警告しました。
しかしクジャクは、全員に声をかけているのだ、それに応えたのは巧藝自身なのだと言い、父までもを取引相手にしようとします。
父は、巧藝が絵を描けなくなっていると知り心配します。父は、巧藝が安全で健康でいることが一番だと語りました。
巧藝は登校して自作のウェブサイトを見てもらいますが、それは目がチカチカするような配色のものでした。
担任はそれを見て、維新高校を代表する作品を任せるわけにはいかないと巧藝を出場メンバーから外すことにしました。
ふと机の上に目をやると、そこには宇婕の休学申請書がありました。その理由は「病気」とのことでした……。
国際大会に出られなくなったことを母に伝えたい巧藝ですが、必死で茶摘みをしている母は電話を取ってくれません。
やっと電話を取った母が聞いたのは、維新予備校から巧新が1週間も休んでいるという知らせでした。
公立中学卒の自分たち夫婦は非行には走らなかったけれど、いい学校に進まなかったせいで苦労していると母は語ります。
しかし巧藝は、維新に進学して家族がバラバラになるなら行かない方がいいと母に反対するのでした。
無条件
巧藝の母は、巧藝の弟の巧新に大安にある星明中学に入るよう勧めます。何を言われても母は進学重視の姿勢を変えませんでした。
さらに母は引っ越ししようと考え、1487台湾ドルの部屋を契約しようと考えます。父は反対しますが、母は頑固でした。
都市再開発もあると聞き、数年後に売れば利益を得られると母は乗り気でした。巧藝はうんざりして内見の場を後にします。
巧新は意見を聞いてくれない母にうんざりしていました。そして、体育学校に行く夢を捨ててはいませんでした。
周りの運動が得意な仲間たちのように人人体育学校に行きたいと語る巧新は、クジャクに願いを叶えてもらおうとします。
すると「普通になりたい」という珍しい願いを持つ巧新に興味を持ったのか、クジャクは無条件に願いを叶えると言ってきました。
「君は家に帰れば分かる」――クジャクの不吉な言葉を気にせず、巧藝と巧新は帰宅しました。
両親はまだ帰っていません。連絡もつかなかったので、巧新は先に寝てしまうことにしました。
タクシーを運転していた父は、角から飛び出してきた車とぶつかります。しかし相手は急いでいるようで、父を先に行かせました。
働く母はどこか体調が悪そうです。そして父は客を乗せて走り始めました。後ろで男が車のナンバーを撮っていることにも気付かないまま……。
巧藝の選択
学校から帰宅した巧藝は、父がソファで眠りこけているのを発見します。父はひき逃げで罰金刑となり、3ヶ月の免許停止を食らっていました。
すぐに母と相談したい巧藝ですが、母は出ません。代わりに出たのは、竹東病院の救急病棟のスタッフでした。
茶摘みの最中に倒れた母は、救急に運び込まれたのです。医者は母に安静にするようにと命じました。
これで父に続き母も失業してしまいました。250万台湾ドルのローンも、大会費用の20万台湾ドルも支払えないと母は焦ります。
1千万の借金を抱えて生きる人生を後悔する母は、巧藝が将来の出世を賭けた国際大会に出ないと知り激高します。
家族の雰囲気は最悪でした。巧藝はすぐにクジャクのもとへと走ります。全ての原因はクジャクにあると考えたのです。
クジャクは高らかに笑い、家族を取るか学校を取るか選べと言ってきます。「学校一の人気者にしてやろう」と――。
貧しい家庭で息苦しく過ごす父母と弟……キラキラと輝く世界の中で優しい笑顔を向けてくれる金持ちのクラスメイト……。
悩んだ末に巧藝が出した答えは「両親を助けて。何でもあげる」でした。クジャクは念を押すように「何でも」の部分を強調します。
元に戻す
翌朝、巧藝の父が買った宝くじが当たりました。283万8255台湾ドルが当選したのです。
驚いた母は番号を確認します。そして、本当に当たったことを確認して両手を上げました。
学校の手洗い場で鏡を見ていた巧藝は、自分の目がおかしくなったことに気付きます。まばたきの時、鳥と同じ半透明の膜が目を眼球を覆ったのです。
泣き叫ぶ巧藝にクラスメイトが駆け寄ります。心配した楽楽を、他の生徒が巧藝から引き離しました。
帰宅した巧藝は部屋にこもりました。しかし父がクジャクのもとに行くと聞いて、止めるために部屋から出てきます。
巧藝の父は、完全に半透明の膜に覆われた巧藝の目を見て、クジャクが何かしたのだと直感します。
父は母と共にクジャクの前にやってきました。そして、金を返すから巧藝を元に戻すように頼みます。
クジャクは金はいらないと言い、母に対して「ビジネスをしよう」と維徳高校と巧藝を交換したいと言ってきました。
維徳を普通の高校にすると言うクジャクに、母は猛反対しますが父は乗り気です。同意書を燃やすよう、クジャクは言いました。
同意書を燃やせ
巧藝の肌からは羽毛が生えてきていました。どんどん鳥になっていくことに恐怖する巧藝は、しゃがみ込んで涙します。
巧藝の家では、誰が同意書を盗み出すかで家族会議が開かれました。しかし、巧藝の母はやめようと言い出します。
維新高校を出て一流大学に入れれば元に戻れるようにすると確証のないことを言い、母は何としても巧藝を進学させようとします。
巧藝は、クジャクにそそのかされた自分が物質主義のバカになったと感じていました。そして、同じような考えの母を説き伏せます。
鍵のありかや監視カメラの場所を知っている巧藝は、忍び込み方を弟の巧新に教えます。
貯蔵室にある同意書を盗み出すため、巧新は管理室から鍵を盗み出します。その時、巧藝は監視員に話しかけ注意を逸らしました。
無事に同意書を盗み出したふたりは父と合流し、同意書に火をつけました。皆がサインした同意書が、川辺で燃えていきます。
やり遂げた3人に対して、母は冷たいものでした。巧新は星明中学に通わせ、巧藝には新しい学校を見つけると言うのです。
変わらないもの
翌朝、維徳高校の前では生徒たちがデモを起こしていました。校則が変わったという警備員の言葉を受け入れる生徒はいません。
維徳のルールを守るため、今日からは自分自身で維徳のルールを守っていくと生徒たちは決めたのです。
巧藝は維徳が普通の高校になると思っていたのに、変わらなかったことに驚いて父と共にクジャクのところに向かいました。
巧藝の父はクジャクを問い詰めますが、クジャクは笑うだけです。人間の根性が悪いのだと、クジャクは高笑いしました。
巧藝の鳥化は止まりません。もはや両親の言い争いにも口を出さずに、黙々と羽毛をむしっていました。
そしてやおら立ち上がり「私たちはこの階級に生まれたの!」と母に訴えました。しかし母は、中流階級からのし上がるのだという意識を変えません。
反抗するようになった巧藝を見て、人生設計が狂ったのは全てクジャクのせいだと母は怒り狂いました。
包丁を持ってやってきた巧藝の母に、クジャクは甘くささやきます。母という存在が最も哀れなものだと――。
自分の人生を犠牲にして子どものため、家族のために尽くしてきた母に、クジャクはもう一度取引を持ちかけます。
クジャクの鳥かご
監視カメラ映像を確認していた監視員は、巧藝の母がクジャクの鳥かごの中に入っていくのを目撃します。
監視員はあわてて鳥かごに駆けつけましたが、そこに人の姿はありません。ただクジャクがぽつんと佇むだけでした。
監視員は首をひねりながら鳥かごを閉め、鍵をかけます。そしてその夜から、巧藝の母はいなくなってしまいました。
翌朝、鏡を見た巧藝は目を丸くします。目を覆っていた膜がなくなり、腕から生えていた羽毛も綺麗さっぱりなくなっていたのです。
驚いた巧藝は父と弟の巧新を呼びます。3人は巧藝が元に戻ったことで大喜びしました。
次の瞬間、父に電話がかかってきます。巧藝は話し込む父の姿を見て、何が起きたのだろうと不思議そうな顔をするのでした。
そして1年後――維徳高校の校長先生はもはや自分の足で歩くことすらままならなくなっていました。
そして巧藝と父、弟の巧新は、クジャクの鳥かごの前に座っていました。新入生がひとりもいない維徳高校で、校長は弁舌を振るいます。
鳥の鳴き声しか出せなくなった宇婕は、病院で発生の練習をしていました。しかし、いまだ鳥の鳴き声しか出せていません。
地面の上に敷いたブルーシートの上で巧藝たち家族3人で鳥かごの前で食事をし、クジャクにもミミズを与えます。
その傍にある掲示板には、行方不明者の紙が貼ってありました。その一番上には巧藝の母を探すプリントが風にはためいているのでした……。
※トップ画像はNetflixから引用いたしました。
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