ドラマ『恐怖の劇場』はNetflixにて2019年からシーズン1が独占配信されている作品です。
台湾の出版社「鏡文学」の短編小説を原案としており、シーズン1では30分程度の短編SFスリラーが7話公開されています。
この記事ではNetflixオリジナルドラマ『恐怖の劇場』シーズン1「ログイントラブル」のネタバレ、解説と考察を行っています。
「ログイントラブル」は、鬱屈した生活を送る女性がほがらかな美人になりすまし、SNSを運用するところから話が始まります。
「ログイントラブル」のネタバレあらすじ
なりすまし
ある美しい女性が、インスタグラムに動画を上げています。美女――リリー(ジュリー・ティングさん)は、お気に入りのカフェ「桔梗三明治」を紹介しています。
リリーは「lily_perfectlife」というアカウントでインスタグラムを運営していました。しかし、その投稿は14ヶ月も前のものです。
眼鏡をかけた地味な女性が、リリーの投稿をスクリーンショットで保存し、色味を変えてフェイスブックに投稿しました。
「your_dearlily」というアカウントでリリーのなりすましを始めた女は、ほがらかに笑うリリーの写真に、さみしげなコメントを添えます。
それを見た人々は、リリーを心配して次々にコメントを残します。それを見て、女――ワン・メイシン(ユピン・ワンさん)はにやりと口を歪ませました。
SNSではリリーとしてちやほやされるメイシンですが、現実では上司から「少しは魅力や才能を磨け、トロいバカ女め」と責められています。
バカにされているメイシンを、同僚がこっそり動画に収めます。メイシンは周りの人から笑いものにされているのです。
ケーキ
メイシンは辛くなると、リリーのインスタグラムから画像を保存して、フェイスブックでなりすましていました。
そうして集まってくるコメントを見ては、自分の気持ちをなぐさめていたのですが……ある日「なぜ写真を盗用する?」というメッセージが届きます。
沈んだ気持ちを抱えたまま、メイシンはリリーおすすめのカフェに向かいました。そして、ハートが描かれたカプチーノを写真に収めます。
カプチーノの傍らには「恋愛をめぐる24の省察」という小説も置き、リリーの生活をなぞって楽しんでいるのです。
そのとき、見知らぬ男性がメイシンに話しかけてきました。男は、運命の相手は1人だけだと思うと、メイシンに語ります。
男――ウェン・ジェンシュエン(ホアン・ハー/リヴァー・ホアンさん)は、知り合ったばかりのメイシンに握手を求めました。
メイシンに可愛いケーキをおごったジェンシュエンは、メイシンのスマホでケーキを撮ってあげます。
ジェンシュエンはすぐに立ち去りましたが、ケーキの皿の下には「会えてよかった。君もそうだとうれしい」というメモが残っていました。
メイシンは、なりすましアカウントにケーキの写真をアップし「今日は特別な出会いがあった」というコメントを添えました。
メイク
すると、写真の盗用を指摘してきたアカウント「w_1ror」から「リリーになりたいか?」というメッセージが届きました。
メイシンは「w_1ror」をブロックします。「w_1ror」のユーザーはSNSにはりついていたため、すぐに気付かれてしまいました。
不安がなくなったメイシンは、ジェンシュエンとデートを重ね、仲を深めていきます。撮影した動画を見ながら、メイシンは微笑みます。
それでも、メイシンはリリーのなりすましをやめられませんでした。
ある日、メイシンはジェンシュエンに尋ねます。最初に会った時「運命の相手は1人だ」と語った理由を知りたかったのです。
ジェンシュエンは、あの小説を勧めてくれた女性こそが自分にとっての「運命の相手だ」と、メイシンに語りました。
傷付いたメイシンに、ジェンシュエンは「眼鏡を取ってメイクをすれば、もっと美人になる」と助言しました。
ジェンシュエンから食事に誘われたメイシンは、リリーのメイク動画を見ながらデート用のメイクを練習します。
その時、動画の中のリリーが「私も眼鏡を外した方がいいと思う」と言ってきたように見えました……。
メイシンは、リリーの言う通りにメイクをした自分の唇を、リリーのなりすましアカウントにアップするのでした。
彼女
メイシンはメイクで自信をつけて、堂々と出勤しました。驚く職場の人々を見て悦に入るメイシンですが、そこにコメントが届きます。
「懲りてないようだな、クソ女」――そう送ってきたアカウントは「w_2ror」でした。ブロックされたため、新しくアカウントを作ったのです。
メイシンはだんだんと、リリーの幻想を見るようになっていました。リリーは、スカーフを巻いたメイシンに「結び目をずらして」と指示します。
リリーの言う通りに隙を作ったメイシンでしたが、それを見たジェンシュエンは結び目を中心に直してしまいます。
そして、料理を食べる前に写真を撮っているメイシンを眺めて「彼女と似ている」と話しました。懐かしそうな目をしながら――。
メイシンは、ジェンシュエンに彼女の写真を見せてほしいとせがみます。するとジェンシュエンは、リリーの写真を見せてきました。
メイシンは深く傷付きながらも、それを隠してデートを続けました。そして帰宅したメイシンの元に、コメントが届きます。
「どうせブスだろ?」「自分を撮れ」――ネット上で画像検証が行われたため、メイシンのアカウントは炎上していたのです。
そこに、ジェンシュエンから電話がかかってきました。ジェンシュエンは「君にサプライズがある。明日になれば分かる」と言いました。
「本当に私のこと好き?」と尋ねたメイシンに、ジェンシュエンは「好きじゃなきゃサプライズなんかしない」と答えるのでした。
代わり
ジェンシュエンに目をふさがれたメイシンが連れて来られた場所は……リリーの過ごしていた部屋でした。
そして、ジェンシュエンはプレゼントボックスを渡してきて、メイシンに白いワンピースを着るように促してきました。
メイシンは、鏡に映った自分がリリーの姿に見えます。鏡の中のリリーは「あなたはメイシン?それとも私の代わり?」と笑いました。
ジェンシュエンはメイシンの写真を撮り、リリーのなりすましアカウントに投稿するよう命令します。
ジェンシュエンは「携帯を貸せ。僕がやってやるよ」と言ってきました。メイシンは怖くなって、部屋から逃げようとします。
メイシンの行く手をふさいだジェンシュエンは「僕をブロックしたな」と怒りをにじませ、メイシンをベッドに押し倒しました。
ジェンシュエンはメイシンがなりすましていると分かった上で、メイシンに近付いたのです。
「なぜ女はみんなに好かれたがる?答えろ」とジェンシュエンはメイシンに尋ねます。メイシンは必死に逃げようともがきました。
最期
ジェンシュエンは、リリーの首にある絞めた痕をファンデーションで消しています。そして、ガスマスクを装着しました。
知らぬ間にメイシンのスマホはライブ配信を始めており、ジェンシュエンがメイシンに襲いかかる様子は中継されていました。
ジェンシュエンはじょうごでリリーののどに塩酸を流し込みました。リリーは目を覚まし、もだえ苦しみます。
ガムテープで口をふさがれたリリーは塩酸を吐き出すこともできず、ジェンシュエンの腕の中で断末魔の叫びを上げるのでした。
そうして殺されたリリーの記憶が、メイシンの頭に流れ込んできます。メイシンは床に落ちていたクシを手に取ると、ジェンシュエンの首に突き立てました。
メイシンは「私だって愛されたいのに」と泣きながら、ジェンシュエンの首に何度も何度もクシを突き刺します。
そしてハッと正気に戻った時には、ジェンシュエンは息絶えていました。メイシンは、横たわる現実の前で泣き叫ぶしかできませんでした。
「尻を見せろ」「ヤラセだ」「殺人生配信だ」――ライブ配信を見ている人々の中に、メイシンを心配する人など一人もいませんでした。
鏡
メイシンは正当防衛を認められ、不起訴となりました。メイシンの事件により、ジェンシュエンがリリーを殺したことも明るみになります。
メイシンは法廷で一言もしゃべらないまま、弁護士に全てを任せて裁判を終えました。そして、自宅に戻ります。
白いワンピースを身にまとったメイシンは、鏡に映る自分の写真を撮ります。しかしその顔は――リリーになっているのでした。
解説と考察
恐ろしいのは殺人鬼のジェンシュエンか、それとも精神を乗っ取るリリーなのか……?
メイシンは、更新されなくなったアカウントだし、なりすましたって本人から苦情が来ることもないだろう……と思ったのでしょうか。
SNSにハマっていた人が突然更新を辞める時は、大抵ロクなことがないものです。病気だったり、生活環境が変わっていたり……。
リリーの魂
無残に殺されたリリーの魂は、インスタグラムのアカウントに残っていたのだと思います。
そして、何も知らずに出来心でリリーのなりすましを始めたメイシンのところへ、リリーの魂が下りてきてしまったのです。
リリーはメイシンが危険な目に遭うことは分かった上で、ジェンシュエンに復讐するためにメイシンを誘いました。
そしてメイシンが殺されかけた時、自分が殺された時の記憶をメイシンに見せたのです。このままでは同じ目に遭うぞ、と――。
メイシンは「塩酸をのどに流し込まれる」という恐ろしい未来を避けるため、必死でジェンシュエンに抵抗するのでした。
メイシンかリリーか
ただ放り投げられただけのスマホが、ちょうどいい位置に着地して、さらにはライブ配信を始めるなんて……有り得ませんよね。
これもリリーの魂に操られたことなのではないかと考えています。ジェンシュエンを罪に問うため、そして自分が殺されたことを知らせるために――。
動画のおかげで、メイシンは殺人罪から逃れます。しかし、もうメイシンの体はメイシンのものではありませんでした。
リリーは、殺人のショックで精神崩壊したメイシンの体を乗っ取り、新しい人生を歩み始めたのです。
そしてまた、リリーはSNSで一躍有名になり――また、独占欲の強い男から狂気を向けられてしまうのでしょう……。
初対面でいきなりケーキおごってくる男って、正直気持ち悪いですよね。いくらイケメンでも、ちょっと……。
※トップ画像はNetflixから引用いたしました。
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