こちらにはNetflixで配信中の韓国ドラマ『明日』エピソード6「魂は星になって」のネタバレと感想があります。
主な登場人物・キャスト
チェ・ジュヌン(ロウン)
危機管理チーム長ク・リョン(キム・ヒソン)
イム・リュング(ユン・ジオン)
玉皇大帝(キム・ヘスク)
引導管理チーム長パク・ジュンギル(イ・スヒョク)
あらすじ
イ・ヨンチョンという一人暮らしの高齢者のネガティブ度が上がっています。あと1日で寿命の老人です。
玉皇大帝は、危機管理チームにイ・ヨンチョンの自殺を止めさせて寿命を迎えさせ、引導管理チームに任せたいと考えます。
使い走りにさせられた新人チェ・ジュヌンは、古紙回収で日銭を稼いでいるイ・ヨンチョンと遭遇しました。
貧民街は立ち退きが進められており、ひとり残っているイ・ヨンチョンはヤクザに付け狙われています。
危機管理チーム長ク・リョンとイム・リュング代理は死神だと身分を明かし、イ・ヨンチョンに最後の時を過ごそうと提案しました。
しかしイ・ヨンチョンはいつも通り古紙回収をして、回収業者の男に全財産を渡し、自宅に戻ります。
イ・ヨンチョンは朝鮮戦争に出征し伍長として活躍したものの、唯一の友ドンチルとの友情も壊れ、母も喪ってしまいました。
戦争のトラウマで勉強も仕事も思うようにいかず、イ・ヨンチョンは国家功労者の証だけを持ってその日暮らしをしていました。
後悔にまみれた人生でしたが、ドンチルが幸せに生きていると知り、国を救った英雄である自負を思い出し、イ・ヨンチョンは満足して最期を迎えます。
玉皇大帝の許しが出て、イ・ヨンチョンは苦しまず、大勢の死神に伴われてあの世に向かうことになったのでした。
ミヅチガタリ
クチーム長は420歳で、386年に渡り走馬灯葬儀社で働いていることが分かりました。
イム代理は154歳……よく自分の倍以上の年齢の上司にあの態度を取れるもんですね。驚きです。
そう考えると、20代のジュヌンは幼児みたいなものですね。赤ちゃん扱いされる理由がよく分かりました。
今回は戦争でトラウマを負い、正社員はおろか専門職もバイトもできずにその日暮らしをするしかなくなった老人の話でした。
戦争でどんなに結果を出したところで、その後の人生を保障してもらえるわけではなく、トラウマは一生付きまとう……。
どこの国でも起こり得ることですが、近くの国の今を生きる人の人生として描かれるとインパクトが違います。
物語の上では人生最後の日に何とか尊厳を取り戻すことができましたが、70年以上ずっと苦しんできたんですよね。
死神たちは韓国がなくなると働く意味を失うため、国を守った英雄に敬意を表するのでしょう。
しかし、今を生きる人に戦争の英雄がどうのと話したところで、せいぜいSNSで協力するくらいなんだろうな……と思ってしまいました。
イ・ヨンチョンにとっては「終わり良ければ総て良し」だったのでしょうか。そうであってほしいと思います。
明日 第6話「魂は星になって」
386年
走馬灯葬儀社の会長である玉皇大帝は温室で花に水をやっています。危機管理チーム長ク・リョンはそこに呼び出されていました。
「イ・ヨンチョン。91歳、一人暮らしの高齢者」
ネガティブ度が85%となり危機管理チームの次の対象になった老人について、玉皇大帝には伝えたいことがありました。
「今回は引導チームと一緒の仕事になる。その人の寿命は明日まで」
寿命を全うさせてあげたいと玉皇大帝は願い、危機管理チームに自殺を止めさせた上で引導管理チームに任せたいと考えたのです。
91年生きても克服できなかった傷をたった1日で何とかできるのかと、クチーム長は不安視していました。
危機管理チームの部屋では、イム・リュング代理が朝鮮時代から走馬灯葬儀社にいると聞いた新人チェ・ジュヌンが笑い出します。
「チーム長はもっと前だから、李舜臣(イ・スンシン)将軍か世宗(セジョン)大王の頃?」
李舜臣将軍は豊臣秀吉と戦った将軍で、世宗大王は室町幕府と友好を保った王です。クチーム長が450~550歳くらいだと思ったのでしょう。
そこに現れたクチーム長は、丙子の乱の頃から働いていると話しました。386年間働いているということです。
クチーム長とイム代理がかなりの年上だと知り、ジュヌンは大人しくなるかと思いきや……いつも通りでした。
ゴミ拾いの老人
坂を上った果てにあるイ・ヨンチョンの自宅を訪ねたクチーム長とイム代理、ジュヌンはまず掃除を始めると決めます。
しかし掃除道具がないため、隣町までジュヌンがひとりで買い物に行くことになりました。
雑貨屋さんで掃除道具を買って店を出たジュヌンは、ある親子の会話を耳にします。それは、ゴミ拾いをする老人についての話でした。
「ママ、なんでゴミを集めてるの?」
「勉強しなかったせいよ。だから、しっかり勉強するのよ」
勉強してもろくな就職ができなかったジュヌンは、ひどい言われようをしている老人に同情して話しかけます。
するとその老人は、家から出かけていたイ・ヨンチョンその人でした。
イ・ヨンチョンの暮らす場所は、以前は多くの人が住んでいましたが開発が決まり、もう誰も住んでいません。
「ずっとここに暮らしてきたしな。それに、もうじき発つし」
どうしても立ち退かないイ・ヨンチョンは、立ち退きを迫るヤクザから目をつけられていました。
イ・ヨンチョンが残っているせいで工事ができず損害が出ているとヤクザは語り……イ・ヨンチョンがかぶっていた帽子を奪いました。
「お国のために戦った人が、国の発展を妨害してどうする?」
老いた国家功労者
イ・ヨンチョンが止めるのも聞かず、ジュヌンはヤクザに歯向かいボロボロになって家に辿り着きました。
区役所の職員だと同じ嘘をついてもらいたかったジュヌンでしたが、イム代理は平然と告げます。
「我々は死神です。あなたは明日死にます」
イ・ヨンチョンは驚きでいっぱいになりながらも、丁重にクチーム長を招き入れました。
家の外で待っていることになったジュヌンは、イム代理にイ・ヨンチョンについて知ったことを話します。
イ・ヨンチョンは1950年に北朝鮮との間で始まった朝鮮戦争に出征し、国家功労者となっていました。
クチーム長は、寿命を明日に控えながらイ・ヨンチョンが自殺しようとしていることを指摘します。
「数週間前、近所の人が孤独死した状態で発見されたそうです。遺体は腐敗が進み白骨化していたと……」
イ・ヨンチョンは、その話を他人事とは思えませんでした。そして自ら静かに死んでいこうと考えたのです。
「どのみち、やり残したことは終えるつもりでした。だから今までと同じように過ごしたいんです」
古紙回収
イ・ヨンチョンはいつもと同じように古紙回収をするつもりでした。しかし、古紙が見つからないのです。
クチーム長とイム代理、ジュヌンが古紙回収を手伝います。しかし、運動がてら古紙を拾う若者には敵いません。
古紙回収に生活をかける老人のことなど、彼らの目には映りません。しかし、その理不尽な現実をもイ・ヨンチョンは受け入れていました。
死神たちの手伝いもあり、大量の古紙を集めることができました。イ・ヨンチョンは嬉しそうに笑います。
古紙回収業者の男も、立ち退きを迫られ店を畳む決意をしていました。誰もがギリギリで生きているのです。
古紙回収の料金は驚くほど少なく、クチーム長までもが不満を口にします。しかしイ・ヨンチョンは皆を止めました。
「今日の分は取っておきなさい。それと今まで少しずつ貯金してた。少ないが、子どもたちに美味しいものを食べさせてやれ」
有り金を全て渡したイ・ヨンチョンは晴れやかな顔をしていました。全ての出来事を目に、心に焼き付けているようです。
唯一の友ドンチル
「あの時の選択が悔やまれてなりません」
イ・ヨンチョンが悔やんでいたのは、戦場に赴いたことでした。美しい夕焼けに包まれながら、イ・ヨンチョンは過去を思い出します。
1950年6月25日、戦争当時――高校生だったイ・ヨンチョンは、教科書を捨てて戦うことを選んだのです。
母親は、口喧嘩すらしない心優しい息子が戦場に向かうことをよしとしてはいませんでした。
しかし自分より年下の子が戦場に出たことを知ったイ・ヨンチョンは、戦場に出向かずにはいられませんでした。
「想像を絶するほど戦場は残酷でした。辺り一面に死臭が立ち込めていました」
戦場で立ち尽くすイ・ヨンチョンを安全な場所に連れて行ってくれた人も、目の前で命を失ってしまいます。
「唯一心を許せた友はドンチルでした」
イ・ヨンチョンより年下であろうドンチルは、少し間の抜けた青年ですが家族思いで優しい人でした。
ある夜、奇襲を受けてドンチルは左足を失いました。伍長であるイ・ヨンチョンは必死にドンチルを救います。
失ったもの
「全部あんたのせいだ。これなら死んだ方がいい。失せろ! 二度と顔を見せるな!」
柔らかい雰囲気を持った癒しの存在であるドンチルの姿は、もうそこにはありませんでした。
「ドンチルは自分を助けた私を恨んでいました」
戦争を終えて自宅に戻ったイ・ヨンチョンの前にあったのは、瓦礫の山だけでした。
「残虐な戦争が終わると、急いで故郷に戻りました。でも母はいなかった。なぜ私は戦場に行ったのでしょうか」
イ・ヨンチョンは凄まじい戦争から生きて帰ることができましたが、友を失い、母を失い、得たものは国家功労者の勲章だけだったのです。
クチーム長たちは、一杯やりたいと言ったイ・ヨンチョンに付き合うことにします。
ジュヌンはマッコリに合うチヂミを作ろうとしますが、まずいチキンを作った前例のためクチーム長に止められます。
イム代理が作ったチヂミをつまみに飲み始めたジュヌンは、イ・ヨンチョンの戦後の生活について尋ねました。
戦後の生活
「中断してた勉強をするため、机に向かった」
しかし机に向かって鉛筆を持っていると、ガタガタと手が震え始めるのです。勉強などできません。
布団に入って眠ろうとすると、戦場での記憶が蘇ってきます。まるで今そこで誰かが戦っているかのように……。
「恐ろしい悲鳴が飛び交う戦場にいたから、なかなか元の生活に戻れなかった」
大工の仕事を始めたイ・ヨンチョンでしたが、金槌で釘を叩く音が銃声に聞こえてトラウマが呼び起されます。
「その日暮らしの人生を送るようになり、手あたり次第どんな仕事も引き受けた」
したい勉強もできず、すぐにトラウマが呼び起されてしまうためできる仕事も限られており、ミスも続きます。
自分の行動をコントロールできないイ・ヨンチョンは、仕事相手からバカにされても歯向かうことすらありませんでした。
「身も心もボロボロだから、結婚など考えたこともなかった。年を取ってからは力仕事もできず、古紙を集めるようになった。それも今日が最後だけどな」
街行く幸せそうな人々を見ても、イ・ヨンチョンは嫉妬すら覚えません。ただ諦めだけが横たわっているのでした。
国
イ・ヨンチョンが中座したことで、皆不安げな顔になります。ジュヌンは、沈んだ顔になりました。
イム代理は戦争の時、引導管理チームだけでは人手が足りないからと駆り出されたことを思い出します。
「あの若者を見てると、つい嫉妬してしまいます。彼のように、今の時代に生まれていたらと……」
戦争さえなければ、戦争で抱えたトラウマさえなければと、イ・ヨンチョンは時代を恨んでいました。
「つまらなくて無意味な人生でした」
そう語るイ・ヨンチョンを連れて、クチーム長は既に閉まっている展望台へと瞬間移動しました。
韓国が一望できる展望台から見下ろした夜の韓国は、星空のように眩くきらめいていました。
「目に焼き付けて。あなたが守り抜いた国です」
今の韓国の姿をじっと見つめたイ・ヨンチョンは、国を守ったのだという自負を思い出すことができました。
引導
「おじいさん! ドンチルさんが見つかりました!」
ジュヌンがSNSで協力を求めたことで、ドンチルが釜山(プサン)で家族に囲まれて暮らしていることが分かったのです。
イ・ヨンチョンが部下のドンチルを守ったことは、無駄ではありませんでした。
「家に帰りたいんだろ! なぜ戦ってる? お母さんが会いたいのは死体のお前か!? 生きているお前だろ」
思わずドンチルを怒鳴りつけたイ・ヨンチョンのその言葉が、ドンチルが生きて帰る支えとなったのです。
国を守ったことは遠い過去のこと――そう考えていたイ・ヨンチョンでしたが、若者たちは敬意を向けてくれました。
「チーム長に引導をお願いしたいのですが」
走馬灯葬儀社に戻ったクチーム長は、引導管理チーム長のパク・ジュンギルに頭を下げに行きました。
「イ・ヨンチョンさんの最期はどうか楽に。苦しんで死ぬのは見ていられません」
玉皇大帝は、パクチーム長も同じことを言ったと語ります。不思議だと言いつつも、頼みは呑めないと返しました。
420歳
イ・ヨンチョンの家にヤクザたちがやってきました。そこにクチーム長が帰ってきて、黒い手袋をはめます。
「お嬢さん、年はいくつだ?」
「420歳」
家の中に入るよう言われたイ・ヨンチョンは、外にひとり残ったクチーム長は大丈夫だろうかと心配していました。
苦しそうに息をするイ・ヨンチョンを見て、ジュヌンは救急車を呼ぼうとします。
苦しむ姿を見ていられなくなったジュヌンは、思わず玄関から外に出ました。そして、クチーム長の前で涙をこぼします。
「なら、ここにいなさい。それで後悔しないと言えるならね」
ジュヌンが玄関前で座り込んでいると、引導管理チームの死神がやってきました。ジュヌンは玄関の前に立ち塞がります。
そこにパクチーム長も現れました。泣きはらした目で時間が欲しいと訴えるジュヌンですが、冷たく突き放されました。
「最期を見届けられない奴に用はない」
最期の時
部下に待機するよう命じたパクチーム長は、イ・ヨンチョンがいる家の中へと向かいました。
「そなたの後ろ姿を覚えてる。長い夜だった」
引導管理チームを率いて戦場に向かったパクチーム長は、伍長として兵士を率いるイ・ヨンチョンを見ていました。
「今夜生き延びれば、みんな家に帰れる。突撃せよ!」
死を恐れる部下たちを奮い立たせて、イ・ヨンチョンは誰よりも先に塹壕を飛び出していきました。
「そなたの勇気に敬意を表する。故に、最期を皆で見送ろう」
パクチーム長は、多くの死神をイ・ヨンチョンの家に向かわせていました。
クチーム長に目を向けて、パクチーム長は本音をつぶやきます。犯罪者担当チームに配属したのは、看取るのが辛そうだったからだと……。
「これが我々の仕事だ。最期を見届けること」
死神がぞろぞろとやってきたことで、ジュヌンは驚きます。その先頭には、玉皇大帝がいました。
英雄の魂
イ・ヨンチョンは痛みで意識を失い、あとは息が止まるのを待つだけとなっていました。
「いい人生だったのね」
安らかな顔で最期を迎えるイ・ヨンチョンを見て、玉皇大帝はそう話します。本人にとっては後悔の人生でも……。
「申し訳ない。今の私にしてあげられるのは、あなたを安らかに眠らせることだけ」
玉皇大帝は苦しそうに呼吸を繰り返すイ・ヨンチョンの瞼に手の平を乗せると、その人生を労いました。
魂となったイ・ヨンチョンは玄関を出ます。大勢集まった死神たちを見たイ・ヨンチョンは、自らの人生を見直します。
戦争に行かなければよかったという後悔は、今やイ・ヨンチョンの心から解き放たれていました。
「皆に告げる。この国を守り抜いた英雄の魂に黙祷を」
黙祷の後、パクチーム長が率いる引導管理チームの列に入ってイ・ヨンチョンはあの世への道を歩き出しました。
生と死
温室に入ったイ・ヨンチョンは出征した頃の姿に戻り、待っていた母親と再会しました。
生きている間に手を貸すことはできず、死を介してしか協力できない死神という存在が、ジュヌンの悩みになっていました。
「私は人の生死と罪と罰にしか関与できない」
玉皇大帝にもできないことはたくさんあります。新人で、“半々”のジュヌンなら猶更です。
まだ能力すら与えられないことに文句を言いながらも、ジュヌンは自殺志願者を救う難しさを再確認するのでした。
※トップ画像はNetflixから引用いたしました。
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