Netflix独占配信映画『ウィスパーマン』は、現在と過去とで共通する連続男児失踪事件を追う父と息子との物語です。

ミヅチ
ロバート・デ・ニーロの存在感はさすがの一言。複数の<父と息子>とが対比される作品ですが、残酷なまでの<母>の対比も見どころです!
Netflix映画『ウィスパーマン』情報
『ウィスパーマン』主なスタッフ
スタッフ
『ウィスパーマン』あらすじ
妻 レベッカを亡くしたトムは、8歳の息子 ジェイクと共に静かな町 ギャレトンへと引っ越してきました。ギャレトンでは、数日前にニールという8歳の男の子が失踪する事件が起きています。
ギャレトンでは、25年以上前にも男児が誘拐され殺害されるという事件が起きていました。その犯人<ウィスパーマン>を逮捕したのが、事件解決後に退官した元刑事 ピートです。
男児失踪事件を追う女性刑事 アマンダは、ウィスパーマン事件との共通点を発見しました。協力を求められたピートですが、ピートには事件に関わりたくない理由があったのです。
そんな中、ジェイクが失踪してしまいました。この失踪により、トム、ピート、アマンダ刑事の3人が奇妙な協力関係になっていきます。
ミヅチガタリ
日本において<児童がその保護者から性的虐待を受けている>という状況になると、娘とその父親との間に起きたものだと考えてしまいがちですよね。
日本において、性交を伴う性暴力を受けた未成年男性は人口のうち0.5%です。一方、アメリカでは7%となります。アメリカで性被害者となった未成年男子は日本の14倍ということです。
ヨーロッパにおいても、聖職者が大勢の男児に性被害を加えていた事件がありました。欧米において、男児が性的暴行の被害者となることは、日本よりもずっと多い出来事なのです。
物語の後半で明かされたのは、<ウィスパーマン>であるフランク・カーターが父親から性交を伴う性的虐待を受けていた過去でした。
しかし、現在の事件を起こした<ウィスパーマン>の息子 フランシス・カーターJrは、父親から直接的な性的虐待を受けていません。
カーターは<虐待の世代間連鎖>を避けるため、息子には手を出さなかったのです。カーターは、愛情のかけかたを誤って学習している事実を理解していたようです。
けれども、カーターは父からの虐待のことを隠して生きてきたため、適切なカウンセリングを受けていませんでした。そのため、息子に対する誤った愛情を抱くことは避けられなかったのです。
息子ができてしまったカーターは、かつて父が自分にしたような愛情表現――性交を伴う虐待を行いたいという欲求を抱くようになります。
息子には手を出すべきではない、だがこの欲求を抑え切れない――悩んだカーターが実行したのは、連続男児誘拐殺害事件でした。
カーターは、息子と同じ年代の男の子を誘拐し、性交を伴う虐待を行っていたのです。その様子を目撃したカーターJrは、歪んだ欲求を抱くようになりました。
ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、他人が暴力を振るわれる姿を見せることも、性行為を見せることも、児童虐待にあたります。
特に両親の性行為――特に一方的な性行為を見た場合は、性的行為に対して嫌悪感を抱いたり、逆に強い興味を持ってしまったりという影響が出るそうです。
しかし、カーターJrにはそういった影響は出ていませんでした。むしろ、愛されなかった実の息子である自分と、<愛情表現>を受ける誘拐された男児とを比較して苦しんでいたようです。
子供はよく<誤学習>をしてしまいます。例として、他人の気を引くために悪さをすることや、暴力によって希望を叶えることなどが挙げられます。
カーターJrは聡い子だったようで、父 カーターが息子に向ける愛情表現は性交渉なのだと見抜いていました。カーターJrにとっては、目の前で愛情をかすめ取られたような気分だったのでしょう。
成長したカーターJrが<父親に愛されなかったという心の穴>を埋めるために行ったことは、父との<同一化>でした。
同一化(identification)は、自分にとって重要な他者の性質や振る舞いを自分の中に取り込み、自分の一部のように感じることで不安や葛藤を和らげる防衛機制です。
引用:同一化(防衛機制)とは?具体例をわかりやすく解説
カーターは過去の傷を隠して、普通の人間として生きてきました。それをなぞるように、カーターJrも普通の人間として生きてきた時期があります。父子の接触がない間は、平穏でした。
父子が連絡を取り合うようになり、事態は一変します。孤独で暇を持て余したカーターは、息子をウィスパーマン2世にしようと企んだのです。
その理由は分かりません。考えられるのは、唯一自分と真剣に対峙してくれた元刑事 ピートとの再会を願ったため……でしょうか。
最終的に、カーターは逮捕された息子を殺害しました。もしかしたら、カーターは正しく愛せない自分を強く憎んでいたのかもしれません。
その思いに気付いたのは、父として、祖父として、正しく愛情を注ぐピートが目の前にいたためでしょう。カーターは息子を殺したのではなく、自分自身を殺したのかもしれません。
『ウィスパーマン』ネタバレと感想・考察
アンダーラインが引いてある役名をタップすると、キャストと簡単な役柄紹介が表示されます。
ギャレトンへ
森の中で、行方不明の少年 ニール・スペンサーの捜索が行われています。父は行方知れず、母は更生施設におり、祖母のもとで育った少年でした。
捜索に参加している女性刑事 アマンダ・ベックは、皆を呼び止めて指示を出します。ニール演:エグザビエル・モンタネスギャレトン署の管轄区で失踪した少年/8歳/父は不明、母は更生中は昨晩20時にベッドに入り、22時29分に祖母から通報が入っていました。
そのとき、参加していた刑事が何かを発見します。それは、ボロボロになった土まみれの服を着ている遺体でした。
それは、ニールとは別人の遺体でした。<彼>の遺体はすっかり姿を変えており、死後かなり時間が経っていることが見て取れます。
ニールくんは、複雑な家庭に育った男の子のようですね。これが誘拐犯の仕業ならば、祖母と二人きりで暮らす少年というのは、犯行を行いやすい相手と考えられます。
犯人の目論見通り、祖母は約2時間半の間、孫の姿を見ていませんでした。おそらく、普段から同様の生活をしていたのだと思われます。
ニールくんを先に寝室に向かわせ、祖母は残った家事を片付けていたのでしょう。そして、自分が眠る前に孫の寝顔を確認する――というのがルーティンだったのだと思われます。
犯人がそれを知っていたのだとすれば、誘拐はごく簡単に済ませられるでしょう。大家族や裕福な家庭の子を狙うよりも、労力が少なくて済む相手と捉えられたはずです。
中年男性 トム・ケネディは、8歳の息子 ジェイク・ケネディと共に自家用車で移動していました。トムの妻でありジェイクの母であった人は、病によってこの世を去ったのです。
家族を喪い二人きりになった父子は、母が育った静かな町 ギャレトンへと引っ越してきました。引っ越し先の一軒家に入ると、ジェイクは駆け出していきます。
ジェイクは、2階へ続く階段を見て立ち止まりました。尻込みしているジェイクを抱えて、トムは階段を上ります。
2階には、ジェイクの部屋がありました。大きな窓の枠には、鳥の羽根が落ちています。その羽根を拾ったジェイクは、それまでの脅えた態度ではなくなりました。
その後、ジェイクは新たな学校へと足を運びました。建物へと続く階段の前で、トムとジェイクとは、しばしの別れとなります。
26年4月6日から行方不明
ニール・スペンサー
学校の前にある立て看板には、すべてのお知らせを覆うかのようにニールくんの行方不明のお知らせが貼ってありました。
ニールくんは、2018年6月6日生まれの8歳――くしくも、ジェイクと同い年なのです。また、ニールくんの髪と目とはブラウンで、そこもジェイクと近しい要素です。
しかし、このお知らせをトムはまったく見ていませんでした。視界に入っていなかったのだと思われます。
学校の看板に大々的に貼ってあることから、ニールくんはジェイクが入学したばかりの学校に通っていたのだと考えられます。
また、ニールくん同様、ジェイクは父 トムとの二人暮らしです。その上、ジェイクの過ごす子供部屋は2階にあるため、父の目が届きにくい状態です。
連続する事件の被害者には共通点があることが多いことを鑑みると、ジェイクは現在、危険な状態にあると思われます……。
ウィスパーマン事件
トム演:アダム・スコット妻を亡くしたばかりの犯罪小説家/8歳の男の子 ジェイクの父はひとり家に戻ると、トム自身が執筆した犯罪小説を本棚に並べていきました。そして、ドミニク・バーネットからの返送依頼の封書を投げ捨てます。
返送依頼の封書の中に入っているものは、契約書や申込書など、相手に記入した上で送り返してほしい書類です。
トムは不機嫌そうに封書を投げているため、喜ばしい書類が入っているわけではなさそうです。おそらく、出版社との契約が終了した等のお知らせなのでしょう。
その頃、アマンダ刑事演:ミシェル・モナハンギャレトン署の女性刑事/少年失踪事件を追うはニール捜索時に発見した遺体の写真を見ていました。その遺体の頭部には布が巻かれており、髪の中には鳥の羽根が交ざっています。
「窓の鍵をかけ忘れると、彼がガラスをたたく音が聞こえる――」
ある男がアン・ヴォーグによる「ファンキー・ディヴァス」のカセットテープとプレーヤー、ショートパスタ、コーヒーをトレイに乗せて運んでいきます。
男はニール演:エグザビエル・モンタネスギャレトン署の管轄区で失踪した少年/8歳/父は不明、母は更生中を誘拐した犯人で、家の隠し部屋にニールを閉じ込めていました。ニールは男と会話し、絵を描きながら日々を過ごしているのです。
アマンダ刑事演:ミシェル・モナハンギャレトン署の女性刑事/少年失踪事件を追うは、記録保管室の奥へと入りました。ギャレトンでは、少年ふたりの遺体が発見された事件があったのです。
それらは<ウィスパーマン>の起こした事件でした。証拠物品の中にはティファニーによる「ふたりの世界」など1980年代のカセットテープが数本あります。
スティーブン・イーグル、クリストファー・ケヴァット、トニー・スミス――被害者となった男の子たちの描いた絵は、どれも陰惨なものでした。
トニーの絵の裏には、びっしりと文章が書かれています。「孤独で悲しくて憂鬱だと、ウィスパーマンがやってくる」という一文は、そこからの抜粋だったのです。
ダイアナ・ロスによる「イートン・アライヴ」のカセットケース背表紙には<Tony Smith – ce# 92-750>とラベルが貼ってありました。
ウィスパーマンは、誘拐した男の子と自分との会話をカセットテープに録音していたのです。絵を描かせていたのも、ウィスパーマンでした。
資料の中には、ウィスパーマンを捕らえた刑事 ピート・ウィリスの報道記事も差し込まれています。アマンダ刑事は、ピート演:ロバート・デ・ニーロ連続少年誘拐犯 フランク・カーター 通称 ウィスパーマンを逮捕した刑事に話を聞くことを決めました。
ウィスパーマンの証拠物品に入っていたカセットテープは、1980年代にリリースされたものばかりでした。
被害者の男の子 トニー・スミスとの会話を録音するために用いたカセットテープは、1985年に発表されたアルバムだそうです。
そして現在、誘拐されているニールとの会話をカセットテープに録音している犯人の男がいます。ウィスパーマンと同一人物かどうかは不明です。
犯人の男が使っていたカセットテープは、1992年にリリースされたものです。ウィスパーマンが80年代のカセットテープにこだわりを持っていたとするならば、別人の可能性があります。
また、ウィスパーマンは男の子に絵を描かせるとき、太いクレヨンを用いていました。一方、今回の犯人は細身のクレヨンを用いています。
犯行したタイミングが違うから変わってしまった――とも考えられる変化です。しかし、報道で得られる情報しか知らない人の模倣とも考えられるのです。
見覚えのある犯行
「数日前、ヒルクレストでニール・スペンサーが失踪し、家族や友人、地域を調べて、新しい発見がありました。一ヶ月ほど森に放置された少年の遺体です」
アマンダ刑事演:ミシェル・モナハンギャレトン署の女性刑事/少年失踪事件を追うが差し出した写真を見たピート演:ロバート・デ・ニーロ連続少年誘拐犯 フランク・カーター 通称 ウィスパーマンを逮捕した刑事は、すぐに事態を察しました。そして、終身刑でローウェイに身を置くフランク・カーターが犯人であることはないと告げます。
けれども、アマンダ刑事は退きません。ニール演:エグザビエル・モンタネスギャレトン署の管轄区で失踪した少年/8歳/父は不明、母は更生中は失踪前「窓の外でささやく声がした」と祖母に告げていたのです。ピートは、25年前に退官した身であることを念押ししました。
アマンダ刑事は構わず、共犯者がいた可能性をピートが挙げていたことに触れます。また、ウィスパーマンであるカーター演:アダム・スコット連続少年誘拐・殺人犯/終身刑/ピートにより逮捕されたが唯一面会する相手がピートであることも伝えました。
ピートは、アマンダ刑事を追いやると、一枚の写真を手に取ります。そこには、亡き娘とその孫息子であるジェイク演:アクストン・ポルト8歳/トムの息子/ピートの孫の姿がありました。
ピートはおそらく、ジェイクの母――トムの妻である女性の父親なのだと思います。トムは、ギャレトンは<お母さん>が育った町だと紹介していました。
写真に写っているジェイクは今よりもだいぶ小さいですし、母親も健康そうです。数年前の写真なのでしょう。その頃は、頻繁に父娘のやりとりがあったようですね。
けれども、トムとジェイクとがギャレトンに引っ越してきてから、ピートとは接触していません。ここの関係には、何か複雑なものがあるのかもしれません。
敏腕刑事だったはずのピートですが、25年前に退官しているそうです。25年も前となると、娘がまだ小さな頃――もしかしたら、まだ赤ちゃんのときでしょう。
それだけ古い事件だとすれば、現在中年のトムがウィスパーマンを知らないことは当然ですね。
学校から戻ったジェイク演:アクストン・ポルト8歳/トムの息子/ピートの孫は、リビングで父 トム演:アダム・スコット妻を亡くしたばかりの犯罪小説家/8歳の男の子 ジェイクの父と話しています。学校で友達はできたものの、ジェイクは男友達ではなく、母親を欲していました。
「想像するのは構わない。だが、生きている人にも機会を与えてみて。……いいね?」
犯人の男は、内股で階段を上っていきます。そして再び、ニール演:エグザビエル・モンタネスギャレトン署の管轄区で失踪した少年/8歳/父は不明、母は更生中を閉じ込めている部屋に入っていきました。そして、カセットテープにニールの声を録音します。
そのカセットテープは、テレビ局 WRZRのニュース担当部署へと送られました。その頃、トム演:アダム・スコット妻を亡くしたばかりの犯罪小説家/8歳の男の子 ジェイクの父は普段より遅れて学校へとジェイク演:アクストン・ポルト8歳/トムの息子/ピートの孫を迎えに行っていました。
ジェイクは、クラスの男子に母親の遺品<スペシャル・パック>を奪われて、思わず殴ってしまったそうです。教師は、ジェイクに謝罪文を書かせようとしました。
しかし、トムは断固として拒否します。暴力を悪いことと言うのならば、いじめも同様に扱うべきだと主張したのです。
トムは、ジェイクが自ら妄想の世界に逃げ込んで、現実から目を背けて生きることには反対していました。
しかし、クラスでいじめられているというのならば、そんな相手との付き合いは続ける必要などないと考えているようです。その考えを、堂々と教師の前で告げました。
作家ゆえか、身体的な暴力と、精神的な暴力とを、差をつけることなく考える思考が身についているようですね。そんな父に、ジェイクは誇りを感じたようでした。
二人きりになった父子が絆を深める一方で、誘拐犯の男は大胆な動きをします。テレビ局に、わざわざ誘拐犯である証拠を送り付けたのです。
侵入者
WRZR TVには、アマンダ刑事演:ミシェル・モナハンギャレトン署の女性刑事/少年失踪事件を追うが向かいました。送られてきたのは、ニール演:エグザビエル・モンタネスギャレトン署の管轄区で失踪した少年/8歳/父は不明、母は更生中と誘拐犯との会話が録音されたカセットテープと、ニールの描いた絵です。
ニールは、両親が祖母のもとへ自分を置いていったことを納得できていないと語っていました。そして、祖母が死ぬこともまた、恐れていたのです。
ウィスパーマンは、誘拐した男の子に向かって小難しい話をしていました。大人でも聞いていてうんざりするような、個性的な例え話です。
一方で、今回の誘拐犯は、カウンセリングをするようにニールくんの本心を聞き出しています。一方的なウィスパーマンとは、まったく違うやりかたです。
ニールくんは、両親に置いていかれたという強い孤独感を抱えている子でした。誘拐犯にとっては、家を出たいという願望を持っているだけに、連れ出しやすい子だったでしょう。
アマンダ刑事は、ウィスパーマンの語り口を知っています。それと今回の誘拐犯との会話とを比べれば、まったくの別人であることは判断できるはずです。
しかし、ウィスパーマンと今回の犯人とが無関係か否かは分かりません。今回の犯人は話を聞き出すのがうまいので、その技術をウィスパーマンにも発揮していた可能性があります。
その夜、ジェイク演:アクストン・ポルト8歳/トムの息子/ピートの孫は物音を聞きつけて窓を開きました。窓は下から数センチしか開くことができず、懐中電灯を差し込んでも周囲はよく見えません。
「ドアを半開きにすると、すぐにささやく声が聞こえる。窓に鍵をかけ忘れると、彼がガラスをたたく音が聞こえる」
ジェイクは、一階のドアのポストから外を見ていました。ドアのすぐ外に何者かの手があったように、トム演:アダム・スコット妻を亡くしたばかりの犯罪小説家/8歳の男の子 ジェイクの父には見えます。トムはあわててドアを開き、何者かの姿を捉えようとしました。
けれども、風雨の中で<何者か>は姿を消してしまいます。トムは、ジェイクに自室に戻るように言い聞かせると、すぐに動き始めました。
ジェイクが学校に行ったあと、トムは家の中に防犯カメラを設置していきます。倉庫で作業していると、黒い服に身を包んだヒゲ面の男が襲ってきました。
あわてて追いかけたトムでしたが、半地下から続く階段に足をとられて転んでしまいます。通報後に訪れた警官からは、空き家の頃に泥棒や子供が侵入していたと告げられました。
その警官によって、倉庫の奥に隠し部屋があることが分かります。マットレスが置かれたはめ殺しの窓の部屋が、金属棚の奥に隠されていたのです。
鍵をつけたり、壁を塗り直したりすれば侵入者は防げると、警官は楽観的でした。まずは裏口に鍵をつけ、トム演:アダム・スコット妻を亡くしたばかりの犯罪小説家/8歳の男の子 ジェイクの父は小説の執筆を始めます。
けれども、タイピングしてしまうのは、亡き妻 レベッカへの想いでした。ため息をつきながら、こぼれた本心をバックスペースで消していきます。
倉庫の奥にあった隠し部屋は、ウィスパーマンのもの……なのでしょうか。金属の棚は重いものですが、相手が成人ならば、女性でも動かせないことはないと思います。
しかし、それが子供――特に10歳に満たない第二次性徴前の男の子ならば、動かすのは不可能でしょう。体が小さく、力も弱いため、閉じ込められたままになるはずです。
部屋に置かれているマットレスも、シングルかそれ未満のサイズに見えました。大人が寝たら、腕や足が飛び出してしまうでしょう。
もし、この家がウィスパーマンのものだったとすると、現在の誘拐犯――ウィスパーマンの共犯者あるいは模倣犯――は、この<家>に執着しているのかもしれません。
アマンダ刑事が知っているウィスパーマンの誘い文句を、ジェイクも口にしていました。そろそろ、ジェイクの身にも危険が迫っているようです。
ジェイクの妄想
「孤独で悲しくて憂鬱だと、ウィスパーマンがやってくる」
それは、子供部屋に設置したカメラから聞こえてきた音声でした。この家には青い服を着た女の子がいる……その女の子は、床にいる男の子を怖がっているとジェイク演:アクストン・ポルト8歳/トムの息子/ピートの孫は語ります。
トム演:アダム・スコット妻を亡くしたばかりの犯罪小説家/8歳の男の子 ジェイクの父/ピートの息子は、ジェイクの妄想が激しくなっていることにあせりました。思わずジェイクを怒鳴りつけ、その夜は眠りにつきます。しかし、その眠りは聞き慣れない音により邪魔されました。
鍵をかけていたはずの裏口ドアが完全に開いています。そして、家のどこにもジェイクの姿がありません。家の外の道にも、ジェイクはいませんでした。
アマンダ刑事演:ミシェル・モナハンギャレトン署の女性刑事/少年失踪事件を追うが、トムのもとにやってきます。マナスクアンから引っ越したばかりで、友人はいないとトムは答えました。けれども、防犯カメラには、自ら出ていくジェイクの姿が残っています。
トムは、ジェイクと血の繋がりのある家族であるピートに連絡しました。喫茶店に呼び出されたピート演:ロバート・デ・ニーロ連続少年誘拐犯 フランク・カーター 通称 ウィスパーマンを逮捕した刑事/トムの父は、顔面蒼白なトムを心配します。
ウィスパーマンを逮捕したことで警察への影響力を持つピートの力を借りるため、トムはわざわざ足を運んだのです。父親としては最悪でも、刑事の腕はいいからです。
レベッカが亡くなって以降、ピートはトムに連絡を取れずにいました。その謝罪はどうでもいいから、孫であるジェイクを発見するようにとトムは迫ります。
4月10日、ジェイクの失踪が警察に記録されました。ニールの前に失踪したスティーヴィ・グラントは里親家庭に育った男の子です。
誘拐された三人の男の子たちの共通点は、皆、家から出たいと思っていたことでした。誘拐犯はそれを分かっていて、三人を選んだのです。
現在は2026年4月10日と考えていいでしょう。スティーヴィの失踪年月日が2026年8月10日となっていましたが、単純なミスなのか何かの伏線なのか……。
それはそうと、ジェイクが言っている妄想に、少し気になるところがあります。ジェイクは<床にいる男の子>を怖がっている<青い服を着た女の子>がいると言っていました。
女の子に関しては、現在の事件にもウィスパーマンの事件にも関わっていないので、まったく意味不明な状態です。
一方で<床にいる男の子>は、なんとなく察しがつきます。この家の倉庫は半地下にあり、その奥の部屋に誘拐された男の子が閉じ込められていたと考えられます。
そうなると、この家の一階以上に人がいたとき――地下倉庫の中に人がいると知らなければ、階下から響いてくる男の子の声は恐ろしいものとして聞こえるでしょう。
もしかしたら、ウィスパーマンを気取る誘拐犯がこの妄想をジェイクに吹き込んでいるのかもしれません。<いる>と言われ続ければ、信じてしまうのかも……。
そして、トムとピートとが実の親子であることが分かりました。レベッカは疎遠になった父子とを繋いでおくために、一生懸命に橋渡しをしていたのでしょう。
レベッカが病気になったことで、父子の再会も有り得ました。しかし、その機会すら逃したピートは、孫のジェイクに会う前に誘拐されてしまったのです。
ドミニク・バーネット
度々トム演:アダム・スコット妻を亡くしたばかりの犯罪小説家/8歳の男の子 ジェイクの父へと送られてきていたのは<犯罪歴がある人向けの求人情報>でした。犯罪発生現場となった自宅に戻れない中、トムはその封書の宛先を調べてみます。
それは、住居侵入と警官への暴行とを行ったドミニク・バーネットでした。空き家になる以前、家に住んでいたのはローウェイの刑務所にいた犯罪者だったのです。
7年前に出所したドミニクは刑務所でウィスパーマンと接触していたかもしれないと、トムはアマンダ刑事演:ミシェル・モナハンギャレトン署の女性刑事/少年失踪事件を追うに連絡します。ドミニクはギャング<ブリック・スクワッド>のパシリでした。
ギャングの拠点はリグリー公営住宅です。また、ジェイクが失踪したと気付くまで、トムは6時間を要していました。ピート演:ロバート・デ・ニーロ連続少年誘拐犯 フランク・カーター 通称 ウィスパーマンを逮捕した刑事は現場に入り、アマンダ刑事からあらゆる情報を集めています。
それでも、ウィスパーマンその人とは会いたくないようでした。妻を6時間拘束されても意に介さなかったカーター演:アダム・スコット連続少年誘拐・殺人犯/終身刑/ピートにより逮捕されたには人間性が欠如していると、ピートは語ります。
トムは、大家であるシアリング夫人のもとを訪ねていました。ドミニクは、シアリング夫人の親戚で、半年分の家賃を踏み倒して出て行った問題児だと判明します。
ドミニクの彼女はウィグリーパーク公営住宅C棟に住むティファニーでした。それを聞いたトムは、すぐにその地へと向かいます。
C棟で薬物の売人に襲われていたトムのもとに、ピートが現れました。ピートは雑談を試みますが、トムは事件のことだけを話すよう強いてきます。
ピートは、カーターに人生や家族を壊されたとして、再会を固辞しました。そんなピートに、うまくいかなかったことを誘拐犯のせいにするなとトムが怒ります。
ウィスパーマン逮捕によって時の人となった父のことを、おぼろげながらトムは記憶しています。それくらいの年齢のときに、ピートは刑事人生を懸けて捜査に当たっていたのです。
それが原因で、家族の絆が壊れてしまったのだと、ピートは考えていました。人間性が欠如しているカーターと対峙し続けたがゆえに……。
もちろん、それは家族の想いが弱まる原因のひとつとなったでしょう。けれども、幼い息子を抱える父親だからこそ、まだ生きている最後の被害者を救いたいと思ったのでしょう。
カーターの妻を6時間に渡って問い詰めたことも、カーターに迫るための一手だったはずです。そうまでしないと、追い詰められない相手だったのです。
そこは、大きくなったトムはしっかりと理解しています。史上最悪の誘拐殺人犯を逮捕した父が、立派な刑事であることは認めているのです。
しかし、立派な刑事であることを優先したがゆえに家族をないがしろにしたのは、ピート自身の意思によるものである――とトムは考えているようです。
時間は誰に対しても平等です。不平等で不公平な世の中ですが、時間だけは同じように過ぎていきます。
家族に対して使う時間を削って、ピートはカーター逮捕に動きました。カーターがピートの家族へと悪意や攻撃を向けたわけではありません。
ピートがピート自身の意思により、家族よりもカーター逮捕を優先したのだ――というのが、トムの理論です。
一方、カーターが人間性に欠けた人物でなければ、そこまで時間をかけずに逮捕できた――つまり、カーターのせいで家族の絆が壊れたのだ――というのが、ピートの理論です。
どちらの考え方も間違ってはいないため、平行線をたどるしかないところがつらいですね。
孤独なカーター
逮捕されたカーターの精神鑑定を行ったのは、シャルマッツ博士でした。次はシャルマッツ博士を訪ねようと考えていたアマンダ刑事演:ミシェル・モナハンギャレトン署の女性刑事/少年失踪事件を追うに、連絡が入ります。
池から上がったのは、ニール演:エグザビエル・モンタネス遺体で発見/ギャレトン署の管轄区で失踪した少年/8歳/父は不明、母は更生中の遺体でした。ウィスパーマンの犯行同様、顔に布がかぶせられています。そして、絞殺前に爪を切るのも同じでした。
けれども、ピート演:ロバート・デ・ニーロ連続少年誘拐犯 フランク・カーター 通称 ウィスパーマンを逮捕した刑事には違和感があります。一般に公開されていない爪の件まで同じならば……なぜ今になって犯行を再び行うようになったのだろうか……。
その頃、ニールがいた部屋にはジェイク演:アクストン・ポルト8歳/トムの息子/ピートの孫/青い服の女の子が見えるが閉じ込められていました。その傍らには、青い服を着た女の子が寄り添っています。
誘拐犯は、指紋をつけないよう青いビニール手袋をつけて、カセットテープを出し入れしました。そのテープには<JAKE>と赤字で記されています。
ウィスパーマンも、現在の誘拐犯も、新しい<獲物>を捕まえる前に、以前の<獲物>を処分しているのかもしれません。
監禁部屋はひとり分、世話をしたり録音したりするにも、複数の男の子を相手にできるだけの余裕はないのでしょう。
ウィスパーマンの犯行を表に出ている情報以外にもよく知っているとなると、カーターに近しい人物か、もしくは警察関係者が犯人ということになりますね。
基本的に、こういうときに警察関係者を除外するのは悪手です。半分とまではいきませんが、それなりの確率で警察関係者が犯人である話はあります。
一方で、事前に絞殺すると決めているのであれば、被害者の爪がのびていると危ないというのは誰にでも分かることです。最悪の場合、犯人のDNAが残ってしまいます。
犯行に際し<したほうがいいこと>がかぶっている場合よりも、<しなくてもいいこと>や<しないほうがいいこと>がかぶっているほうが、より引っかかりますよね。
自分の声を録音するというのは、明らかに<しないほうがいいこと>です。それをわざわざマスコミに送付することも、絵を添付することも……。
ところで、ジェイクに見えている青い服の女の子の姿が視聴者にも共有されましたね。イメージではワンピースだったのですが、ジーンズ姿でした。アクティブです。
そして、ジェイクと同い年か少し年上と見られる青い服の女の子は、かなり近い距離でジェイクを見守っていました。一体何者なのでしょうか……。
ピート演:ロバート・デ・ニーロ連続少年誘拐犯 フランク・カーター 通称 ウィスパーマンを逮捕した刑事とアマンダ刑事演:ミシェル・モナハンギャレトン署の女性刑事/少年失踪事件を追うとは、カーター演:アダム・スコット連続少年誘拐・殺人犯/終身刑/ピートにより逮捕されたに接見しに行きました。ピートは、親しげに<フランク>と話しかけました。25年以上刑務所にいるカーターですが、反省はしていないようです。
そんなカーターに、アマンダ刑事は模倣犯が出てきて<神話を穢している>と告げました。けれども、カーターはアマンダ刑事に返事をせず、ずっとピートに話し続けます。
ピートは、犯人に心当たりがあるようでした。それを知りたければ、カーターを裏切った妻と子供と、5分間だけ家族水入らずで過ごさせてほしいと言ってきます。
「パパみたいになりたい……まあ、そういうものさ。父親に愛されないと、父親を神格化する。彼女も誰の話か理解するさ、君が何者か」
ウィスパーマンによって最後に誘拐された男の子 トニー・スミスは、現在も発見されていません。警察は捜索をやめ、捜し続けているのはピートただひとりとなっているのです。
カーターは<父親に愛されないと、父親を神格化する>と言っていました。カーター自身も、その心境に心当たりがあるのかもしれません。
トムが執筆した小説に出てくる刑事が父 ピートに似ているというのは……微笑ましい話ですね。カーターは小説を読みながらほくそ笑んでいたことでしょう。
ところで、ピートは息子の書いた小説を読んでいないのでしょうか? 気付いていないだけですか?
そしてここで、衝撃的な事実が明かされました。ピートは人生を捧げてカーターを逮捕したものの、最後の被害者 トニー・スミスを発見できなかったのです。
トニーが生きていれば、今頃はトムより少し年上の中年男性になっているでしょう。遺体が見つかっていない以上、死んでいると確定することはできません。
カーターの口ぶりにより、カーターの息子が最も怪しい容疑者となりました。そして同時に、現在も発見されていないトニーも、容疑者となってしまいました。
ビクター
ジェイク演:アクストン・ポルト8歳/トムの息子/ピートの孫/青い服の女の子が見えるのところに、誘拐犯がやってきました。ジェイクは、壁に描いた<青い服の女の子>の絵を見ながら、なぜ父 トム演:アダム・スコット妻を亡くしたばかりの犯罪小説家/8歳の男の子 ジェイクの父は自分を信じなかったのかとつぶやきます。
ピート演:ロバート・デ・ニーロ連続少年誘拐犯 フランク・カーター 通称 ウィスパーマンを逮捕した刑事とアマンダ刑事演:ミシェル・モナハンギャレトン署の女性刑事/少年失踪事件を追うとは、過去5年分の記録をさかのぼり、刑務所に複数回やってきた人物を探しました。引っかかったのは、ノーマン・コリンズです。
ノーマン演:ハミッシュ・リンクレイター殺人犯の用いた物品を集める蒐集家は、ビクター・タイラーを訪ねるために向かったと答えました。殺人犯の用いた物品の蒐集家であるノーマンは、犯罪者の心境にも興味を持っているのです。
ビクターを訪ねて話を聞き出そうとしたとき、衝撃的なニュースが飛び込んできました。ジェイクの録音テープが届いたというのです。
それを聞いたトム演:アダム・スコット妻を亡くしたばかりの犯罪小説家/8歳の男の子 ジェイクの父は、ジェイクの言葉を聞いて落ち込んでしまいました。ピートは、誘拐犯によって言わされているだけだと、トムを慰めます。
そして、カーターはビクターを通して外部と連絡を取っている事実をつかんだと、ピートは告げます。使い捨て携帯電話を使って、現在の犯人と繋がっていたと考えられます。
ビクターは小児性愛者のため、ほかの囚人たちから暴力を振るわれる立場にありました。そこから守ってくれていたのが、カーターだったのです。
トムは、ジェイク演:アクストン・ポルト8歳/トムの息子/ピートの孫/青い服の女の子が見えるのことを思うあまり荒れていました。階下で倒れた母 レベッカを見てから階段を上れなくなったジェイク……レベッカの遺品を持ち歩いていたジェイク……。
トムがジェイクのことを想うのと同じように、ピートもトムのことを想っていたことを、トムはようやく理解します。アルコールを絶った理由が、息子であることも知りました。
その夜、トムはある手紙を見つけます。カーター演:アダム・スコット連続少年誘拐・殺人犯/終身刑/ピートにより逮捕されたからピートに宛てた手紙でした。そこには<トミーを一緒に育てよう>と記されています。
刑務所内での人間関係を探った結果、カーターが外部と連絡を取る手段を持っていたことが分かりました。
カーターは刑務所にいながら、実行犯に指示を出すことで<誘拐殺人事件の黒幕>として暗躍していた――ということでしょうか。
そうは言っても、誘拐も殺人も、思いつきでできることではありません。それも連続となれば、かなりの賢さとあくどさがなければなりません。
そんな人材をどうやって見つけたのか……いや、見つけたのではなく、育てたのかもしれません。誘拐は、最初からそのために行っていたのかもしれませんね。
そして、カーターを逮捕するという目的を果たしたあとも、ピートはカーターと連絡を取り続けていたようです。あの手紙の量は、逮捕までの時間だけでは釣り合いません。
その手紙の中で、カーターは<トミー>――つまりピートの息子 トムに強い感情を抱いていました。ピートだけでなく、その息子にも興味を持っていたのです。
ピートにとって<最後の少年>は未発見の男の子 トニー・スミスですが、カーターにとっての<最後の少年>はトムだったということでしょうか……。
床の下の男の子
アマンダ刑事演:ミシェル・モナハンギャレトン署の女性刑事/少年失踪事件を追うが、クエーカー教徒の礼拝集会から出てきました。トム演:アダム・スコット妻を亡くしたばかりの犯罪小説家/8歳の男の子 ジェイクの父は父 ピート演:ロバート・デ・ニーロ連続少年誘拐犯 フランク・カーター 通称 ウィスパーマンを逮捕した刑事とウィスパーマンであるカーター演:アダム・スコット連続少年誘拐・殺人犯/終身刑/ピートにより逮捕されたとの手紙を、アマンダ刑事に見せます。
神の前だからとアマンダ刑事が席を外した瞬間、置き忘れられたメモにトムが飛びつきました。そこには、ノーマン演:ハミッシュ・リンクレイター殺人犯の用いた物品を集める蒐集家がアライアンス通り402番地に住んでいると書かれています。
トムはすぐにノーマンの邸宅に向かいました。家から出てきたノーマンは、車に乗ってどこかへと出かけます。トムは、その車を追いかけました。
ノーマンは、ジェイク演:アクストン・ポルト8歳/トムの息子/ピートの孫/青い服の女の子が見えるが通っていた学校の近くで車を停めました。トムは瞬間的に怒りを爆発させ、ノーマンを車から引きずり出して地面にたたきつけます。
<ウィスパーマン>と聞いた子どもたちがあわてる中、ひとりの若い男が体を硬直させていました。彼は表情も引きつらせて、誰よりも脅えた様子を見せます。
トムは、刑事のメモを盗み見るわ、容疑者でもない相手をつけまわした挙句に殴りかかるわ、もう自分の人生などどうなってもいいと思っているのでしょうか。
そんな中、気になる人物が出てきました。20代くらいの男性が<ウィスパーマン>と聞いて、ほかの人物とはまるで違う反応を見せていたのです。
その恐怖に満たされた表情は、ウィスパーマンの被害者か、近親者くらいにしか出てこないもののように思えました。
被害者であるとするならば、最後の少年 トニー・スミスということになります。近親者であるならば、カーターの息子ということでしょう。
しかし……ウィスパーマンの息子がギャレトンに住み続けられるものでしょうか。私が同じ立場ならば、遠く離れた地でやり直す方法を取りますね。
ガーホルト通り13番地――トム演:アダム・スコット妻を亡くしたばかりの犯罪小説家/8歳の男の子 ジェイクの父の家の地下で目撃されたノーマン演:ハミッシュ・リンクレイター殺人犯の用いた物品を集める蒐集家は、取り調べを受けることになりました。けれども、犯罪に関与した直接的な証拠はなく、釈放となります。
むしろ、ノーマンを襲ったトムが注意を受けることとなりました。ジェイクに続く手がかりを失ったことで、トムは肩を落としてしまいます。
そんなトムの前で、ピート演:ロバート・デ・ニーロ連続少年誘拐犯 フランク・カーター 通称 ウィスパーマンを逮捕した刑事はカーターからの手紙を焼き捨てました。そこで冷静さを取り戻したトムは、ノーマンの行動には理由があるはずだと頭を働かせ始めます。
ノーマンが入っていったトムの家の地下倉庫には、隠し部屋があります。そこに入ったピートは、石畳が動くことに気付きました。その下にあった扉を開けると、小さな人骨がありました。
やっと発見されたトニー・スミスのほかにも、遺体がありました。壁に埋め込まれた遺体は、頭部を鈍器で殴られています。
その遺体は、前の住人 ドミニクでした。ノーマンの蒐集したひとつである金槌が、その凶器だったのです。ノーマンはドミニクに嘲笑われ、カッとなって殺害していました。
カーター演:アダム・スコット連続少年誘拐・殺人犯/終身刑/ピートにより逮捕されたと取引するため、ノーマンが売ったのは<ある人物>の情報です。けれども、ノーマンは情報を渡す前に自ら命を絶ちました。
ピートは<最後の少年>トニー・スミスの生存を信じて、カーター逮捕へと動いていました。しかし、それよりもっと前にトニーは命を落としていたようです。
トニーの遺骨を見ると、頭がとても大きく見えます。年齢が低ければ低いほどそう見えるものなので、トニーは小学校に上がる前の年齢だったのかもしれません。
そして、推測通り、トムが現在住んでいる家はウィスパーマンの犯行現場でした。おそらく、自宅でもあったのだと思います。
ジェイクが言っていた、<青い服の女の子>が語る<床の下にいる男の子>は、実在しました。そうなると<青い服の女の子>も実在の人物だった可能性があります。
しかし、カーターの言葉を聞く限り、カーターの家族は妻と息子のみです。女の子はいません。女の子の出どころがまったく分からないのは、以前と変わりません。
また、頭から消えかけていた犯罪者 ドミニクも遺体となって発見されました。ノーマンは繰り返し「子供は傷付けていない」と言っていましたが、事実でしたね。
正確に表現するならば「大人を殺した」ですが……それは資産家である以上、決して表には出せない情報だったのでしょう。空き家でなくなったことで、あせったのでしょうね。
ノーマンが売った情報によって実行犯を得たカーターでしたが、その実行犯について語るより前にノーマンが自殺してしまいました。なんということでしょう。
愛されなかった息子たち
ピート演:ロバート・デ・ニーロ連続少年誘拐犯 フランク・カーター 通称 ウィスパーマンを逮捕した刑事とアマンダ刑事演:ミシェル・モナハンギャレトン署の女性刑事/少年失踪事件を追うとは、カーター演:アダム・スコット連続少年誘拐・殺人犯/終身刑/ピートにより逮捕されたが知りたいと思う人物について考えをめぐらせます。そこでピーターが思い出したのは、トム演:アダム・スコット妻を亡くしたばかりの犯罪小説家/8歳の男の子 ジェイクの父の著作について語っていたことでした。
<父親の神格化>について、カーターは語っていました。カーターに愛されなかった息子 フランシス・カーターJrは、名を変えて暮らしています。
FBIの保護下にあるカーターJr演:オーウェン・ティーグジェイクを誘拐した犯人/父に憧れる殺人犯/ウィスパーマンであるカーターの息子を逮捕するため、ギャレトン署が動き始めました。その頃カーターJrは、丁寧にジェイクの爪を切っていました。
翌日、アマンダ刑事はシャルマッツ博士の自宅を訪ねます。応対したカーターJrは<ジョージ・キャリントン>と名乗りました。
カーターJrは児童心理学の補助教員だと告げ、ジェイク演:アクストン・ポルト8歳/トムの息子/ピートの孫/青い服の女の子が見えるとは関わっていないと話します。一方、ピート演:ロバート・デ・ニーロ連続少年誘拐犯 フランク・カーター 通称 ウィスパーマンを逮捕した刑事はカーターに会いに行っていました。
アマンダ刑事は、生まれ育ったフェアローンに伝わる言葉を口にします。それは、ウィスパーマンに誘拐された少年たちが聞いていた言葉でした。
ピートは、カーターが父親から性的虐待を受けていたことを言い当てます。それを息子にすることをためらった結果、男の子ばかり誘拐するようになったのです。
雑談の途中、何かを察したカーターJrは熱いお茶をアマンダ刑事にかけて、逃走しました。アマンダ刑事は管理の行き届かない家に違和感を覚え、捜索することにします。
ジェイクの名を呼びながら部屋を回っていると、ドラム缶の中に遺骨を発見しました。そのとき、ジェイクの叫び声がかすかに聞こえてきます。
アマンダ刑事は、屋根裏へと続く階段に気付きました。そのとき、後ろから襲ってきたカーターJrに不意を突かれ、ナイフを何度も突き立てられます。
意識が遠のくアマンダ刑事でしたが、目の前を通るカーターJrを前に気力を振り絞りました。自分の体からナイフを抜き、カーターJrの足を刺します。
<父親の神格化>について、カーターは自分が父である立場で語っていたのではなく、息子の立場から語っていたようですね……。
カーターは、未成年の頃に父親から性的虐待を受けていたそうです。虐待児の中には、虐待行為こそが愛情表現であると学習してしまう人が少なくないといいます。
カーターが大人になって息子をもうけたとき、その心にはちゃんと<息子への愛情>が芽生えていたようです。
しかし、カーターが実体験を通して学んだ<父から息子への愛情表現>は性的虐待でした。それが倫理的に誤りであることは、頭では理解できたはずです。
カーターの想いを倫理的に正しく出力するためには、誤った愛情表現を受け止めてくれる<息子の代替品>が必要だったのでしょう。
大人同士であれば、合意の上で特殊な行為をすることはできます。けれども、相手が未成年となると、性的接触は基本的にすべて違法となります。
そのため、家から出たいと願う子どもをそそのかして自宅に連れ込み、隠し部屋で誤った愛情表現を行うという行動に出たのでしょう。
おそらく、カーターJrはその行為を見てしまったのです。カーターは感情表現が直接的なので、行為の最中に息子の名を呼ぶこともあったと思われます。
上っ面の、通り一遍の愛情しか受け取ってこなかったカーターJrには<実の息子の代わりに別の男の子が父親からの愛を受けている>と感じられたのかもしれません。
そして、大人になった今――父と同じウィスパーマンとなることで、父と自分とを同一化させて自己肯定感を上げているのだと考えられます。
しかし、父から愛されなかった自分を捨てて、その父自身に自分がなったところで……なんの解決にもならないように思います。その父こそ、愛を受けてこなかった人ですからね……。
青い服の少女と
「行方不明のジェイク・ケネディを見ました。サセックス南、国道23号線で」
逃げ出したジェイク演:アクストン・ポルト8歳/トムの息子/ピートの孫/青い服の女の子が見えるを捕らえたカーターJr演:オーウェン・ティーグジェイクを誘拐した犯人/父に憧れる殺人犯/ウィスパーマンであるカーターの息子は、近付いてくる警察車両を遠ざけるため虚偽の通報をしました。パトカーが遠ざかっていくのを見て、カーターJrは次の作戦に移ります。
ピート演:ロバート・デ・ニーロ連続少年誘拐犯 フランク・カーター 通称 ウィスパーマンを逮捕した刑事は車を走らせながら、アマンダ刑事演:ミシェル・モナハンギャレトン署の女性刑事/少年失踪事件を追うに連絡を取ります。けれども、何度も刺されて動けないアマンダ刑事は電話に出られません。
次にピートは、トム演:アダム・スコット妻を亡くしたばかりの犯罪小説家/8歳の男の子 ジェイクの父に電話します。その頃、トムの家の地下倉庫にはジェイクを連れたカーターJrがいました。
トムは異変を察知し、地下倉庫へと急ぎます。ジェイクの叫び声を聞いて隠し部屋に入ろうとすると、ナイフを構えたカーターJrが襲いかかってきました。
ギリギリのところで、駆けつけたピートがカーターJrを撃ちます。しかし、カーターJrは興奮に任せてトムを殴り倒し、ピートにナイフを突き立てました。
逃げるよう言われたジェイクは<青い服の少女>を追って階段を駆け上がります。少女は、2階の奥にある柱の陰でしゃがみこんでいました。
ジェイクは、少女の隣にしゃがみこみました。そのジェイクを追って、カーターJrが2階へとやってきます。意識を取り戻したトムは、必死に妨害し続けました。
カーターJrは、2階にまでついてきたトムを何度も踏みつけます。ジェイクはあまりの惨状に叫び声を上げますが、トムはそこを動かないよう指示しました。
トムが動けなくなったことを確認したカーターJrは、ゆっくりとジェイクに近づいていきます。そのとき、たわんだ床がカーターJrの体重によって抜けてしまいました。
一気に胸まで落ちたカーターJrは、なすすべなく、そのまま階下へと落下します。全身を激しく打ったカーターJrは、そのまま起き上がることはありませんでした。
隠し部屋に入れられた少年たちは、皆、酸素不足による死を迎えていたのでしょうか……隠し部屋のブロックの下にある空間は、少年を殺すためのものだったようです。
一人ひとり絞殺していたカーターJrと違い、父 カーターには手を下す必要がなかったわけですね。そこに入れてしまえば、そのうちに死体となるのですから……。
カーターJrの最終目標が<父と同一化すること>ならば、いずれ必ず、トムの家の地下倉庫にある隠し部屋で犯行に及ぶ必要がありました。
その犠牲者となるのが、父を逮捕した男の孫であるというのは――カーターJrからすれば、運命的なめぐりあわせでしょうね。
その邪魔をしたのは、父と祖父――そして<青い服の少女>でした。ほかの誰にも見えていない、ジェイクだけが認識できる存在です。
しかし、その少女はジェイクの妄想によるものではないことが、今回はっきりしました。2階の床の一部がたわんでいることを、ジェイクは知らなかったのです。
8歳のジェイクの体重ならば、そこを移動してもなんの支障もありません。床が抜けそうだと把握していたのは、成人男性である父 トムひとりだけでした。
そして序盤のことを思い出すと――青い服の少女は、床の下の男の子を怖がっていました。まだ誰も、カーターとカーターJr以外は誰も知らない情報を知っていたのです。
いよいよ、この女の子は誰なのかという疑問が強くなってきましたね。明かされないまま終わったら、夜しか眠れないかもしれません。
後始末
事件のあらましを知った元祖ウィスパーマン――カーターは、アマンダ刑事へと手紙を送りました。
アマンダ
君とピートに感謝する。
友人 フランクより
刺された後遺症で体を引きずりながら、アマンダ刑事はその手紙に目を通しました。そして、なんとも言えない表情で視線を落とします。
カーターは、息子 カーターJrの独房へと入りました。そこで、カーターJrが望んだ<愛情表現>をすると見せかけて、その首をへし折るような強さで締め上げます。
ピーター・ウィリス
1955年~2026年
トロフィーの横には、ピートの写真が飾られていました。自分の心を守ってくれた<ミスター・ナイト>だと、ジェイクは絵に刻んでいます。
そののち、ジェイクは<青い服の少女>について明かしました。青い服にジーンズの、髪の長い少女は――母 レベッカだったのです。
トムは、ジェイクが見ていた昔の写真に目を通しました。そこには、青い服にジーンズを履いた10代のレベッカが写っています。
生まれ故郷に戻ってきたレベッカは、その頃の姿に戻ってジェイクを見守り、警告し続けていた――その事実を知り、トムは大きく息を吐くのでした。
青い服の少女は――皆さん予想していたことでしょう。ジェイクの母 レベッカでした。その姿が10代に戻っていたのは、10代を過ごした地に戻ったためでしょう。
レベッカ自身が幽霊となったことで、成仏できない……と言うと、キリスト教的には違いますね……この世に残ったままの魂を感知できるようになったのです。
レベッカは、そのものずばり、トニー・スミスの魂が地下倉庫の隠し部屋の奥に閉じ込められたままであることを伝えていたわけです。
そして、レベッカは時折、トムの傍にもいたようですね。2階の床がたわんでいて、成人男性が乗ったら危険だということは、トムの傍にいなければ気付けないことです。
カーターが感謝していたのは、息子 カーターJrを始末する機会を得たことでしょうか。息子に対してやりたいことは、性的虐待ではなく、その命を奪うことだった……?
カーターの心理は非常に複雑で分かりにくいため、カーターが欲望に駆られて行動したのか、息子の犯罪者としての未熟さに呆れて始末するに至ったのか、判断がつきません。
なんにせよ、この父子の間に理想的な愛情のやりとりは生まれませんでした。聴取を受けている母親の姿を見る限り、母親からもペット扱いされていたように思えます。
これは様々な精神疾患を持つ登場人物に対して思うことですが、何よりも、精神科とカウンセリングとに通うことが幸せへと進む道ですね……。
※トップ画像はNetflixから引用いたしました。
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