ドラマ『恐怖の劇場』はNetflixにて2019年からシーズン1が独占配信されている作品です。
台湾の出版社「鏡文学」の短編小説を原案としており、シーズン1では30分程度の短編SFスリラーが7話公開されています。
この記事ではNetflixオリジナルドラマ『恐怖の劇場』シーズン1「染みのない部屋」のネタバレ、解説と考察を行っています。
「染みのない部屋」というタイトルですが、ずーっと染みがあります。染みに悩まされる女性のお話です。
「染みのない部屋」のネタバレあらすじ
白い部屋と女性
真っ白な部屋の中で、傷だらけの女性が横たわっています。その体にはゴキブリがたかっており、部屋の食べ物の上はハエが飛び回っています。
女性は金属製の首輪をつけられており、その中心には「5M1.5KJ」という文字が刻まれていました。
女性はゆっくりと食べ物を食べています。その部屋の壁にはポツンと黒い点があり、壁の向こうには何者かの気配が感じられます。
女性は黒い点に近付くと、それを指でなぞりました。そして、なぞった指の臭いをかぐのでした……。
掃除
大家のジェニファーから、女性に電話がかかってきます。ジェニファーは、2日後に部屋の点検があるから掃除しておくようにと命じました。
「部屋の状態は評価に関わる。特にあなたは評価が低い。足を引っ張らないで」と言われた女性――チュティンは、呆然とします。
白い部屋にただひとつ目立つ黒い染みは、だんだんと大きくなっているのです。チュティンはその染みについて悩んでいました。
窓やベッドの掃除は済みました。チュティンは染みの掃除に取りかかります。掃除に夢中になるチュティンは、母親からの着信にすら気付きません。
海
チュティンは部屋を出て、階段でタバコを吸っていました。しかし誰かが近付いてきたのを察して、屋外へと出て行きます。
そんなチュティンに、もう一度母親が電話をかけてきます。母親は「過去のことは忘れなさい。見えないものは存在しない。みんな前に進んでるわ」と語りました。
チュティンは電話を切ると、金属のアクセサリーと白い花を買います。レジの女性は、お金を受け取る代わりに、チュティンの首輪を読み取りました。
買い物を終えたチュティンは、海へとやってきました。真っ白な服を着ているチュティンの、サンダルだけが赤く目立っています。
チュティンはサンダルを脱ぐと、海に向かって「見えないものは存在しない」と何度も繰り返します。まるで、自分に言い聞かせるように……。
ポスター
巻貝のような階段を下りていったチュティンは、自室に戻りました。黒い染みはさらに広がり、今や顔と同じくらい大きくなっていました。
チュティンは、壁に顔を寄せてじっと染みを見つめます。すると、そこにジェニファーから電話がかかってきました。
「明日、午後3時に検査官と行く」と聞かされたチュティンは、染みを消そうと必死になります。
何をしても消えない染みを見ていたチュティンは、思いついたように机に向かいます。そして「ブライト・デイ 清掃サービス」と書かれたポスターを取り出しました。
染みの上にポスターを貼ったチュティンは「見えないものは存在しない」とつぶやきます。しかし、染みはポスターの下にとどまってはくれませんでした。
夢
インクのようなものが染みから漏れ出したことで、ポスターは剥がれ落ちます。目を覚ましたチュティンは、自分が汚れるのも構わず掃除を始めました。
チュティンは白いペンキで染みを塗りつぶすと、満足感から笑い始めます。顔についてしまった黒い液体をシャワーで流したチュティンは、綺麗な服に着替えました。
寄せては返す波の音を聞きながら、チュティンは階段でタバコを吸います。そんなチュティンの耳に「逃げろ」という声が聞こえてきました。
チュティンに、血管のような赤い触手が近付いてきます。そこから顔を背けたチュティンは、人間の形をした赤黒いモノに頬をなめられました。
ハッと目を覚ましたチュティンは、壁に染みができていることに気付きます。それは今までの真っ黒い染みとは違い、人の顔の形をしていました。
爆発
チュティンは洗剤の空ボトルを集めたごみ袋とスマホを、染みの下に置きます。すると、ジェニファーが検査官と共にやってきました。
チュティンは焦る気持ちで手を震わせながらも、何とかマッチに火を点けます。そして、顔の形の染みに向かってマッチを投げつけました。
すると壁は爆発し、真っ赤な煙が部屋を満たします。壁の向こうには空間があるようでした。チュティンは、ゆっくりと穴に近付いていきます。
穴の向こうから煙が立ち上り、チュティンは煙の中へと引き込まれました。今までの記憶が、チュティンの頭の中を巡っていきます。
チュティンのスマホには、母親からの着信がありました。しかし部屋の中にいるはずのチュティンは、その電話に出ませんでした――。
住人
ジェニファーは、新しい住人を部屋に案内しました。「一度住めば出たくなくなる」と、ジェニファーは語ります。
首に派手な刺青をしている女性――リーは、真っ白な部屋に似合わない個性的なスタイルをしていました。
そんなリーは、壁の向こうから誰かに話しかけられます。「逃げて」――それは、チュティンの声のように聞こえます。
リーはその声に違和感を覚えながらも、ジェニファーの案内についていくのでした……。
建物の中には、大勢の女性が住んでいました。彼女たちは皆、白い服に白い靴で、金属の首輪をつけています。
女性たちは「孝行」や「慈悲」、「誠実さ」、「調和」、「礼儀」などを教え込まれているようです。
そこを、ベッドに縛られたチュティンが通っていきます。海に囲まれたこの「施設」は、女性たち集う場所なのでした……。
解説と考察
難解!!
結局、染みが何を表しているのかも、チュティンの過去に何があったのかも、この「施設」が何なのかも明かされませんでした。
しかし、確実なのは「チュティンの過去に何かしらの『前を向けない出来事』があった」ということです。
施設
おそらくこの「施設」には、何らかの理由で社会生活を送れなくなってしまった女性たちが集められているのだと考えられます。
精神を病んでしまった女性たちが、社会復帰するための施設なのでしょう。しかし、チュティンは社会性を取り戻すことができませんでした。
暴れる患者がベッドに縛り付けられるように、チュティンも拘束されてしまいます。それは「染みを消せない」という焦りが生んだ結果でした。
チュティンの過去
チュティンの過去に何があったのかは、よく分かりません。ただ「見えないものは存在しない」と言われていることから、幻覚症状があることは確かです。
そうなると「そもそも染みは存在したのか?」という疑問が出てきます。染みはチュティンにしか見えていない幻覚だったのでは……?
しかしそうなると、どこからどこまでが幻覚だったのかも分からなくなります。染みだけなのか、爆発もそうなのか――。
チュティンがいわゆる「信頼できない語り手」であるため、「染みのない部屋」のストーリーを読み解くことはかなり難しいのです。
ミヅチ的考察
私が考えるに、この「施設」は精神疾患のある女性たちの療養施設です。しかし、中には回復が見込まれない患者もいるでしょう。
そのひとりがチュティンです。チュティンは過去の出来事をきっかけに幻覚に悩まされるようになり、今や現実と幻覚の区別がつかない状態です。
軽症の女性たちは他の患者と接することが許されていますが、チュティンは大家のジェニファーと、売店のスタッフ以外とは会えていません。
それは、チュティンが暴れる可能性がある患者だからではないかと思います。チュティンは厳しい監視の上、隔離されているのです。
チュティンが拘束された後、リーが新しい住人になります。リーにもチュティンと同様、幻聴の症状が出ていました。
チュティンはもう施設の外に出ることはないのでしょう。幻覚に悩まされながら神経をすり減らす日々の中で、チュティンは老いていくのです……。
「染みのない部屋」というタイトルこそが真実なのでしょうか……?
※トップ画像はNetflixから引用いたしました。
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